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黒の爆走


■公開:1964年
■制作:大映
■監督:富本壮吉
■助監:
■脚本:舟橋和郎
■撮影:
■音楽:池野成
■美術:
■特撮:
■主演:田宮二郎
■寸評:田宮さんのバリバリ伝説。


 かつて田宮二郎は「タイムショック」の収録がある日には六本木のテレビ朝日(当時NET)にパンサーで颯爽と現れ、駐車場の一番目立つ場所にその愛車を停めておいたという。戦後最大の色悪俳優の一人であり、ツッパリ人生を体現したエピソードであるが、作者は許す。田宮さんの大ファンである作者は日本人でパンサーに乗っていいのは田宮さんだけだと信じているからである。

 で、そんな田宮二郎が主演したオートバイ映画。

 白バイ警官の津田・田宮二郎は猛スピードで車線変更をしまくるカミナリ族(現・暴走族)の三人組を追跡。三方に分かれて逃走したうちの一人に目標を定めた津田はさらに猛チャージをかけるが、闇雲に走っているうちに、児童公園へ逃げ込んだ容疑者のオートバイが少年を轢き逃げする。

 マスコミは津田の行為を行きすぎだとジャンジャン書き立てたが、負けん気の強い津田は交通巡査の立場を超えて、自ら犯人逮捕に情熱を燃やす。先輩刑事・藤巻潤の妹・藤由紀子と婚約していた津田は、婚約者も巻き込んでサーキットやモトクロス大会に集まるバイク乗り連中に次々とアタックし、当日のアリバイやらなんやらを必死に聞き出そうとする。

 呆れた婚約者がブーブー文句を言ってもまるで耳に入らない津田は、元オートレーサーだった3人組・千波丈太郎工藤堅太郎らと親しくなる。千波は週末に遠乗りツアーを企画していたが、それは表向きで、裏では参加者を盗品のバイクに乗せて運び屋をさせようとしていたのだった。

 津田は身分を隠して(当然だけど)ツアーに参加、なんとか証拠をつかもうとするが、途中で警官であることが一味の一人にバレてしまう。

 大ピーンチ!ところがどっこい、この後、手に汗握る?スタジオ撮影による壮絶なバイクアクションが展開。一人を崖に激突させ、もう一人は谷底へ転落、最後の一人は格闘の末に、津田は一味を逮捕して、婚約者とも仲直りできてメデタシ、メデタシ。

 田宮二郎が主演したバイカー映画なんて珍しいよね。昔はこういうバイクものの映画でアップ撮るとき、今みたいに小型のビデオカメラなんかないから、軽トラックの荷台にハンドルだけ突き出して、役者がそこへ乗って、それを正面から撮影してたらしいけど、これ、相当まぬけな絵だよね、撮影風景を考えると。

 バイクが並んで走行するときなんか背景に映画投影してスタジオで撮るんだけど、なんだかドリフのコントみたいでちょっと爆笑。 そういう撮影に耐えた田宮さんは偉いよ、ホント。あの人は俳優個人というよりも一つのブランドだからさあ、肉体派の俳優ならまだしも、あの「田宮二郎」だから、ね。

 高倉健さんも「演った」ことあるらしいから、これってある時代、専属大スタアの宿命なのかもね。

 そんな田宮二郎が演じる津田はしがないアパート暮らしで、隣人がこれまた冴えない印刷工の大辻伺郎なんだけど、これが単なる引き立て役じゃなくってなかなかイイ味。津田の正体に疑問をもった犯人の一人がアパートを突き止めたとき、大辻伺郎がとっさの機転でフォローする。

 イカす善玉コンビがその後の実人生までシェアしちゃってるのが少々そのナンだけど、そういうことはスッパリ忘れて(思い出す奴のほうが珍しいんだけど)楽しまなきゃっ!田宮さんの希少なバイカー姿を!

 ちなみに、本作品で主人公の婚約者を演じた藤由紀子は後に田宮二郎と結婚し、柴田光太郎のお母さんになった人。

1999年12月23日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-30