「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


セックス・チェック 第二の性


■公開:1968年
■制作:大映
■監督:増村保造
■助監:
■脚本:池田一朗
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:安田(現・大楠)道代
■寸評:男になったり、女になったり。


 実業団の陸上部、部長・内田朝雄は、オリンピックの百メートル走に、自分のチームから代表選手を出そうと、元陸上選手の産業医・滝田裕介の紹介で、コーチを雇うことになった。

 滝田が連れてきたのは、戦前に活躍した名スプリンターで、復員後はすっかり落ちぶれてしまった中年男・緒形拳。緒形は、日中戦争当時、大陸で敵兵と戦い、極限状態の中で現地の女性を強姦し、今ではバーの女のヒモ生活。

 滝田の家に招かれた緒形は、かつてプロポーズしたことがある滝田の妻・小川真由美を酔った勢いで犯してしまう。結局、滝田の要請によりコーチを引き受けた緒形であったが、いくらなんでも自分の女房を強姦した男の顔を毎日見ながら働けるわけがない滝田裕介は退社し、陸連の顧問医師に。

 緒形が体育館の前を通りかかると、女子バスケの練習中に相手の選手を押し倒した事を注意され、ブータレて、女性コーチを思いっきりドツいている性格の暗そうな女子選手がいた。彼女・安田道代の根性とスプリンターとしての素質を見抜いた緒形は、本人の意思はともかく、陸上部へ入部させた。

 男遊びに御執心の同僚とは一線を画す、っつうか「浮いた」存在の安田は、なにかにとりつかれたように緒形についていく。

 牛乳ゲロ(胃液とも言う)吐きまくりの激しいトレーニングはもちろん、女性らしい体つきにならないように、毎日、髭を剃って、男性らしさの育成に励む安田。

 寝食をともにし、つきっきりで指導する緒形と安田。「あしたのジョー」における丹下段平のようなタフなコーチのおかげで、安田の記録は伸びて行った。いよいよ代表選手の選考会。予選で日本新記録と並ぶタイムを出した安田に対して、内田朝雄は一応、セックスチェックを受けるように指示する。

 往々にして、力のある女子のスポーツ選手が、医学的に「女性ではない」(半陰陽)と判断されることがあるからだ。安田の診察をした滝田は、生理のない彼女を「半陰陽」と判定したため、安田は代表選手候補の資格を失う。

 女房をヤられた意趣晴らしをされたと思い込んだ緒形は安田と一緒に滝田の自宅へ乗り込む。そこには、緒形に犯された後、何度も自殺未遂をした挙句に発狂した小川真由美がいた。そんな小川の姿に目もくれない緒形は「安田が女性である証拠を見せる」と豪語し、滝田の目の前で彼女とセックスをしてみせる。

 滝田はあきれ果てたが、もう一度、検査した結果、安田は晴れて女性であると証明された。

 伊豆での合宿中に、安田が足をすべらせ斜面を転落。あわてて救助に向かった緒形は、彼女の下着に血がついてるのを確認する。安田は正真正銘の女性になったのだった。

 オリンピック出場を賭けた選考会で、安田は予想外の惨敗。女性らしさの備わった安田には、もう爆発的な瞬発力は無く、スプリンターとしての素質も失われていた。緒形はコーチを辞め、安田と一緒に暮らすことにした。

 女性の月経をマトモに「見せた」商業映画には、お目にかかかったことがないから、そういう意味では大変に貴重な映画と言えるのでは?

 女子工員仲間からは「女扱い」されずそれに反発してガンバッた安田がやっと「女」になった途端に選手として使いものにならなくなる、という皮肉。なんかいちいちエラそうな態度がイラつく緒形拳が挫折する様はザマーミロ的なカタルシスがあってそれなりに楽しい。

 今だに「生理があるのは気が弛んでいる証拠」と言い放つ男性指導者がいるという女子スポーツ業界、過激な運動にはつきもののマゾっ気、サドっ気。安田道代の「短パン」から漂う溌剌系フェロモンには緒形拳の「いつもどおり」のアナーキーさもかなわない。

 増村監督の映画に出て来る女優は大概、肉感的であり、その「肉体美」は別に裸にならなくても十分に扇情的になりうるという見本の映画。

1999年11月16日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-27