怪塔伝 |
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■公開:1951年 |
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尾張藩が仕組んだ、将軍暗殺未遂事件の実行者である白塔一族は、尾張藩主から口止め料として、将軍を狙撃した数馬の息子の芳太郎が成人したら一万石を与えるというお墨付を貰う。しかしこのお墨付は、カルトな白塔一族から逃れた芳太郎の実母と再婚した絵描きがどこかへ隠してしまった。 これに怒った白塔一族の頭領・進藤英太郎は絵描きの目前で、芳太郎の実母を拷問して所在を吐かせようとしたが、白塔一族に子供を取り上げられる事を拒んだ実母は責め殺され、そのショックで絵描きは発狂する。 お墨付の所在を記したと言われる、芳太郎の実母の惨い死に様を描いた地獄絵図は同様絵柄のものがたくさん出回っていた。白塔一族はシラミつぶしに作品を手に入れようと日本全国を旅していた。同じ頃、美型の浪人、新四郎・鶴田浩二が地獄絵図の一つを購入した大名屋敷へやって来て、絵図を譲って欲しいと頼む。 この大名は白塔一族の野望を阻止するためにひそかに絵図を探していたので、新四郎はすげなく追い返される。新四郎の正体は実母が命懸けでその身を守り、その後、父の努力で上田藩に引き取られ跡取りとして大切に育てられた、あの芳太郎であった。新四郎は出生の秘密を説き明かすために、藩主の娘との縁談を断わって旅に出たのだった。 新四郎が宿泊している宿屋の娘は、発狂した絵描きの前妻の娘で新四郎とは異母兄弟。白塔一族が血眼になって探していたお墨付は娘がもっていた万塔の中に隠されていた。白塔一族の頭領の妻・毛利菊枝は娘を誘拐し偽の芳太郎と結婚させようとする。行方不明の芳太郎の代わりに仕立てられた偽者は気違いで、これは、一万石の大名となった暁には、白塔一族が思い通りに操れるようにするためだった。 一族の隠れ家に乗り込んだ新四郎は一度は返り討ちにあうが、かつての婚約者である大名の姫に助けられ、腕の立つ隠密・月形龍之介とともに再び、娘の救出に赴き、一族を館もろとも滅ぼしたのだった。 白塔一族というのはカルトな集団で、本尊である謎の宝塔をかついでボヘミアンのごとく日本全国をツアーしているのだが、絵を探すためなら手段を選ばず行く先々の町や村を草一本生えないほどに破壊しつくすという全くもって迷惑千万な人達。だがよく見ると、その面子はハンディキャッパーあり、戦災孤児ありで各々同情の余地が多いにありそうだ。 現に、頭領(と言うか教祖)の欲望のために、パーな男と結婚させられそうになる娘を気の毒に思って、そっと逃がしてやろうとする信者もいる。もちろん、裏切り者としてその信者は殺されてしまうのだが、結局のところ、こういうカルト教団の「鉄の結束」を守る手段はいつの時代でも同じなのよね。 本作品では数馬、芳太郎、新四郎を鶴田浩二が一人で演ずるようにビリングでは紹介されるが、どっこい、彼は美男剣士の新四郎としてのみスクリーンに登場する。数馬は別の役者が演じ、芳太郎は話題になるだけ。 色男に金と力はあってはならない、という諺のとおり、鶴田浩二はひたすら目バリが凛々しいヤサ男で、忍び込んだ館では、あっさりと矢で射られ虫の息になる。クライマックスのチャンバラも月形龍之介にかなり助けてもらいつつの薄氷的勝利なのでちょっと情けない感じ。 「雨月物語」のイメージそのまんまの教祖の妻、毛利菊枝の怖さはこの映画の重要なキモ。五月藤江よりも外見が上品なぶんだけ余計に陰惨な感じ。 謎解きの楽しさに加え、鶴田浩二をめぐって、仇っぽいお姉さん・宮城千賀子とお姫様、宿屋の娘との三角関係もアリ。ラストの殺陣は障子をバカスカ突き破るダイナミックなもの。怪しいモノはちゃんと怪しく、カッコイイ二枚目はそれらしく、女優さんがみんなキレイ。古典的波乱万丈時代劇。 (1999年10月02日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-27