帝銀事件 死刑囚 |
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■公開:1964年 |
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1948年、帝国銀行椎名町支店で起こった大量殺人事件の真相をドキュメンタリータッチで追った作品。犯罪物の映画化というのは難しい。あまり詳細な手口を公開すれば模倣犯罪を誘発するからである。特にこの映画のように、大成功(犯人としては)を収めたような場合は。 実際に起こった事件のほうはあまりに有名なので詳しくは述べないけれども、実によく考えられた計画であったことが分かる、感心しちゃあいかんけども。映画は戦時中、日本軍が行った毒薬実験の関係者が怪しい、しかし彼等は進駐軍へ情報を提供することで身分を保証されていたので、結局事件はうやむやなまま、というオチがついている。 真犯人として逮捕され、死刑を宣告された主人公・信欣三は神経性の病歴があり、虚言を吐くという事なので、果たして事実は現実の世界でも闇の中という気がするけれど、もし、実在の服役囚が実行犯人だったとしたら、今流行の「心身喪失」とかで釈放されてしまったかもしれない。 どう考えても間違いなく、こんな鬼畜生は死刑にしてやんなきゃいかんと思うのだが、この映画にあるように、まだ科学捜査というのも完全ではない時代の話であるから、現代の感覚からしても殺す(死刑にする)のはちょっと勇気要るよな、と思う。 事件を追う新聞記者・内藤武敏は、急死に一生を得た被害者の女性銀行員・笹森礼子と取材を通じて結婚する。映画はこの新聞記者の目を通して進行するが、印象深いのは彼と行動をともにする同僚の記者・井上昭文で、彼は戦時中の辛い体験を背負っており、劇中にはあまり登場しない敗戦直後の日本人の代表として登場する。常にイライラしており、国家に対する失望感や怒りをむき出しにする。 七三一部隊は最近、テレビなどでもその特殊な存在がホラー映画の様な感じでちょくちょく紹介されるようになったが、この映画の制作当時は最もタブーな話題だったのかもしれない。なんせ、関係者がきっちりと生き残っていただろうから。井上昭文の怒りはその部隊の生き残りだった将校・佐野浅夫に対して特に爆発する。 結局、物証らしきものは判然とせず、目撃者の証言もイマヒトツ、なんとなく状況証拠と自白(それも二転三転するけども)でこの容疑者は犯人とされ死刑囚となる。モデルとなった死刑囚はこの後、再審請求し続け、ついに極死する。制作当時は全く予期されなかったかもしれない顛末を知っている後世の観客は、この映画に予言的なものを感じるのだが、こうして考えると死刑制度というのはやはり無いほうがいいんじゃないか?と思える。 ともかくこういうことが現実に起こったんだと、それだけで迫力ありすぎのセミドキュメンタリー映画。 (1999年10月05日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-31