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1999年の夏休み


■公開:1988年
■制作:ニューセンチュリープロデューサーズ
■監督:金子修介
■助監:
■脚本:岸田理生
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:中村由利子
■主演:宮島依里
■備考:


 私の記憶の中にある「トーマの心臓」とはちょっと別モノではあるけれど、その空気だけは継承されているような、観終った後に不思議な余韻が残る映画。

 舞台となるのは山奥に隔絶された全寮制の男子校。時代は近未来的でもあり、どこかしらノスタルジックでもありよく分からないという仕立て。 夏休みになってほとんどの寮生は実家に戻ったかなにかで不在、残されているのは和彦・大寶智子 、直人・ 中野みゆき 、 則夫・ 水原里絵(深津絵里) の3人、そして行方不明になった悠・宮島依里 という少年だけだった。

 そこへ転入生としてやってきた薫・宮島依里(二役) が悠とウリ二つだったことから和彦は混乱する。和彦のことが好きだった悠は思いきって告白したのだが和彦に拒絶されたために絶望して自殺したらしい。そのことを気にしていた和彦に対して妙に挑発的な薫の態度に不審を抱いた直人が、ある晩、薫と母親との電話を盗聴すると意外な事実が判明する、、、。

 あ、これね、オチが分かってしまうと相当ダメージが大きいのでお話の内容はここまででゴメンなさい、です。

 全寮生の男子校なんてちょっとワクワクしちゃうわ、美少年ってことは「モーリス」みたいなの?というような手垢にまみれたオジサン、オバサンが観てしまってはイケナイんじゃないか?っていうくらいピュアなんですよ、この映画。 登場するのが美少年のみ、という実に喜ばしい映画ですが、これを全部女の子が演じるんですね。宝塚みたいなもんか?って言うとまあちょっと近いかな?という気もしますが、あんなにどぎつい化粧はしてませんから(当り前ですが)、その「少年」というところがポイントなんです。

 女になりきっていない少女、という微妙な年ごろが醸し出す妖しげな、毒々しくない色香が、生活感を消しさってしまい、だけどキスシーンとかあってちょっとドキドキ。ま、その、なんと申しましょうか、そよ風のような倒錯感(どんなんだ?)があるわけですね。 そして生きている別人なのか、生まれ変わって、つまり幽霊としてかつての恋人に復讐しに来たのか、その実在すら不明な薫の登場で、物語はますます幻想的になって行きます。

 これを分別盛りのイイトシこいた大人が演ったら馬鹿みたいですし、少年が演ってもそりゃあんた「ホモ」じゃん?とストレートになってしまうのですがここんところがそうはなっていない、という実に上手くできている映画です。

 この学校ではなんだかコンピュータっぽい機械をカチャカチャいじくる実習をしてるんですけど、そのブラウン管がむきだしなんですね。コンデンサに触ったらマジであの世行きになるので観ていて本当にハラハラしました。女の子って機械にヨワイという先入観がイカンのですが、登場人物たちの手つきが本当にたどたどしいのでそこんところだけ、思いっきり現実に引き戻されてしまいました。 そう言えば女の子に人気のあった女の子ってあんな和彦みたいな感じだったなあ、と己の高校生時分をふと振り返ってしまう映画でした。

2000年02月25日

【追記】

2004年05月26日:制作年度を訂正いたしました。ご指摘いただきましてありがとうございました。

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-05-26