幽霊列車 |
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■公開:1949年 |
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山奥の駅で、定期バスの運転手・伊達三郎と、その実妹の車掌・日高澄子が最終列車の到着を待っていた。列車から吐き出された乗客たちが向かうのは、さらに山奥の温泉旅館。カンカン帽の親父・柳家金語楼、歯痛の男、田舎紳士・花菱アチャコ、横山エンタツ、目つきの鋭い男・藤井貢、盲の夫婦連れ、色っぽいおねーちゃん、アロハシャツの男・小柴幹治。いずれもいわくありげな男女たち。 天候は荒れ、増水した川の上でエンコしたバスはしかたなく駅へと引き返す。駅長は乗客たちにどこか他の場所に宿泊するように説得する。駅長がソワソワと早く帰ろうとするのを引き留めた金語楼はその理由をしつこく尋ねた。駅長は「この駅は幽霊列車が通る、それを見たものは必ず死ぬ」と言う。 敗戦前、女優や男優を大勢乗せた列車が駅員のポイント切り替えのミスで、断崖から転落した。その時に回収した遺体を駅舎に収容したが、奇蹟的に助かった機関士は事故の責任を感じて気が狂い、フラフラとホームへ立ち赤いカンテラをふったかと思うとポックリ死んでしまった。 その事件があってから、この駅を最終列車が通過した後に、猛スピードの幽霊列車がギシギシと音をたててやって来るのだと言う。誰も手を触れていないのに警笛が勝手に鳴り出したら、どうか列車のほうを絶対に見ないように、できれば一刻も早く駅を立ち退くように駅長は繰り返した。 駅長が帰った後、突然、駅舎が停電し警笛が鳴る。田舎紳士の鞄をスッたコソドロがホームでカンテラを振る男を見て腰を抜かした直後、幽霊列車が轟音をたてて通りすぎた。意外とあっけない出来事に拍子抜けした乗客たちは外で気を失っていた駅長を発見する。悲鳴が聞こえバスの車掌が駅舎に乱入、何かに取りつかれたように踊り出した。 乗客たちは、すわ幽霊のたたり!と怯え出す。金語楼がエンタツとアチャコを従えて外へ出て見ると、運転手が殺されていた。気が狂った車掌とかつて恋人同士だったアロハシャツの男がナイフを手にしていたため、彼は犯人として目つきの鋭い男に逮捕された。藤井貢は刑事だったのだ。 藤井は、幽霊列車というのは真っ赤な嘘で、闇物資の運搬をしているのだと乗客たちに説明する。彼はその捜査のために派遣された刑事であった。藤井はアロハシャツの男を犯人の一味として逮捕した後、駅に戻ってきた幽霊列車の乗員たちを全員逮捕した。 ところが今度は藤井が列車を奪って逃走する。物資の横領を図ったのである。列車の屋根に飛び乗り、藤井をやっつけたのは金語楼だった。彼の正体も刑事で、藤井の横領を防ぐために当地へ来ていたのだった。事件の首謀者は駅長で、怪談話しも真っ赤な嘘、失神したフリをして乗客を怖がらせるために停電させていたのだった。一度通過した幽霊列車は一つ先の駅で闇物資を積み、密かに引き返し、この駅で取り引きされていた。それを村人に知られないようにするために、幽霊の噂を広めていたのであった。カンテラを振っていたのは運転手だった。運転手と車掌は駅長に無理やり協力されていて、真相がバレるのを恐れた駅長によって運転手は殺されたのだった。 アロハシャツの男はバスの車掌のかつての恋人であり、東京では運転手とヤクザ仲間だった。彼の妹は伊達に捨てられたのを悲観して自殺しており、行方をくらました伊達をやっと見つけて謝らせようとした矢先に伊達が殺されたので、犯人と間違われたのだった。バスの車掌はかつての恋人の無実を知っていたが駅長が怖くて気違いの真似をしていたのだった。 犯人一味と汚職刑事を逮捕した金語楼は意気洋々と東京へ帰って行った。 出演者とタイトルを一見して「妖怪大戦争」的なお子様映画を想像していたら、あにはからんや(弟知らんや、古いギャグ)犯人探しに没頭できる、小気味良いミステリー映画だった。 幽霊列車のミニチュアが絶品。円谷英二監督の手になる特撮部分は、フィルム自体がすでにショボくなった現在時点で見ると、まるっきり本物に見える。だから観客もすっかり駅長の話にだまされ、こわーい幽霊列車の登場を、映画中の乗客と一緒になってワクワクしながら待ってしまうのである。 不安になった乗客に新興宗教のお守り札を売りつける奴がいたり、騒ぎの間中ずーっと寝ている奴がいたり、胸元のドーンとあいた美女がいたり、とにかく出てくる人物一人一人にちゃんと小芝居が割り当てられていて、ソツがない。 集団で登場する人物の誰に焦点をあてて見ていても、ちゃんとスジが通っているのだ。キャラクターの種類が豊富でありながら、破綻なく進行する映画というのは一級品と呼んで良い。 そして金語楼のアクション!フィルムのツマミはある程度大目に見る(いや、実際にかなりの速度で走っているのでは?)として、たとえ一部がスタントかもしれなくても、走る列車の屋根から飛び降りる金語楼(金語楼が、ですよ)や列車の外壁を伝う金語楼をこの目で見たら、感動必至。チバちゃんに慣れている私としては「アクションのできるハゲ(しかもしょぼくれ親父)」なんてブルース・ウィリスくらいしか知らないから、大拍手しちゃいますね、思わず。 当時の芸人図鑑としても価値ある作品と言えるかもしれないが、これだけ見所が詰まった作品があまり知られずにいる(一部では有名かも)のは不思議。まだまだお宝というのは眠っているもんなんだねえ。 (1999年07月05日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16