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宇宙大怪獣ドゴラ


■公開:1964年
■制作:東宝
■監督:本多猪四郎
■助監:
■脚本:清水宏
■撮影:斎藤正夫
■音楽:
■美術:
■特撮:円谷英二
■主演:夏木陽介
■寸評:謎の外人。


 怪獣がとらえどころがない姿をしているせいか、今ひとつ感情移入のしにくい映画である。筆者は怪獣映画ヲタ(特撮、じゃなくて怪獣)であるから、シンパシーを感じられない主人公(怪獣)はどうも苦手である。

 通信衛星が次々と原因不明の故障に見舞われていたころ、東京の銀座では深夜、色っぽいおねえちゃん、若林映子がド派手なスポーツカーに乗っていた。彼女の正体はダイヤモンド強盗団の一味。

 巨大な金庫の前で、あやしくうごめく男たち、イカサマ外人の天本英世、やたらエバってる田島義文、腰抜け野郎の加藤春哉。彼等があと少しでお宝にたどり着こうとした時、謎の発光生物が現われ、一味を丁重に空中浮遊させ金庫から引きはなした。

 一味の目の前でジュワジュワと溶ける金庫。腰を抜かした彼等は結局、何も盗らずに逃げ出した。ギャング団のボス、河津清三郎は世界各地で頻発するダイヤモンド強奪事件のうち、自分らの犯行がたった一件だけなのに、全部やったと思われていることに相当ご立腹の様子。そりゃ、まあ、ダイヤを横取りされてる上に、濡れ衣を着せられたのでは踏んだりけったりですからねえ。

 銀座の街角で居眠りしていた酔っ払いの体がフワフワと浮かんだのを見て慌てた警官の目前に、突如現われた謎の発光生物は空へ逃げ、クラゲ状の足をゆらゆらさせて雲間に姿を消してしまった。

 人造ダイヤの研究の第一任者である博士の中村伸郎の自宅に侵入した刑事の夏木陽介は、先に潜入していた謎の外人、ダン・ユマにあっさりノされてしまうのだが、博士の一人娘の藤山陽子に介抱して貰ってちょっぴりシアワセ、などと浮かれている場合じゃないのであるが、彼はかように万事のんびりとした性格で、この後もしばしばダン・ユマに一杯喰わされ続けるのである。

 クラゲ足怪獣は「ドゴラ」と命名された。ドゴラの鉱物はダイヤモンド。ガマクジラ(「ウルトラマン」参照)やバルゴン(「ガメラ対バルゴン」参照)同様、宝石(正確には炭素)が大好きな怪獣だ。およそ知性を感じさせない彼らだったが、実は地球の裏側にいる仲間と交信するために、ちゃっかり人間サマが作った衛星を利用さえする知能の持ち主だった。

 炭素含有物ならなんでも喰うドゴラはチマチマとダイヤモンドを失敬するのがメンドウになり、石炭に触手を延ばすのだった。が、これが彼等にとって命取りに。

 うっかり手を(足か?)つっこんだ古い炭鉱で蜂の巣をぶっこわしてしまったドゴラに、怖いもん知らずのジバチの大群が襲いかかった。なんとドゴラの弱点は蜂の毒素だったのだ。

 蜂にやられた部分は壊死してしまい、岩のように固くなり地上にバラバラと降り注ぐという、死んだら余計に迷惑なドゴラ。

 藤田進が率いる自衛隊はさっそく蜂の毒素を生成し、ドゴラめがけて吹き付けた。ちょうどその頃、地上では、ダイヤモンド強盗団が仲間割れを起こし、ダイヤを独り占めしようとした若林映子が殺された。夏木陽介とその上司の田崎潤ら警官隊に追い詰められた強盗団は、空から降ってきたドゴラの死骸に押しつぶされて死んだ。自衛隊に追われて逃げ出したドゴラたちは北極上空でついに全滅する。

 放射能はとても怖い。汚染されたキノコを食べた人間をマタンゴにしてしまうほど怖い。で、このドゴラたちも元々はなーんでもない細胞生物だったのが、放射能で突然変異をしてしまったというわけ。

 怪獣の姿がハッキリ見えないというのが不気味でよろしいね。なに考えてんだかさっぱり分からない乱暴な奴って直観的に怖い。かと思うと、無益な殺生はせず、好物のダイヤモンドを失敬するために強盗の皆さんに「どいて」もらうという、妙に行儀が良いところもあって、わけわかりません。

 怪獣映画に出て来る外人さんて基本的に宇宙人と大差ない扱いだから、はっきりした役どころだと思うんだけど、本作品のダン・ユマはどうも、この、つかみどころのない俳優さんで、のっぺりした顔は善玉とも悪玉とも区別がつきにくい。

 夏木陽介の一本調子な芝居に比して、怪獣といい外人といい、わけわかんない謎の諸々が活躍する、非プロレス系怪獣映画。

1999年10月23日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-27