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死国


■公開:1999年
■制作:「死国」制作委員会
■監督:長崎俊一
■助監:
■脚本:
■原作:坂東眞砂子
■撮影:
■音楽:
■美術:
■特撮:
■主演:栗山千明
■寸評:ったくいまどきの若い娘(の幽霊)ったら!


 幼い頃、父親の仕事の関係で離れた故郷の村に15年ぶりに帰ってきた比奈子・夏川結衣。一緒に遊んでいた莎代里・栗山千明という娘が16歳のときに沢に落ちて死んだと聞かされた比奈子は、かねてから思いを寄せていた文也・筒井道隆に再会する。

 死んだ莎代里もまた文也のことが大好きで、比奈子とはうわべは仲良く遊びつつもライヴァル視していたのだった。比奈子のほうも実はまんざらでもなかったが、ある日、嫉妬に狂った莎代里に川へつき落とされてあやうく溺死させられそうになって以来、莎代里のパシリと化したヤな思い出があった。

 どことなく恐ろしげだった莎代里がいなくなり、比奈子としてはおおっぴらに文也とラブラブになれるわけだが、比奈子の帰郷とともに村には怪現象が頻発する。死んだはずの祖父の実体をまっ昼間に目撃する子供や、当の莎代里もリアルな姿で比奈子の夢枕に立つ。

 娘を失ったショックでキレた莎代里の母・根岸季衣が四国の遍路ルートを逆回りして、死者を蘇らせようとしていた。これに反対していた父親・大杉漣すら殺そうとした母のパワーは、ついに死んだ娘の歳の数だけ札所を周りきり「逆うち」と呼ばれる儀式を貫徹、あの世に通じるという泉で莎代里の実体を復活させた。

 蘇った莎代里ゾンビは嬉しさのあまり、思わず母に抱きついて全身の骨ををバラバラにしてしまう。

 しばらく人間を止めていたせいだろうか、力の加減を知らんな、この娘は!などと言ってる間もなく、比奈子と文也の後を追った莎代里は、こともあろうにパシリに恋人を寝とられた事に腹を立て、グジグジと嫌味を言いまくる。

 莎代里は両親に無理やりイタコをやらされているうちに、どっかおかしくなって死んでしまったいう気の毒な身の上。こんなド田舎はイヤだと思っていたのに、とうとう大人にもなれず、土地の自縛霊となってしまったわけだから、そりゃ愚痴りたくもなるわなあ。

 そんな莎代里が気の毒になったのか、それとも生前、自分に恋焦がれてくれたただ一人の女がバケモノになってまで会いに来てくれたことに感動したのか、止める比奈子の手を離し、文也は莎代里のもとへ走る。

 超感動した莎代里、やっぱり文也も得意の怪力で締め殺す。

 恋人の死体を前にしてしばし呆然とする莎代里、そりゃそうだ、会った途端に自分で息の根止めてどうする?

 そこへ、比奈子から「逆うち」の妨害を要請されていた、霊験あらたかな修験者・佐藤允が登場。この人、熱湯に浸した榊を体にスパンキングする荒業も全然平気というヘヴィーな御人、莎代里をあの世へ追い返そうと強烈な呪文で攻撃する。

 修験者に追われて泉に落ちた莎代里を助けようとしたのはこともあろうに比奈子だった。かつてのライヴァルの必死の姿に共感したのか?が、その比奈子を押しのけ、莎代里とともに泉に入水したのは、愛の力でにじり寄った瀕死の文也であった。比奈子の目前で、満足したように、二人は泉の底へ姿を消した。

 いやあ、これ、怖いっすよ。

 大仕掛けが全然ないんだけど、幽霊の出かたが、すげー普通なの。おどろおどろしい音楽とか、全然なくて、おかっぱ頭の少女が黙って立ってるだけ。

 恋のリベンジャー、莎代里ゾンビの不気味さ加減が日常的過ぎんのよ、怨念の原因も特殊なものじゃなくて、ああ、そりゃ本当に気の毒だよね、と納得できるじゃない?だから体の芯から妙に共感できちゃって、余計に怖い。

 あと、死んだおじいちゃんが縁側に座ってるところとか。非日常的な設定にフリークスみたいなオバケがいくら出て来ても実はあんまし怖くないでしょ?それがさ、てんであたりまえの情景に、まるで生きてる人と同じに出て来るってのが怖いのよ。

 実際、アレを見た人の話でも、そうらしいし。

 恋人をあの世に連れていくという筋立ては「牡丹灯篭」と同じで、幽霊の純な想いについても、現代性を持たせて上手く説明されている。ただし、過剰すぎて?いちいちボキボキ骨折っちゃうってのは色気ないよねえ、ま、そこも現代的ってことなのかな。

1999年12月23日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-30