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皆殺しのスキャット


■公開:1970年
■制作:大映
■監督:森一生
■助監:
■脚本:高岩肇、安本莞二
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:松方弘樹
■備考:松方弘樹もってきただけじゃダメ、森一生じゃさらに無理。


 会社が傾きかけていた大映はなんとか生き残ろうとそれまでの芸術志向作品の路線を捨て、なりふりかまわず他社の人気作品に迫ろうという意欲をみせていた。

 やくざの息子でありながら、父親の希望で堅気な人となるべく米国へ絵の勉強に行っていたはずの猛・松方弘樹は、案の定、拳銃撃ちまくりの無法地帯(アメリカが全部そうだとは言いませんけど日本に比べれば、ね)で生来のガンマニアの性が大爆発、絵の道具を全部捨てて拳銃をお土産に帰国。

 そんな馬鹿息子でも暖かく迎えてくれた父親は一緒に行った母親の墓前で暗殺される。びっくり&アタマに来た松方弘樹は、組の二代目にして実兄、勇・穂高稔に対して敵討ちを申し出るが、昔気質の親の血を引いて穏健派の兄は、話し合いによる解決を提唱する。

 しかし、犯人と思われる対立組織の組長が成田三樹夫であると判明した時点で、こりゃ最悪の事態かも?と予想した松方弘樹が、組の内情に詳しいホステスを得意の色仕掛けでたらしこみ、犯罪の証拠を掴もうと単独行動に出たとたん、眼光と同じくらいに鋭い嗅覚で危険を察知した成田三樹夫が、フリーランスで凄腕のスナイパー、シャチ・峰岸隆之介(現・徹)を招聘する。

 敵のアジトへ堂々と乗り込んだ穂高稔があっさりとやられていたころ、松方弘樹は米国から密輸した拳銃を組み立てていた。さらにどこでどうやって手に入れたんだか?な仕掛け針が飛び出す謎の武器まで準備していたのだった。

 何モンなんだこいつは?という観客の困惑をよそに、兄を救出すべく成田三樹夫とその一味が立てこもる別荘へと向かう松方弘樹。

 遠山の金さんでも、仁義なき戦いでもない、つまり、チョンマゲでも角刈りでもない松方弘樹の姿は最近のヴァラエティでもなければ滅多に、特にこの、若い頃のお姿というのはあまり拝めないので本作品はその点で希少価値があります。ま、そんなことくらいですかね、、、ってそんだけ?

 東映っぽい、スカしたアクション映画を東映城のプリンスと東映映画劇判の帝王・菊池俊輔先生で実現せよ!というコンセプトは一応よく実現されていると思うんですがいかんせん脇が甘い!と言うか人材に恵まれていないのが致命傷です。 にしても成田三樹夫ってそもそも大映だったってこと、すっかり忘れてましたが。

 悪玉で顔の識別つくのがナンバーワンの成田三樹夫だけですからねえ、ナンバー2が橋本力なんですけどこの人、大魔神とかダイモンの中身でしょ?誰も知らないって。もっと東映から応援頼めなかったんでしょうか。

 で、肝心の松方兄貴はアクションあり、ベッドシーンありで頑張ってますね。そのスジの神様・千葉真一と比較すんのは気の毒ですけど、松方兄貴の身上は整った顔立ちと上品な色気でしょ?そこんところは他の役者じゃ醸し出せないわけで、結果的に映画全体がおしゃれにまとまったのはグッドなんじゃないですかね。

 当時の客にどう受け入れられたかという点については難しかったと思いますけどね。やっぱ、この、どうしてもネットリと高カロリーな感じで、汗かいてさっぱりしたような気分には程遠いんですよ。

 やはり所詮大映であって東映ではないわけですから、付け焼き刃ってのは無理がある。んじゃあここは一つ大映のニューアクションを目指すのだ!と言う余裕もすでに会社としてはない。ということで可能性を秘めつつあだ花に終わってしまった気の毒な一作なのであります。

 蛇足ですけど、ニヒルでウエスタンな殺し屋の峰岸隆之介って一応、日活の宍戸錠のパクリなんでしょうか?欲張りすぎだっちゅーの。

2000年02月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16