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三百六十五夜


■公開:1962年
■制作:東映
■監督:渡辺邦男
■助監:
■脚本:
■原作:小島政二郎
■撮影:
■音楽:
■美術:
■特撮:
■主演:美空ひばり
■寸評:


 東映が制作したひばり映画を見ていていつも疑問に思うのだが、どうして美空ひばりは高倉健と結婚しなかったんだろう?

 小牧商会の社長・柳永二郎の一人娘・美空ひばりが、融資先の建設会社社長・神田隆の息子、小六・高倉健と結婚したさに上京してきた。ひばりは商才は長けていたが男まさりで、辟易となった健さんが東京へ逃げ出してしまったからである。

 健さんは資産家の未亡人・山田五十鈴の家にボディーガートを兼ねて下宿している。そこの娘、照子・朝丘雪路は清楚で純情、健さんは一目で彼女の事が好きになる。

 小牧商会の東京支社をあずかる支店長の津川・平幹二郎は社長の椅子欲しさにひばりに積極的にモーションをかける。平は社長に内密で賭博場や怪しいマネキン商会所を経営していた。山田五十鈴の財産を狙った平は世間知らずの山田を騙して家屋と朝丘の両方を手に入れようと企む。

 山田五十鈴がかつてやくざな男とつきあっていたときに、傷害事件を起こして刑務所に服役していたという秘密を握った平はこれをネタに朝丘を脅迫し、彼女をモノにしようとするが、ひばりに目撃されて断念する。朝丘の実父・田崎潤は浮浪者のような生活をしていた。田崎は資金繰りに困った健さんの実家のために山田が用意した小切手を盗み出したが、平が経営する賭博場で全額巻上げられてしまう。

 困った山田が、親切そうに近づいて来た平に借金をしたので、彼女の資産はすべて抵当に取られてしまう。平はマネキン紹介所に来た朝丘の着替え姿を盗み撮りする。平にその写真をバラまくと言って脅された朝丘は監禁されていた地下室から田崎に助けられて逃げ出したがチンピラたちに捕まりそうになる。そこへ偶然通りかかった高名な画家・鶴田浩二は、とっさに刑事の振りをして朝丘を救う。

 朝丘の行方を必死に探していた健さんは、平から「朝丘は処女ではない」と聞かされ、彼女との結婚を諦めようとする。しかし人生経験豊富な鶴田浩二から「そんなことはどうでもいい」という豪快なアドヴァイスを受けて心機一転、朝丘に正式に結婚を申し込んだ。

 ひばりにも嫌われ、不法なサイドビジネスが露見しそうになった平は、なおも朝丘をヤッたというウソを吹聴しまくるが、当日の顛末をひばりに暴露されてヤケを起こし、朝丘を再び監禁する。偶然助けた朝丘が自分の娘だと知った田崎は改心して平と刺し違えて死ぬ。

 ひばりは健さんに借金の返済を延長してやり、健さんは朝丘と晴れて結婚することができた。一人残されたひばりは、健さんを追っかけていた頃を懐かしむのみであった。

 借金のカタに自分と結婚しろ!と言わんばかり、というかはっきりと明言している美空ひばりは、男まさりを通り超した「オッサンくさい」ヤな女。ところが、健さんの煮え切らない心が別の女性をチョイスしたのを知ると、あからさまでなく二人を助けてやったりして、結果的に善玉。

 健さんが必死にメロドラマの主人公を演じるわけだが、どうだろうね、分別も男くささもありすぎるんだよ、この人は。てなわけで、結果は火を見るよりも明かに全くの似合わねーの図。

 チンピラどもに刑事と間違われる鶴田浩二、そのまんま刑事さんだったら違和感なかったのに、イキナリ画家の役どころってのは無理がありすぎ。頭の中に風穴が空いているような朝丘雪路とアトリエで二人きりになった鶴田浩二が何もヤらないなんて、信じられないでしょ?客の期待を裏切っちゃ駄目っすよ(そうだろうか?)。

 と、かようなミスキャストの連発の中で、下品で、意地汚なくて、スケベで、非道極悪、だけどハンサムという、色敵を得意とする平幹二郎はフルスロットルで大活躍。生意気なひばりにヘイコラする姿もヤらしくてヨシ。

 唐突に「ツイスト、ツイスト、ツイスト!」を熱唱する美空ひばりにはちょっと引いてしまいますが。

1999年09月13日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16