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めぐりあい


■公開:1968年
■制作:東宝
■監督:恩地日出夫
■助監:
■脚本:山田信夫
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:酒井和歌子
■備考:お父さんの青春講座。


 川崎にある自動車工場の組立をやっている職工の努・黒沢年男は経理の事務員・進千賀子をデートに誘うが、彼女にはエリートの彼氏・田村亮がいて相手にされない。クサクサした黒沢は通勤途中、からかった少女、典子・酒井和歌子に思いっきり横っ面を張り飛ばされた。

 黒沢(兄)の家は母・菅井きん、失業寸前の父・桑山正一、中学生の妹、大学進学を目指す弟・黒沢(弟)博がいて、特にこの弟というのが職工になった兄貴に反発してなんとしても大学に行きたいとガンバルのだが、そのわりには家族の給料をアテにしているヘナチョコなので、肉体労働者の黒沢(兄)としてはどうも素直には進学を応援してやる気にならない。

 電車のなかでいかにも頭の悪そうなヨタ公・阿地波信介(リーダー)グループに絡まれていた進千賀子を田村の目の前で救った黒沢(兄)だったが、血の気の多い性格が災いして結局フラれてしまう。その腹イセというわけでもないだろう(いやちょっとはあったかも)が黒沢(兄)はほとんど面識の無い酒井和歌子を強引にデートに誘った。

 酒井和歌子の家庭もなかなか複雑で、未亡人となったの母・森光子と陶芸家の叔父・有島一郎との再婚話にイマイチ賛成できないでいた。お互いに身内に問題をかかえる二人は、海へ行き思いっきり遊ぶ。

 黒沢(兄)のエルモ・リンカーン(初代ターザン俳優、あまりに毛深いタチだったので共演のゴリラの着ぐるみと区別がつくように毎日体毛を剃ったという伝説あり)のような毛深い体にトキメいてしまった酒井和歌子(きゃっ!何見てんだかワコちゃんたら、、、)は、帰り道、どしゃぶりの雨の中で黒沢(兄)と口づけする。

 二人が家に帰ってみるとなんとびっくり、酒井和歌子の母は亡き夫の墓参に出かけて交通事故死。黒沢(兄)の父親はクビになっていたのだった。酒井の弟・池田秀一は有島一郎に引き取られ、酒井和歌子は川崎に住み込みの就職先を探した。黒沢(兄)はウダウダ文句を言う黒沢(弟)をぶっとばし、母が弟の味方をしたのにブチ切れて家を飛び出す。

 酒井和歌子と黒沢(兄)はしばし音信不通となるが、遊園地で働いている酒井のところへ訪ねてきた黒沢は家族に対するわだかまりが自然に溶けて行くのを感じていた。

 たとえば、今どきの、と言うかいつの時代でもヤングな人達はミドルとかシニアの人達とは意思の疎通がうまく行かないので、ヤングは「自分たちのことをわかってほしい」とのたまい、ミドルとかシニアは「若いやつらに分かってたまるか」なんて意固地になるわけだが、たとえばこういう二昔前くらいの風俗(ヘンな意味じゃないよ)映画を観てみるとミドルとかシニア世代の価値観とか道徳観念とか貨幣価値とかが案外素直に理解できるんじゃないかと思う。

 「自由に使える電話が無い」という状況が存在してだよ、カツドンの出前をわざわざ蕎麦屋に徒歩で頼みに行くというコミュニケーションのありかたなんて想像を絶するだろ?すげえ安い給料を親にピンハネ、と言うか仕送りするのが当り前なんてこと、どうなんだろうね、信じられるか?って感じだ。

 そういう世界で、金が無いカップルは車といってもトラックを借りてドライブし、どしゃぶりの雨にでも打たれて非日常的なシチュエーションに飛び込まないとキスするイキオイすらつかないのだ。そういう世界が映画として成り立つ時代に青春しちゃった人達が今の時代の人の親、およびその上の人達なのだよ。

 貧乏も貧乏、ド貧乏に見えるだろ?このカップルは。金が無ければ無いなりの過ごし方をあれこれ考えてエンジョイしてる姿が涙ぐましいだろ?こういう映画、ダサイだろ?主人公なんか純情と言うより要領の悪い単なる馬鹿に見えるだろ?

 それでも二人はたぶん苦労しまくりながらもなんとかやって行けそうなんだ。金の苦労なんか誰もしたかねえけどな、苦労しても大丈夫な相手を見つけられたらそれってすごくイイんだぞ。ま、そういう映画だってことだな、たぶん。

 黒沢年男の弟役の黒沢博は、年男の実弟。アップになると思わず二役か?と思うくらいよく似てるぞ。で、この時代をバーチャル体験しようと思えば、荒木一郎は要チェックだ、たぶん。

2000年03月03日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16