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女囚さそり 701号怨み節


■公開:1973年
■制作:東映
■監督:長谷部安春
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■特撮:
■主演:梶芽衣子
■寸評:二枚目俳優の消したい過去。


 挙式ラッシュの教会へ突然、踏み込む警官たち。ノッポ刑事・土山登士幸やデブ刑事・佐藤晟也らのむさくるしい東映東京の脇役陣をかきわけて颯爽と登場したのは公安出身のサディスト警部、児玉・細川俊之

 彼のターゲットは衣装係のパート(推測)として働いていた、逃亡者、松島ナミ、こと「さそり」・梶芽衣子。殺人事件と脱獄容疑で追われていたナミはここでも必死の抵抗、が、ついに逮捕されてしまう。

 しかし隠し持っていた薔薇のブローチで運転手のこめかみを一撃したナミはまんまと護送中のパトから脱出。そのまま場末のストリップ劇場の便所へたどり着く。劇場の照明係、工藤・田村正和は元ゲバ学生で、児玉警部に逮捕されたときに股間に熱湯を浴びせられるというディープな拷問を受けて仲間の名前を白状したという壮絶な挫折経験の持ち主。

 たまたま工藤に助けられたナミは警察嫌いの彼に匿ってもらうことに。だが、工藤に惚れていたストリッパー・渡辺やよいの密告により工藤は再び児玉に逮捕され、地獄のボディーブロー拷問で失神させられるがナミの所在は喋らなかった。

 ヨレヨレになった工藤はせっかく白状しなかったアジトにまっすぐ帰ってしまうという凡ミスをおかし、またもや刑事たちに襲撃されるが、抜け穴を通ってなんとか逃げおおせる。 工藤とナミは児玉警部の自宅マンションに押し入り女房を人質にするが、助けを呼ぼうとした女房が過ってベランダから転落死。かけつけた児玉警部の理性は一瞬にして消し飛ぶのであった。

 ナミは工藤に淡い恋心を抱きついに結ばれる。が、復讐鬼と化した児玉によってまたまた逮捕された工藤は、田舎の母親・初井言栄に説得されついにナミの居所を教える。ナミは逮捕され、工藤は釈放された。復讐鬼と化した児玉はナミを手下の刑事に羽交い絞めにさせボディーをめった打ちにする。かりにも女が相手なのに手加減ゼロ、それってあんた、ただのリンチじゃん?

 ナチスドイツの収容所のようなキワい女囚専用処刑所の所長・楠田薫は反抗的なナミを懲罰房に入れるが、心やさしい看守長・森秋子はこれに反対、所長と対立していた。児玉警部は部下の刑事たちに看守長を暴行させナミをわざと脱走させる。

 自作の縛り首台でナミを絞首刑にしようと企んだ児玉警部は、足をふみはずして自分で自分の首を絞めて(文字どおり)自滅。密告したストリッパーとイイ仲になっていた工藤はナミの復讐のナイフで刺殺された。

 なんか「逃亡者」みたいなノリになってきた梶芽衣子の「さそりシリーズ」最終作。

 女囚同士のキャットファイトはないが、文学座の「ワールドオブエレガンス」こと細川俊之と、東映映画のお稚児さんこと田村正和の対決は空前絶後(たぶん)の取り合わせなのでよおく見ておくように。

 純度の高い二枚目俳優というのは難しいもんだね。特にここ東映(東京)では。特にこの、なんだね、田村正和さんとしてはだねえ、「与太者仁義」でゴミだらけの東京湾につき落とされたり、さんざんな目に遭っているわけだから、男の大事な部分が「とろけてる」役なんてもう記憶の彼方に葬り去りたいという思いで一杯なんじゃなかろうか、ね。

 色敵の細川俊之、きっと幼稚園頃、遠足バスの中でゲロ吐いて、そのコンプレックスからガリ勉してキャリアになった感じの実に嫌味ったらしいキャラだ。が、結局のところ公僕として職務に忠実だっただけで、別に無実の人をリンチしたわけじゃないし、妊娠中の奥さんを殺されたってのも同情に値するし、要するに児玉警部ってかなり気の毒だったんよね、この映画では。

 さそりも一言くらい謝ったほうがイイんじゃない?なんて思えてしまう。ま、結局は公務員としての立場を忘れて私怨に走ったのが命取りなんだけどさ。

 その児玉警部が真面目に捜査方針を説明している最中、本筋とは全然関係ないのに、下っ端の刑事たちが必死にメシ食ってるシーンが面白い。東映(東京)の男俳優のコンセプトを如実に表わし、かつ、観客が素直にシンパシーを感じるワンシーン。こういうところが東宝のボンな俳優さんたちには到底、醸し出せない味なのよね、好きだなあ、こういうの。

1999年12月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-05-22