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ひばりの花形探偵合戦


■公開:1958年
■制作:東映
■監督:佐々木康
■助監:
■脚本:笠原良三、笠原和夫
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:美空ひばり
■備考:え?こんだけ?的な佐久間良子。


 この映画を見ているとどうして美空ひばりは高倉健と結婚しなかったんだろうか?と思えてくる。

 女性探偵である美空ひばりは、ブラジル移民でコーヒー農場主として成功した松本克平から、赤ん坊のころ生き別れになった実の娘を探してほしいと依頼される。

 証拠の品はイニシアルが刻印された十字架のネックレス。松本克平を紹介した弁護士・加藤嘉によれば、手がかりは、娘の学童疎開先である長野県にあるらしい。ド田舎の山道をハイヒールで行こうとするのは、そこで偶然出会ってしまうライヴァル探偵・高倉健がすんげー長身なので釣合がとれないから、というわけではないのだろうが、ともかくそういうチャラチャラした格好で捜索活動をしていたひばりは、途中、雨に遭遇し高倉健が避難していた山小屋にたどり着く。

 びしょ濡れのひばりに着替えをすすめる高倉健、おおーっと、アイドル映画にあるまじきトンでもない展開か?と思われたが、下着まででストップなのだった、って別に見たかないけどサ。

 そういうわけで、高倉健もまた加藤嘉を通じて同じ依頼を受けて娘を探していたのである。なーんだ、またいつものほのぼのラブコメ型の展開なのかよ、とあきらめるのはまだ早い。

 横浜でクリーニング屋さんに引き取られていた松本の娘・佐久間良子の居所を先にかぎつけたのは高倉健でこれでシャンシャンかと思いきや、別ルートで探していた美空ひばりがコンタクトした人身売買専門の男・山茶花究がイキナリ殺害されたりなんかして、ドラマは一気に血生臭さい展開へと突入。

 新聞に発表された美談の主役、探し求めていた松本の娘の顔写真を見たひばりは、動物的なカンでどうも怪しいとにらみ、調べてみると実は彼女はニセモノで、、、、。

 以降、ドラマは二転三転しつつもちゃんと親子の再会は実現し、悪者たちは逮捕され、高倉健とひばりはラブラブになるのでありました。

 美空ひばりの「アクション」はこりゃもうママゴトの領域ですが、やくざの大物・山村聡の手下である山本麟一と高倉健の格闘シーンはさすが大柄な二人ですからスピードもあって迫力満点なのです。

 で、いつもながら「なんであんな女がモテるわけ?」な美空ひばりですけども、なにせ実力叩き上げ型の「女王様」ですから、そういうところは問答無用です。しかし、その、なんですな、雨に濡れたひばりが素肌に身につけていたコートをわざわざ事務所の壁に飾って、おまけに「残り香」を嗅ぐ高倉健、って一歩間違うとかなりアブナイ人になってるんですけど、これも「ひばり」人気の物凄さってことでしょうか。

 佐久間良子も相当にミソッカスな扱いで、今では考えられないくらい。もちろんデビュー直後ですから仕方ないんでしょうが、東映(特に東京)の女優さんて気の毒なポジションだったんですねえ本当に、裸の人以外は。とにかく登場したら地味なクリーニング屋の配達員姿でロクな台詞もないというありさま。

 探偵、と言えば変装。本作品でも美空ひばりの中性的な魅力を生かしてホテルのボーイやら流行歌手(そのまんまだ)やらの早変わりが楽しめます。特にトップシーンでサングラスでスポーツカーを運転する美空ひばりの「おしゃれ泥棒」的ファッションは時代を感じさせてグーです。

 アイドル映画と侮るなかれ、ですぞ、コレ。とにかく意外な人物が黒幕だったっていうのが伏線もきちんとしていて良くできてるんですな。もちろんネタは簡単に割れるんですが、毒殺シーンとかもあって、結構本格的じゃん!?って感じでした。

2000年02月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16