透明人間現わる |
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■公開:1949年 |
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「人間の姿を消す」というテーマについて、高名な化学者・月形龍之介の弟子、瀬木・夏川大二郎と黒川・小柴幹治は、月形の一人娘・喜多川千鶴の花婿候補となるために競って研究を進めていた。 すべての光を吸収する塗料の開発を目指す黒川に対し、瀬木は何でも透明にする薬品の開発を進めていた。 たまたま瀬木の研究と月形の開発した薬と同一だったため、月形は顔なじみのブローカー、河辺・ 羅門光三郎にその件を打ち明けてしまう。しかし、透明になった人間を元に戻す薬が未開発であることと、服作用として精神状態が凶悪になった挙句に死に至るという結果が出ていたために、月形は発表を控えていたのだった。 透明人間になれると分かった瞬間、世の男性諸氏が考え付くことは泥棒かノゾキだと推察するのだが、この川辺という男も、表の顔は親切な実業家だがその正体は宝石泥棒だったため、さっそく、月形の発明を悪用することを思いつく。 資産家が宝石商に持ち込んだ有名なダイヤモンドのネックレスを強奪しようと企んだ川辺は、まず月形を誘拐、次に黒川を監禁して博士の実験台になれと騙して彼を透明人間化し、元に戻りたければ宝石をかっぱらって来いと命令するのだった。 最初は顔面包帯という姿で店に現われたが、おびえた主人が警察に通報したので、黒川はあわてて逃げ出した。逃げる途中で酔っ払いを締め殺し、衣服を取り替えた黒川だったが、包帯が無いため顔だけ透明という間抜けな状態を巡査に発見されてしまう。 「透明人間あらわる!」という新聞の見出しが世間を騒がせていた頃、黒川の妹は歌劇団の花形スター・水の江瀧子として活躍しており、偶然、資産家と同じホテルに宿泊していた。 最初の強奪に失敗した黒川は、すっぽんぽんなら完全に透明になれると気付き、再び宝石商を襲うがまたもや失敗。体は透明でもその実力はガリ勉タイプの非体育系であるから、屈強な番頭にむんずと腕をつかまえられて突き飛ばされてしまったのだった。 今度こそはと、ネックレスの所有者が泊まっているホテルに現われた黒川は、武器を手にして資産家の秘書と格闘して重傷を負わせる。しかし、当の資産家婦人はネックレスを持って水の江の部屋へ逃げ込んでしまう。 見た目が透明であるだけで、壁を通り抜けたりできるわけではない黒川はあきらめざるを得なかった。三たび宝石強奪に失敗した黒川の性格は徐々に狂暴化しつつあった。 月形の研究室で瀬木と再会した黒川は事件の真相を激白。元に戻る薬は無いと知っていた瀬木は気の毒で黒川にそれを打ち明けられなかった。そこへ何も知らずに部屋に入って来たお嬢さんがイキナリ瀬木にプロポーズし始めてしまう。気まずいムードに焦った瀬木はなんとか黒川を引き留めようとしたが後の祭、恋にも研究レースにも破れた黒川は完全に自暴自棄になってしまうのだった。 度重なる透明人間の恐怖に警察も手をこまねいているわけではなく、月形の研究ノートや川辺の身辺調査を重ねるうちに、川辺の別荘が怪しいと目星をつける。警察に踏み込まれた川辺は、手下・上田吉二郎らとともにバックレようとするが、騙されたと分かって憤慨した黒川によって射殺された。 薬の服作用も相まって錯乱した黒川は妹の説得にも耳を貸さず拳銃を乱射した後、絶望して湖に身を投げてしまうのだった。 透明人間の映画というのは難しい。どこまで透明にするか。体は透明なら飲み食いした食物は透けて見えるのではないか?消化したら見えなくなるのか?それともウ◯コになって出るところまで見えているのだろうか?などなど、数え上げればキリがない(別に数えなくもいいんだけど)。 それはともかく、本作品の見所は猫や人間が透明になったシーンの特撮だ。ピアノの鍵盤の上を歩く猫、花瓶をひっくり返した後は足跡がチョコチョコと床に残る。砂の上の足跡、腰掛けたソファが丸く沈む、等の仕掛けの面白さはシンプルでタネが分かっていても楽しい。 が、人が絡むとそうはいかない。どうしてもお笑い風になる。見えない相手と格闘したり会話したりするわけだから、どうしたってパントマイムになるのだ。こりゃ、あーた、かなり間抜けな様だよね。 カメラ目線で「う、苦しい」とか自分でジタバタせにゃならんのだから演るほうは大変だ。本作品ではそこのあたりを仕掛けでフォロー。「襟首を掴まれる」というところでは、被害者の背広の襟にテグスかなんかを仕込んできゅーっとしぼる、と、あら不思議、本当に「見えない手に掴まれている」ように見えるのだ。 それにしても気の毒な透明人間クンであるなあ。お嬢さんたら、父親とその弟子が行方不明になっている最中に、愛の告白なんかしてる場合じゃないでしょう。せめて、「私、黒川さんのことが好きだったの」という展開にしてあげたかったなあ。なんか「どうせアノ人(黒木)は無事なわけないから、将来性がトントンなら瀬木さんにしちゃおうかな」なんて感じだもんなあ。 元はといえばお嬢さんが二人から同時に受けたプロポーズの回答を保留したからいけないんだしぃ、月形パパも「うちの娘はモノじゃないんだ!」くらいの事を言って若い二人を諭して欲しいよな。ウヤムヤにして競争心をあおるからイカンのよ。だから博士に気に入られようとした黒川クンが焦って人体実験しちゃったんだしぃ。 そう言えば、電送人間も、ガス人間も、液体人間も、変身した人間(男)はみーんな「恋愛問題」で破滅していたような気がする。恋の力は変身よりも強しという事か、教訓的だなあ。 (1999年07月26日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16