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女囚さそり けもの部屋


■公開:1973年
■制作:東映
■監督:伊藤俊也
■助監:
■脚本:松田寛夫
■原作:篠原とおる
■撮影:
■音楽:
■美術:
■特撮:
■主演:梶芽衣子
■寸評:


 殺人を犯し収容された刑務所を脱獄し逃亡中の松島ナミ・梶芽衣子は、営団地下鉄の渋谷駅で、刑事の権藤・成田三樹夫に手錠をかけられるが、隠し持っていた出刃包丁で権藤の右腕を上腕部分から切断、手錠で繋がれた血まみれの右腕を振り回しながら渋谷の駅前にあるバスターミナルから高速道路の大ガードを駆け抜ける。

 表情が凍り付いたままものすごいダッシュをするナミ。寄りのシーンはエキストラだが、望遠ショットはどうやらゲリラロケ。相当、恥ずかしかったのか、わき目も振らずの必死な姿はリアリティがありすぎて、通行人の注目をさらに浴びる結果に。

 その頃、事故で白痴になった実兄・神太郎に犯されてあげていた妹のユキ・渡辺やよいは、売春婦として商売中の墓地で、人間の腕らしきものを口にくわえ墓石で手錠を破壊しようと試みるナミを発見。

 なんでナミが腕なんか噛ってたのかと言うと、別に食うとかそういうためではなく、手錠を切るのにブラブラしてジャマだったから、念のため。ちなみに白蝋化した権藤の腕は地中に埋められたところを野良犬にほじくり返され、ゴージャスな骨つき肉のランチとなって果てた。

 ユキの家に一晩泊まったナミは、白痴の兄貴に犯されかかったので反撃しようとしたが、兄思いのユキに泣いて止められた。ユキの家を出たナミはお針子のアルバイトをしながらひっそりと暮らしていた。

 売春組織に隠れて商売をしていたユキは、やくざ親分、鮫島・南原宏治の手下・藤木孝に捕まってしまう。ヌードスタジオに連れて行かれたユキは、南原の愛人であり、「白雪姫」に出て来るイジワル魔女みたいな格好(趣味はハシブトガラスの飼育)をした年増女、カツ・李礼仙から凄惨なリンチを受ける。

 藤木孝は偶然、ナミの住んでいるアパートでキャバ女・真山知子のヒモ生活をしていたことから、ナミに目をつけ、警察に通報されたくなかったら俺の女になれ!とナミを脅した。

 そんなスケコマシ野郎は地獄へ墜ちろ!という客の願いは即、実現。

 ナミは真山の店に「おまえの亭主をツマミ食いしちゃうぞ!」と電話をかける。更年期障害に片足突っ込んでいた真山はすぐさま逆上、ナミの部屋で山本リンダの曲を聞きながらヘラヘラ待っていた藤木に熱湯をぶっかけて殺す。

 鮫島はナミを捕え組事務所へ連行。これまた偶然にもカツが昔、ナミの刑務所仲間だったことから、彼女はナミを痛めつけ薬物中毒状態にしてカラスの飼育小屋に放置。

 そこへ、無理やり堕胎させられ危篤状態になった白痴の売春婦が運び込まれてくる。血まみれで死んでしまった女をたった一人で見取ったナミは、女がアル中の産婦人科医・関山耕司のところから夢中で持ち出したメスを受け取り、復讐作戦を開始。

 関山を始め、鮫島組の幹部が次々とナミの手にかかって殺されていく。ナミがマジギレしたときの怖さを知っているカツはノイローゼ状態に。

 組事務所が入っていたビルから鮫島を転落死させたナミは、警官隊に追い詰められドブ鼠のように下水道を逃げ回る。ユキはナミに食べものを運んでいたところを権藤に発見され、警察署で拷問され、ナミを誘き出すエサになることを承諾する。

 復讐鬼と化したのはナミだけではない。ただし、冷静さを失ったのは権藤のほうだけだった。

 彼はナミが潜んでいそうな下水溝にガソリンを流し火をつけた。炎の中で逃げ惑うナミ。高笑いの権藤の足元では、ガソリンが燃え尽きた汚水の底に身を潜めていたナミが、不気味な表情で立ち上がった!

 こうなるともはやホラー映画の範疇ですな。

 ナミが不死身であることをよーく理解していたカツは自首して刑務所へ。一安心と思ったのも束の間、身分を隠してケチな犯罪で逮捕されたナミが同房になり、カツの神経は一気に消耗。頭の狂った女囚が持っていた「赤ちゃん人形」を見て、かつて自分が殺した白痴女のことを思い出したカツは完璧に狂う。

 カツの態度からナミ生存説を信じた権藤は、カツの独房を訪問した際、錯乱したカツにナミと間違えられてピアノ線で絞殺された。

 復讐を終えたナミはわずかな刑期を終えて堂々と出所。再び行方不明となるのだった。

 梶芽衣子と言えば「さそり」という年頃の方々にとって、最大の魅力はナミの強烈な視線でしょうね。下から見上げるような、ストレートのロングヘアのすき間から、矢のように鋭いあの目で睨まれたら、イチコロだね実際、わかる、わかる。

 男(に代表される諸々の権力)に媚びず、かつ、女としての品格を失わない「さそり」、こりゃあ女も惚れますぜ。  「さそり」シリーズは一応、続きもの、というか初回から順繰りになっている部分も多少はあるのだが、どこから見てもその陰湿きわまりない暴力で埋め尽くされた映画の面白さは十分に堪能できる。

 ものすごい死に様をさらすナミの仇役、そのほとんどは警察関係者、に(後の)ビッグネームが惜しげもなく登場するのも見どころ。

1999年11月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-31