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ザ・カラテ


■公開:1974年
■制作:東映
■監督:野田幸男
■助監:
■脚本:高田宏治
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:山下タダシ
■寸評:


 空手映画ブームというのが、かつてここ日本ではあった。平成の現代で言えば「K−1」ブームみたいなもんだ。武道にぜんぜん関心のなかった筆者でさえ、極真会館のドキュメンタリー「地上最強のカラテ」なんて劇場に見に行ったくらいだ。そんなドル箱を東映が見逃すはずもなく、本作品主演の山下タダシだけでなく、キックボクシングの沢村忠(あ、タダシつながり・・・)やプロボクサーの西城正三なんか呼んじゃってこのテの映画をばかすか作った。 迷惑なのは殺陣師と擬斗の相手をさせられる専属脇役の皆様である、本当に頭が下がるね、客としては。

 その機に乗じて千葉真一が一気にスタアになったかのように歴史書には記されているが(ま、間違いじゃないんだけどね)千葉さんの場合はその前から東映(っつうか第二東映っつうか、、)でスタアだったわけで、本当に、この、空手映画ブームで一斉を風靡した人の一人が、本作品の山下タダシ。

 外国育ちの山下タダシは病気のおばあちゃんを助けるために、高額の賞金がゲットできる「世界武道大会」への出場権を得ようと日本へ戻る。

 バリバリの帰国子女であるタダシは片言の日本語しか話せないが、顔はまるっきり日本人、しかも、内藤陳に元世界チャンプの具志堅がまざったような戦闘的(かつちょっとヘン)なタイプ。

 世間知らずを思いっきり利用されたタダシは、悪徳ブローカーの小田部通麿にスカウトされてしまう。

 タダシは沖縄でラーメン屋の居候となって、来るべき選手権のために日夜ハードな練習を積む。相棒はハヒーハヒーがトレードマークの山城新伍、彼は別に空手なんか全然できないが、台詞も芝居もからっきしの山下タダシを助けるため「だけ」に大奮闘。

 沖縄空手の大先生は、空手界の発展を願って純粋な気持ちで武道大会を推進していたのだが、主催者たちは高額な金を賭けたギャンブルとしか本大会を考えていなかったから、ズバリ、強い選手を獲得するためには手段も選ばず、妨害工作の卑怯な手口なんか全然平気という人々。

 多くの選手がその目論見を承知で、高額のギャランティ目当てに集まってきていた。武道大会なのに、ナイフ投げが得意な奴や、斧をブン投げるというアブナイ奴らのオンパレード。

 圧倒的な強さを誇る中国人の武道家の鐘銘裕は、金はともかく、自分よりも強い奴がいるのが気に食わないという、武道オタク。

 通常、このようなヤマト魂系の映画では仇役にまわるはずのアメリカ人(例:フランツ・グルーベル、ロルフ・ジュッサー等)のアレックス・ブルボースはスポーツマンシップに則った実にイイ奴で、悪の手先になることを拒み、山下タダシを庇って射殺される。

 タダシはラーメン屋のねーちゃんを敵側に人質に取られて絶体絶命になるが、件のアレックスのおかげでなんとか脱出成功、しかし、両目を焼かれて失明してしまう。

 闘争本能だけで生きている鐘銘裕はタダシが武道大会を棄権したと知るや「正々堂々と勝負をしよう!」と人里はなれた山奥へタダシを呼び出す。そんなん、盲と一騎討ちなんてどこがフェアなんじゃい!と叫びたいわけであるが、まあそういう細かい事を気にしていると先へ進まないので、とりあえず無視。

 赤土むき出しの荒れ地で繰り広げられる、タダシと鐘銘裕の死闘。途中、悪の手下、福本清三らを蹴散らしつつの勝負は息をもつかせぬ好勝負となるはずだったが、いかんせん、この二人は本当の空手選手だったため、要するに、殺陣師じゃなくて体育の先生がそのまんまチャンバラやっちゃうようなモン。全然迫力なし、盛り上がりなし、素人目にはなにがなんだかサッパリ?

 そんなこんなでいつのまにか勝負は終り、タダシは勝利するのでありました、とさ。

 この映画の本当の見所になるはずだったのは、たぶん、きっと、世界武道大会だったに違いない。

 しかし、その武道大会のシーンときたら背景は照明を落とし、衝立をパタパタと立てた「だけ」という恐ろしくビンボーなもので、エキストラの100人くらいはなんとかしろよ、と思えども、見えるのは東映の殺陣グループの一団と、ラーメン屋の親父、山城新伍ら主要な登場人物「だけ」という体たらく。

 おまけに、だよ、選手控室なんて屋外のテントである。小学校の運動会における貴賓席じゃないんだからさあ、、、。

 主役の山下タダシはとにかく何しゃべってんだか解読不可能、とりあえず乱闘シーンだけは、ビンボーながらもそれなりに充実、してたかな(たぶん)?と思う空手映画シリーズ(え?これってシリーズになったの?と、当時の空手映画ブームの凄さがよくわかる)の第一作。

1999年10月16日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-17