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誘拐


■公開:1997年
■制作:東宝
■企画:
■監督:大河原孝夫
■助監:
■脚本:森下順
■原作:
■撮影:木村大作
■音楽:
■美術:
■特撮:
■主演:渡哲也
■寸評:


 東照グループの重役・石浜朗が誘拐される。事件を担当するのはベテラン刑事・渡哲也とアメリカ帰りの新米刑事・永瀬正敏。犯人は、事件を警察やマスコミにリークし、身代金の引き渡し現場をテレビ中継するように要求してくる。人質との取り引き方法は、グループ傘下企業の監査役・西沢利明に3億円の現金を担がせて新宿界隈を走り廻らせるというものだった。途中、心筋梗塞の発作に倒れた監査役を介抱した渡は公衆電話の向こうから犯人が「ゲームオーバー」を告げたのを聞いた。

 次に犯人が要求してきたのは、メインバンクの重役に前回同様、身代金を運ばせること。大人数のマスコミに監視され移動を続ける重役は日頃の運動不足がたたり疲労し動けなくなってしまう。かわりに現金を担いだ渡は、喫茶店を手始めに次々と犯人が指摘してくる取り引き場所へ必死に走る。

 高速道路に放置された現金はいつのまにか古新聞に化けていた。人質と、徹底的に走りまわらされた企業の経営者たちとの関係は?犯人の本当の狙いは何なのか?警視・柄本明は、犯人が送ってきたある名簿のコピーから、26年前に山梨県のある村で起こった公害訴訟こそが、犯人逮捕の手がかりであると断定する。

 26年前、産業廃棄物が大量に不法投棄されたその村では、猛毒のダイオキシンによって飲料水が汚染され集団中毒を引き起こし多数の死亡者が出ていた。しかし廃棄物を運んだと思われていた運送業者が被告である企業に買収されて偽証したため、事件は原告側の敗訴になっていた。脅迫電話の主が、被害者側の弁護士・新克利らしいと分かった頃、渡は胃癌の発作で倒れてしまう。

 渡哲也、日本映画史上、最も「犯人役」が似合わない男(ってそんな基準があるのかどうか知らんが)。

 この映画では犯人側に逃亡しようという気が全く無いから、ボロがあっても当然なのだが、首謀者だけは本当に分からんのよ、永瀬クンが突き止めてくれるまでは。で、分かったときはなんだか物凄く熱いモノが込み上げてきて泣けるのよ。

 それはね、伏線がちゃんとしているからなんだろうな、と思う。終って見れば分かりやすい伏線、意外な犯人、これって推理映画の基本の「き」の字だよね。もちろん、犯人登場型ってのもあるけど。そういう意味だと新克利はわりと簡単に判明する。ボイスチェンジャーで変容させた声が新克利の地声とそっくりだから。でも、それもまた伏線。なあーんだこれだけ騒いで新がホシなの?渡さんの相手じゃあ役不足(新さんのファンの皆様、許されて!)じゃないの?ってね。

 もはや日本の映画界じゃあ渡哲也と渡り合える(上手いシャレ?)のは渡哲也、のみ!ってところなのよね。

 撮影当時、銀座の町中を実際に30キログラムあるスポーツバッグを担いで走る渡哲也が話題になったけど、もっと大変だったのが西沢利明。銀座みたいに行儀の良い町ならまだしも、西沢利明が走らされたのは風俗の町、新宿の歌舞伎町だもん。いくら重くないゼロハリバートンのスチールケース持ってたとしても、報道陣を引き連れてというシチュエーションであの町を移動するのってスゴいのよね。ただし、野次馬の何人が、それが西沢利明だと気がついたかどうかは別だけどさ。

 歌舞伎町走ったのが渡さんだったらもっと大変だったろうね。パニックどころじゃなくて暴動の一つも起きそうだ。やめてくれって頼んだんだろうな、新宿警察が。

1999年07月12日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16