「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


忍者武芸帳


■公開:1967年
■制作:創造社
■企画:
■監督:大島渚
■助監:
■脚本:大島渚
■原作:白戸三平
■撮影:
■音楽:
■美術:
■特撮:
■主演:戸浦六宏(声)
■寸評:


 かつて映画の業界はテレビドラマをして「電気紙芝居」と蔑視する発言をしていたが、これは紙芝居を映画にした実験的な試みである。

 各地で頻発する百姓一揆の中でも最大の規模となった一向一揆は謎の忍者、影丸・戸浦六宏によって指揮されていた。織田信長・露口茂は一揆の討伐に手を焼いていた。重太郎に付け狙われていた主膳は偶然、信長の家臣である明智光秀と自分がウリ二つであることを知り、彼を斬って成りすまそうとしたが、実は影武者と本物を間違えていたために、彼もまた光秀の影武者となる。

 影丸には影一族と呼ばれる仲間がいた。飢餓に苦しむ農民たちにリンチされ川に沈められた母の遺体恋しさのあまり体を魚と同化させてしまった「岩魚」、自在に首を胴体に引っ込める特技のある「鬼吉・小松方正」、体から強烈な電気を発生させる「しびれ」、穴熊と心を通わせる「くされ」。

 蛍火は、重太郎の恋人、あけみ・松本典子を殺しその罪を影丸に着せた。重太郎は影丸の後を追った。影一族との対決により全滅した明智十忍衆、しかし蛍火の捨て身の作戦により影一族もまた、鬼吉と影丸を除いて殺された。

 ついに影丸を追い詰めた重太郎は、あけみが実は影丸の妹であり、自分が影丸を誘い出す囮として主膳に利用されていた事に気がつく。影丸は傷ついた重太郎を逃がし、主膳に捕えられた。牛割きの刑に処せられる直前、かけつけた信長の家来、森蘭丸に影丸はテレパシーで伝えた。「我々は遠くから来た、そして遠くまで行くのだ」。

 主膳はとうとう本物の光秀を暗殺し彼と入れ替わり、織田信長を本能寺で暗殺する。しかしその主膳も羽柴秀吉に追われて逃げる途中、百姓たちに惨殺された。影丸亡き後、彼等を指揮していたのは鬼吉であった。重太郎の行方も鬼吉の消息もその後、ぷっつりと消えてしまった。

 本作品は静止画(漫画の原画)をキャメラワークとサウンドエフェクトと吹き替えだけで映画化している。

 大島渚監督のところの若衆(当時)の声質ってばりばりのナレーター声の人が多い。しかもドキュメンタリー専門。佐藤慶も渡辺文雄も小松方正も、みんな顔が出したらほぼ全員、畳の上では死ねないようなキャラクターばかりなのに、声だけだと社会派だしカッコイイ。

 ナレーションは小沢昭一で、例の落語の調子で喋るもんだから、いつ「明日の心だー」って言わないかとヒヤヒヤしてしまいました(うそ、うそ)。

 新幹線に爆弾を仕掛ける山本圭はここでも知能犯の佐藤慶(主膳)に踊らされる思い込みの激しい性格の役どころで登場。結局、無駄骨に終る失意の若者、いつものパターン。

1999年07月12日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16