ケメ子の唄 |
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■公開:1968年 |
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ケメ子・小山ルミはザ・ドリフターズの加藤茶とウワサのあったタレントである、というような事を知っている人はすでにオジサンオバサンたちであって、しかしながらそういう人であれば本作品のタイトルを聞いて脊椎反射的に「なつかしい」ということになるのです。 ケメ子はゴーゴー喫茶(というのがあったんだよ)でおどりまくっているいかにも頭の悪そうな女の子だが、ある日、ビルの屋上から投身自殺をしようとしていた二人の中年男に出会う。一人は倒産した不動産屋・谷幹一、もう一人は生徒に逃げられた挙句に怪我でどうしようもなくなったダンス教師・川崎敬三。 世俗の垢にまみれて薄汚れたこのクドイ顔のオヤジ野郎コンビは、素直であけすけでダンスの上手なケメ子に己の人生を賭けるハメになってしまうのである。 ケメ子はダンスの才能を見込まれて売れっ子タレントになるが、おかげで恋人・竹脇無我とは疎遠に。自由な時間がほしくなったケメ子は地位も名誉も捨ててアフリカに行こうという恋人と一緒に去って行くのでありました。 モノクロだからでしょうかね、なんだかすごくビンボーな感じなんですね、この映画。それが効を奏してドロドロにならなくて済んだ、とも言えますが。 こういう一途でアタマの足りなそうなキャラクターはちょっと難だな、と思われますがこのケメ子というキャラクターはそうでもありません。なぜかと言うとあくまでも自分に素直だからでしょう。戦略的な「ブリッ子」ではなく「生まれながらのパー」ですから他人をおとしめてハッピーになろうとかは到底、頭が回りません。 暇だからなにか面白いことしたい!みんなにちやほやされるより、大好きな人と一緒にいたい!ね、純な女の子じゃありませんか。今どきいませんぜ、こういう娘っ子は!と、心は新大久保のポン引き状態ですが、そのキャラクターに似合いまくる小山ルミという適材を得て実現した、ライトなおとぎ話。 金のためでない小悪魔なケメ子に翻弄される川崎敬三も泥臭くないところがステキです。意地汚ない不動産屋のオジサンである谷幹一の芸術的なアチャラカは時代の障壁というのもアリで、ちょっと見ていてシンドイですが、ああいう濃い顔の芸は最近あまり見かけないので新鮮である、と言えないこともない(フォローになりませんけど)ですね。 余談ですが、竹脇無我には硬派の不良という役どころがまったく似合わないという当り前の事実も確認できます。 ラスト、アフリカの大地にセスナで飛んでいくというまるで風船おじさんのような荒唐無稽なオチにちょっとハラハラしていると、突如、荒川あたりの河川敷のような地域に小山ルミはスカイダイブしてしまいます。アフリカにロケする金がなかったンでしょうか? ケメ子って確か「君子」(きみこ)という名前の愛称で呼ばれていたような気がしますが、それよりも「花のピュンピュン丸」に出てくる、曽我町子さんが声をアテていた「〜だわさ」という強烈な女性キャラクター思い出しちゃう人のほうが多いかも知れませんね。 (2000年03月03日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16