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ドーベルマン刑事(でか)


■公開:1977年
■制作:東映
■監督:深作欣二
■助監:
■脚本:高田宏治
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:千葉真一
■寸評:豚をかついで珍道中。


 沖縄出身の刑事・千葉真一が東京の所轄署に赴任してくる。カントリーな彼は手みやげに黒豚一頭持参してアーバンな刑事課長・藤岡重慶のひんしゅくを買う。

 パンマの連続焼殺事件の最中、アパートで焼死した幼なじみの娘っ子が別人ではないかと疑った千葉ちゃんは、ひょんな事から知り合ったストリッパー・松田英子とそのヒモ・川谷拓三に被害者のお骨と豚を預けてさっそく、行動開始。

 薬物中毒患者のヤクザ・志賀勝が、アメリカ帰りの新人と呼ぶにはあまりにも脂の乗り切った口パク(歌声・弘田三枝子)歌手・ジャネット八田(後、田淵の奥さん、八田由加)を誘拐して心中を迫るという手の着けられないような事件が発生。元やくざのマネージャー・松方弘樹は千葉ちゃんに救助を要請。高いところが大好きな千葉ちゃんは屋上からロープを垂らしてまるでターザンのように室内に進入、志賀をぶっとばしてお手柄をたてる。

 お調子者の暴走族・岩城滉一は無類のパンマ好きだったため、連続殺人犯の容疑者候補ナンバーワンとして逮捕されるが、岩城の軟派な性格ではそんな度胸の要る悪事はできまいと読んだ千葉ちゃんは岩城救出のため押し掛けたおっさん暴走族・小林稔侍に協力し、岩城とマブダチになって調べていく内に今回の事件と連続殺人犯の犯人は別人という事実が判明。

 八田の過去を調べ始めた千葉ちゃん、その千葉ちゃんのケツを追いかけ回しておこぼれにあずかろうとしているハイエナの岩城を消そうとした松方の片腕・成瀬正隆に捕らえられた千葉ちゃんは、岩城が趣味でアメちゃんから購入していたマグナムでちんぴらの頭をミンチにしたため、警察から負われる羽目に。

 連続殺人犯の正体は、拳銃の不正使用がバレて刑事から降格された巡査・室田日出男だった。正体に気づいた岩城を惨殺した室田を、職業意識だけでなく岩城との友情パワーも加味されたハイパー千葉ちゃんがバイクをばりばりさせて大追跡。

 ピストルを撃ちたくてしようがなかった室田は、パンマと暴走族にターゲットを絞ることで自分のストレス解消を正当化しようとしたのだが、どっこい、そんな身勝手な哲学と長い台詞は野生児、千葉ちゃんには理解できない、じゃなくて、容認されるモノではなく、命乞いをする室田は岩城の形見であるマグナムの餌食となった。

 ジャネト八田こそが実は千葉ちゃんの幼なじみで、彼女はニューヨークの下町でジャンキーな生活を送っていた過去を抹消するために整形していた。その事実を知ってしまった友達を、八田が自分に見せかけて焼き殺したのだった。八田にマジ惚れしたセンシティヴな松方弘樹と、八田を故郷に連れて帰りたい千葉ちゃんが心ならずも対決、千葉ちゃんはマグナムで松方の胸板に風穴を開けた。

 いやあものすごいドラマですなあ。

 なんせね、新人歌手のコンテスト番組で八田のライバルになりそうな男性新人歌手が、実は歌謡界の大物、ちょっと古賀政男を彷彿とさせる遠藤辰朗の「お稚児さん」だったという設定。美少年養成所のあのプロダクションの社長をすぐ思い出しちゃって笑うに笑えんでしょう、でも笑うけど。

 その遠藤を懐柔するために成瀬正隆が当の美少年歌手とSMプレイを堪能しているブルーフィルムを遠藤に見せて、その性癖をネタに八田を応援するように迫るわけなんだけど、ほら、遠藤さんってのも、アレっぽいから、これも笑えないよね、でも笑うけど。

 そんな変態や薬物中毒患者たちに翻弄された千葉ちゃんにとって、体を張って稼ぎ、向上心とは無縁のライフスタイルを謳歌する、ストリッパーとヒモのカップルが東京で唯一まともな人たちだったというメッセージには共感するなあ。

1999年12月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-27