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ミスタージャイアンツ・勝利の旗


■公開:1964年
■制作:東宝、東京映画
■監督:佐伯幸三
■助監:
■脚本:八住利雄
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:長島茂雄
■備考:ものすごいオールスター。


 日本映画においてオールスター映画数あれど、これほど多方面にわたるオールスター映画と言うのはあまり見たことが無い。

 この映画はタイトルから分かるように読売巨人軍のスーパースター、長島選手の物語である。

 巨人軍に入団した長島茂雄・長島茂雄(本人)は三冠王と優勝を期待されている。チームメイトの広岡達朗(本物、笑顔が素敵)、藤田元司(本物、芸達者)、国松彰(本物、余談ですが嫁さんの実家が亀家万年堂)、王貞治(本物、オロナミンC一気飲み)、柴田勲(本物、アイドル顔)らとともに川上監督・川上哲治(本物、目が笑わない)に率いられ苦しい練習に耐えて見事、日本一になるのでありました。

 はっきり言ってこの映画はストーリーなんかどうでもイイんです。登場人物が正真正銘の本物であること、そしてキラ星のように並んだゴージャスなゲスト出演者(しかもそのほとんどがチョイ役かまたは本人として登場する)と、プロ野球選手の意外な一面を観ることだけに価値があります。

 一応、狂言まわしというかサポート役として、報知新聞記者・フランキー堺が長島とカラミの芝居をするのですが、おどろくほど長島がスムーズに演技をするので「そっくりさん」なのでは?と思ってしまいます。とは言う物の、目はさかんに字面を追っているフシが見受けられるので「カンペ」の存在は一応疑っておきますが、ま、そんなことはアフレコでどうにでもなるので見のがしましょう。

 この映画ではそんな長島選手の活躍よりも藤田元司の演技力が見物です。だってあなた、天性のパフォーマである長島が多少芝居ができたとしても、んなことは驚くには値しないでしょ?。

 いつも地味だの貧乏くさいだのと言われて(あ、誰も言ってませんか?)いる、あの藤田が舟木一夫を従えて、堂々と演技をするのです。怪我をした長島の治療を依頼するためにいもしない相手に電話をかけると言う高等技術を披露したり、表情の固い広岡達朗とかけあい漫才のようなこともします。

 人間、どこにどんな才能が隠れているかはかり知れない物ですね、いや、まったく。

   で、長島ファンの少年がサインをもらいそこねて自動車にひき殺されたり、不良に立ち向かって再起不能の怪我をしたりという過激なエピソードも盛り込まれていて、いわゆる涙あり笑いありの盛り沢山な映画でもあります。

 長島がやっかいになる別荘の女主人が淡島千景、その旦那が織田政雄、東宝の野球映画(「不滅の熱球」「男ありて」など)には欠かせない佐原健二、そのほか沢村貞子船戸順伊藤久哉大空真弓千石規子などまるでシリアスドラマのような演技派の人たちまで出演します。長島一人のためになんでこんなことになってんだろう?とあいた口が、、ではなく恐るべし長島人気ってところでしょうか。

 とんでもない出演者はほかにもいます。

 巨人軍が大好きなハイヤーの運転手・伴淳三郎が運転そっちのけで(危ない奴です)ラジオに聞き入っていると、偶然乗り合わせた外人のお客さまが、ビンボ・ダナオ淡路恵子だったり、西鉄の中西太(本物)のファンが三木のり平だったりします。長島および読売巨人軍一色の本作品でただひとり、中西選手を応援するのり平、よほどのアンチ巨人だったんでしょうか?

 そして成城の東宝撮影所では巨人軍の祝勝会が開催され、そこでは宝田明(は、ともかく)、仲代達矢(なんでこんなところに?)はただいるだけでしたが、スリー・チャッピーズ(桜井浩子、中川ゆき、南弘子)がひたすらフルーツやケーキを喰ってたり、草笛光子がお色気ふりまいていたり、と。

 そしてみんなで読売巨人軍の歌を合唱するといきなり服部良一先生が指揮棒振ってたりするのです。

 スポーツ映画数あれど、選手だけでなく俳優までがオールスターってところが凄いでしょ?

2000年04月14日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16