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復讐の歌が聞こえる


■公開:1968年
■制作:松竹、俳優座
■企画:
■監督:貞長方久、山根成之
■助監:
■脚本:石原慎太郎
■原作:石原慎太郎
■撮影:
■音楽:
■美術:
■特撮:
■主演:原田芳雄
■寸評:


 竹中・原田芳雄が刑務所を出所した。彼は大企業の社長であった父親・稲葉義男の腹心・内田良平らに騙されて企業犯罪の片棒を担がされた。その結果、父親は会社を追われた後に殺され、恋人・鵬アリサには逃げられ、専務だった兄・横山正は事件の責任を取らされ自殺に追い込まれていた。

 原田一族に濡れ衣を着させた上に麻薬密売で大企業に成り上がり、その社長に収まった内田はこともあろうに、原田の兄の婚約者・岩本多代と結婚し一子をもうけていた。もちろん、岩本は事件の真相は知らなかった。ある日、原田の物と思われる靴と遺書が自殺の名所で発見された。新聞も原田の自殺を報道し、内田たちはほっとする。

 その矢先、内田に雇われた殺し屋・大木庄司、兄を陥れた功績で出世した部長・中村敦夫、会社をドロップアウトしてキャバレーでトランプ占をしていた元社員・菅貫太郎らが次々に殺される。事件の関係者ばかり10人以上も変死した企業のオーナーは当然、世間の注目を集めたが、過去の犯罪に関する証拠は一切、明るみに出なかった。

 殺害現場に落ちていたトランプの数がだんだん増えて行く。そしてとうとう原田は内田の前に姿を現わした。温厚な家庭人だった内田の裏の顔を知った岩本は子供を連れて家を出た。残った二人はサシで対決することに。激しい殴り合いの末、血だらけになった二人。ついに内田を倒した原田はどこへともなく姿を消して行った。

 実に潤いのない映画である。

 ただただ無愛想な(そこが魅力と言うものさ?)原田芳雄が、恐怖に怯える中村敦夫(適役!)をビルの工事現場から真っ逆さまに地上にたたきつけてミンチにする、とか、出場の少ない割にあいかわらず存在感ありすぎの菅貫太郎をザックリと殺したり、とか、スピアダイビングが趣味の社員・福田豊士を魚礁ブロックに手錠で繋いで溺死させる、とか、殴られて動けなくなった内田良平の顔と体を鎖でメッタ打ちにする、とか、、。

 これがモノクロームの画面に延々と繰り広げられるのだ。

 ったく何が面白くてこんな映画作ったんだか分かりゃしない、んであるが、それにつけてもこれが「映画初主演」という原田芳雄の初々しさの「無さ」は特筆に値して、なんだこの人の雰囲気って生まれつきのモンだったのねと大納得のボサボサぶり。

 今どき、こんなに老けた27歳なんておらんぞ。

 俳優座と提携しているため、出演者のほとんどが新劇人で固められいる。後に原田芳雄や中村敦夫らと一緒に大量脱退をする一人、菅貫太郎はそこそこの地位や金を手に入れた他の被害者とは違って、一度は出世したものの仕事でしくじって、就いた仕事がトランプ占い師という実に天職な、じゃなくて、ハマリ役で登場し、アニュイな電波を発信しまくって、地味な出演者の中でひときわ目立つ。

 原田は殺す前に自分の正体をまるで長崎奉行(「長崎犯科帳」参照)のように被害者に対してとっくりと見せるか打ち明けるかして、トドメを刺す。その方法のバラエティを楽しむというのも本作品の見所の一つかも。

 リーサルウエポン・原田芳雄には喜怒哀楽がまるで感じられない。

 かようにハードボイルド映画の主役とは無表情で無愛想なものだから脇方の盛り上げ方にほとんど成否がかかっているのである。原田君、達者な同期生を持って本当に良かったね?

1999年07月05日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16