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乾杯!ごきげん野郎


■公開:1961年
■制作:ニュー東映
■監督:瀬川昌治
■助監:
■脚本:井手雅人
■撮影:
■音楽:
■美術:
■特撮:
■主演:デュークエイセス(声)
■寸評:


 幻のTVドラマ「ピーマン白書」という学園コメディーで、あの狂犬ジールーこと今井健二が「生活指導の先生」として登場したときはとても面白く、かつ、たまげたのである。と、同時に「今井さんって大人だなあ」と思ったのであるが、なに、この作品のアレに比べればなんのもかは、である(たぶん)。

 九州の養鶏場でアルバイトをしながら歌手になる日を夢見ていた四人の若者、梅宮辰夫南廣世志凡太今井健二は、サボって歌の練習ばかりしていたのでクビになってしまい、これを良い塩時と考えた梅宮は、自動車工場を営む叔父・東野英治郎を頼って上京を決意する。

 毎晩、工場の裏手でコーラスの練習(歌声はすべてデュークエイセスの吹き替え)をしていた彼等には病気で寝たきりの少女という、ありがたくて涙の出そうなファンがつくが、世の中は全然甘くないので、まったく芽がでないまま月日が過ぎていく。

 一見真面目そうだが、楽して出世する事には貪欲な梅宮が、コンクールへの出場を思い立ち、さっそく会場へ乗り込む。偶然居合わせた、大手レコード会社会長・榎本健一のいぶし銀のような祖父の七光り(おまけに歌は吹き替え)を受けた小生意気な人気歌手・三田佳子から「優勝者はもう決まっている」と告げられた梅宮たちは憤慨して会場を後にした。

 大人の世界の汚れた部分を知った梅宮が開き直り、一面識もなかった気の弱そうなタレント・柳沢真一を追いかけ廻し、強引に彼の顔見知りとなって、中堅タレント事務所の社長・十朱久雄に取り入り、芸能人野球大会に出させてもらったまでは良かったが、与えられた役どころはボールボーイ。

 古狸の十朱社長に鼻であしらわれ、カンカンになった梅宮たちだったが、とにかくデビューのきっかけが欲しい。

 今度はホテルのボーイに化けて(こんなんばっかし!)、榎本健一の還暦祝のパーティー会場へ乱入した梅宮たちは、はなはだ耳の遠い榎本を騙して、なんとかレコーディングを約束させるが、スタジオのマイクに気がつかず、榎本会長の悪口を言ったものだから、あっさり契約を打ち切られてしまう。

 ついに正体を現わした、じゃなくて、ヤケッパチになった梅宮は、録音スタジオに榎本会長を監禁し、レコーディングを強行。初めて彼等の歌声を聞いた三田佳子とスタッフは、そのあまりの上手さに感激する。が、榎本会長の補聴器がはずれていたため、評価を得ることが出来ず、失意の梅宮たちは故郷へ帰ることに。

 三田はラジオ局の友人に頼み込み、終日、梅宮たちのコーラス曲のテープを放送してもらう。歌声は、町中に流れ、ラジオ曲にはリクエストが殺到。しかしすでに長距離列車で東京を去った彼等はこのことを知るよしもなかった。

 梅宮たちが九州のド田舎の駅に降り立った時、そこに飛行機で先回りしていた三田から東京でデビューできることを聞いた梅宮たちはトンボ帰りして早速、リサイタルを開催し大成功を収めるのであった。

 梅宮辰夫、南廣、世志凡太、今井健二の四人を見て「コーラスグループ」を演らせようと考えた奴は凄いと思う。彼等がステージ衣装に身を包んで(スーツに蝶ネクタイ)勢ぞろいしたとこなんざ「恰幅の良いホスト」か「ボッタクりバーの用心棒」くらいにしか見えやしないもん、普通。

 下品さを一生懸命に消そうとした、涙ぐましいほど東宝色を意識した演出であるが、なにせ演るのが東映の役者どもであるから、全然オシャレじゃない。その代わりに梅宮たちを劇場からつまみ出す興業会社のチンピラどもに尋常ではないリアリティがあるというのが東映らしいところだ。

 映画の途中に挿入される「芸能人野球大会」の映像は、当時の国内大手映画制作会社(東宝、大映、松竹、日活)対抗野球大会のニュースフィルム。本筋とは何のかかわりもないが、ユニフォーム姿の東千代之介や、あきらかに寝起きまるだしの松方弘樹江原慎二郎らの姿も見られてなんだか得した気分になれる。

 野球場での乱闘シーン(ああ、やっぱり)では、梅宮軍団の暴力の餌食になりかかる人気俳優の役で中村嘉葎雄が飛び入りゲスト。これもやはり本筋とはなんら関係がないのであった。

 そんな付録で笑わせてばっかで駄目じゃん!などと思う前に、とにかくこれを作った東映の勇気(っつーか暴挙っつーか)に拍手を送ろうではないか。やらずに悔やむより、やって後悔したほうが諦めがつくと言うものさ、って客に励まされる映画ってのもたまにはイイじゃん?

1999年11月23日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-28