野獣死すべし 復讐のメカニック |
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■公開:1974年 |
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大企業の重役が次々と謎の死を遂げる。オーナー社長・小松方正は正体不明の犯人に怯える。社長の一人息子・村井国夫は美人妻・真理明美がいるにもかかわらず、秘書・緑魔子と浮気をしていた。 伊達・藤岡弘は私大のしがない助教授であったが優秀な男であり、雑誌に発表された教授・渥美国泰の論文は彼が手がけていた。彼の授業に反抗的な態度をとった男子学生に対し、伊達は「実際に人殺しもできないくせに大口をたたくな」と意味深長な台詞を吐く。学生は伊達の底知れぬ迫力に次第にひかれていくのだった。 伊達の実父は、かつては大企業の社長だったが、小松方正親子の策謀によりその地位を追われ、最後は発狂して自殺を遂げていた。伊達はオリンピック候補になったほどの射撃の名手で、彼とはライバル関係だったルポライター・黒沢年男が、一連の連続殺人について伊達を調査していた。 伊達は村井に別れ話をもち出されヤケ酒をあおっていた緑魔子に接触。彼女を抱いて、村井への復讐をそそのかす。彼女から会社の重要機密を手に入れた伊達は小松に取り引きを迫る。小松は配下のやくざ・近藤宏に命じて伊達を抹殺しようと企む。 深夜、激しい銃撃戦の末、近藤の部下を倒し大金を手にした伊達は、緑魔子も射殺し行方をくらます。小松の圧力により、彼女はやくざの抗争事件に巻添えになったと新聞発表され事件はモミ消された。 村井の妻を誘拐した伊達は彼女を強姦した。彼女のあられもない姿を撮影した伊達は写真をネタに村井を恐喝。今回もやくざに手を廻してなんとか真理明美を取り返した村井国夫だったが、犯されて精神に異常をきたした真理は、酒に毒を盛り村井と無理心中をして果てた。 ついに小松方正一派との直接対決に臨んだ伊達は、自分に憧れていた男子学生を囮にして、敵を山中へ誘いだし全滅させる。伊達の犯行を確信した警察は、復讐を終えた伊達が立て篭った山小屋を包囲する。 後を追ってきた黒沢は必死に伊達を説得しようとしたが、彼は小屋の中から警官隊に向かって突如発砲。その直後、警察の一斉射撃を浴びて伊達はハチの巣になるのだった。 コマーシャルってのは残酷だね、一度でも笑われたらそのイメージがずーっと残っちゃう。何を演っても説得力がなくなるからね。こんなにクールでニヒルなヒーローを藤岡弘がいくら熱演しても、観るほうは吹いちゃうんじゃないかね、今じゃあ。 タイトルにある「メカニック」なのは藤岡弘、本人を指す。 そりゃそうだよ、アイツは改造人間だもんね、なんて具合の変身ヒーローヲタク的なオチはともかく、同じ原作を持つ作品群の中では主人公の「野獣」度については、かつての仲代達矢や後年の松田優作は、その身体的な特性において藤岡弘の足元にも及ぶまい。 見るからにケダモノっぽいそのルックス。単に毛深いだけでなく、なんかこう、きっと近くに寄ったら犬臭いんじゃないか?とか、そういうリアリティである。嗅いだことないけど。 この映画の主役は藤岡弘演じるところの「ケダモノ」であるが、もう一人、忘れ難い印象を残すのが、愛の暴走戦士、緑魔子である。 女ったらし(の役どころ)の村井国夫にモーションかけられた段階で「こりゃアソビだな」と覚悟をしてビジネスライクに徹するのが現代女性の王道だと思うんだが彼女は違う。あくまでもマジ惚れ。「お金なんかいらないわ!」と多額の手切れ金に何の未練もないんである。 こういう女に手を出したら最悪の結果になることは間違いない。 金でカタがつく問題なんてのは、実は大した事ないのだ。金で収集のつかない問題、つまり人間の情念とか怨念とか、そういう諸々の感情的な諸問題こそが人生を破滅へと導く。脅し取った金を紙吹雪にする主人公の伊達もまた、しかりである。 伊達に殺されると分かっていても無抵抗だった緑魔子、射殺されるのが分かっているのに反撃した伊達、この二人、実は似たもの同士だったわけだ。ドラマチックやねえ、、、。 ところで、仇役の小松方正ですけどね、基本的に「デブに悪人無し」という持論を信ずる私としてはどうも納得いかないキャスティングである。しかも知能犯、しかもエリート、しかも金持ち、しかもスケベ無し。そんな小松方正なんて「クリープの無いコーヒー」(古い、、)以下だ。それに、息子が村井国夫というのも許せない。遺伝学を無視しすぎだ、ひょっとして貰いっ子か? 精密機械のようにクールだが、その情念の濃さは沸騰するほど熱い。そんな超カッコイイ藤岡弘を見たい人には絶対オススメの一作、だから最後まで笑わないで観てあげてね。 (1999年07月26日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16