愛の陽炎 |
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■公開:1986年 |
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製材所に運び込まれた神社の御神木に食い込んだ五寸釘。この映画はそんな「意味深長だけどわかりやすい」シーンから始まる。 その製材所に事務のねーちゃんとして働いているのが伊藤麻衣子。誠実な社長・佐野浅夫、優しい上司・小坂一也とともに健気に働く麻衣子だが、その清純そうな外見とは裏腹に、トラックの運転手・萩原流行とモーテルめぐりをしちゃう開放的な一面もあった。 伊藤は萩原と結婚の約束をしていた。 萩原は運転中に女子高校生をハネてしまったのでその治療費、スウイートホームの建設費、などなど、たびたび麻衣子に借金をしている甲斐性なし。しかし、恋は盲目というように、麻衣子は萩原がよその製材所からかっぱらった材木の横流しに協力するほどベタボレだった。 孫娘の一途な恋を心配した、麻衣子の祖母・北林谷栄は、寺の住職・高田純次に萩原の素行調査を依頼。その結果、萩原には許婚・風祭ゆきがいた。さらに、交通事故だとウソこいて麻衣子から借りた金で、自分が妊娠させた女子高校生を中絶させていた事実が、麻衣子の友達の看護婦・戸川京子からの情報で発覚。新居建設の土地購入資金というのも、萩原の借金返済に横領されたらしい。 可愛さあまって憎さ百倍。怒った(当然だ)麻衣子に問い詰められた萩原は逆ギレし、材木泥棒を社長へ告げ口すると開き直った。挙句に資産家の未亡人・司葉子の家にも出入りしていたと知った麻衣子の怒りはついにメルドダウン。 そこへまたまた登場したおばあちゃんは、家に代々伝わるという「丑の刻参り」セットを麻衣子にプレゼント。麻衣子は頭にロウソク、というのは火傷の危険があるため豆電球に取り替えて、おばあちゃんの白無垢をリフォームした装束に、左手には藁人形、右手には五寸釘とカナヅチ、口には真っ赤な櫛をくわえて、萩原に呪いをかけるべく真夜中の裏山へ登るのだった。 翌日、萩原が原因不明の病気で入院したと知った麻衣子はおばあちゃんとささやかな祝杯をあげた。 しかし、それは単なる偶然だった(当然だ)。その次の日には萩原はピンピンして製材所へやって来た。 超ムカついた麻衣子は、おばあちゃんに「だから歳寄りは役に立たない」だのなんだの言いたい放題の八つ当たり。半ベソのおばあちゃんから「願掛けの途中ですぐ効果があるわけない」と諭され、気を取り直した麻衣子は再び、人形片手に裏山へ。 呪い姿も堂に入ってきた麻衣子は、だんだんその気になってきたらしく、目はランランと輝き、次第に恐ろしい形相に。材木泥棒から戻ってきた萩原が、偶然、山から下りてきた麻衣子を発見してしまい、その顔に驚いてハンドルをきりそこね、トラックもろとも崖下に転落、炎上したトラックとともに焼死する。 万願成就、あらためて丑の刻参りのパワーを認めた麻衣子であった。 が、しかし、未亡人の口から、萩原が許婚と別れたがっていたこと、未亡人とは土地の購入を相談するために会っていただけだと聞かされた麻衣子は、目の前に「土地の権利譲渡」の書類を差し出され、萩原の誠意が本物だったと知り、大ショック。 麻衣子は「丑の刻参り」セットを崖下に投げ捨て、一人、町を出ていくのであった。 だが普通の「丑の刻参り」(って?)ってのは、風祭ゆきや、司葉子らの女性の仇に対して呪われるものではなかろうか?ま、今回の場合は男が二股どころか三股も四股もかけてたんだから、いちいち呪ってらんないわ、というところなのかもしれないけれども。 ここんところが男性脚本家らしいとこだね、普通、どんなに裏切られても男に行かないもんなのよ、色恋沙汰における女の怨念の矛先は。 虐げられた(思い込んでいるだけの場合も含め)女性が復讐するための唯一の手段としての「丑の刻参り」に込められた情念の濃さというのは根強い人気があるらしい。今だにソレをアレしている人は多いらしいし、男性から見れば、行為の間抜けさと当事者の真剣さのギャップにドラマ性を見い出したのは共感できるところだ。 伊藤麻衣子、本作品が劇場公開映画のデビュー作である。橋本忍先生の脚本、司葉子ら大物俳優との共演、字面だけなら立派だが中味はこれこのとおりの仰天映画。「幻の湖」の陰に隠れがちだが、どっこい良い勝負では?(橋本忍先生的に)というキワモノ作品。 (1999年10月30日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-27