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金田一耕助の冒険


■公開:1979年
■制作:角川春樹事務所
■監督:大林宣彦
■助監:
■脚本:斉藤耕一
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:古谷一行
■寸評:


 虚構のキャラクターであるはずの金田一耕助・古谷一行と等々力警部・田中邦衛が現実社会に現われ、横溝正史原作の短編集の中で真犯人を捕えられなかった「瞳の中の女」事件を解決すべく、パロディの荒波に揉まれながら活躍する。

 ローラースケート(否インラインスケート)とリムジンを「足」に使う美術品窃盗団のリーダー、マリア・熊谷美由紀は、ふだんはアイスホッケーの「ジェイソン仮面」を被っているが、それをはずしてもあまり違和感の無い「はなれ目」の美女。その他のメンバーはみんなシンナーとかやってそうな高卒の無職とおぼしき若者たちで、そのまとめ役っぽいのがトシ坊こと、江木俊夫

 彼女たちの雇い主である古美術商の明智・東千代之介は時代錯誤の美オヤジで、その愛妻・吉田日出子はデカパイ、ケツデカ(いずれも特殊メイク)の謎の女。

 怪しすぎる登場人物たちが、展開するシュールな世界。でも石井輝男監督と違って、フリークじゃないのがこの監督ならでは?(比較するなってば、、)

 窃盗団は高名な美術評論家・仲谷昇の家から彫刻「不二子像」の頭部を盗み出す。マリアは金田一に二十年前に制作された映画を見せ、劇中の金田一・三船敏郎と等々力警部・三橋達也が解決出来なかった事件を解いてみせろと言う。

 窃盗団の逮捕に燃える等々力警部は、リムジンと見れば容赦無く検問するのだが、やっと捕まえた豪華なリムジンの中では吸血鬼・岸田森が花嫁の首筋に噛みついてお食事中だったり、頼みの部下は「太陽にほえろ」や「大都会」にかぶれた馬鹿ばっかで、さっぱり成果が上がらずイライラしどおし。

 金田一は吉田日出子が慰問していた老人ホームにいた彫刻家の老人・山本麟一から、仲谷と山本ともう一人、三人の若き彫刻家の卵がかつて師事していた巨匠の妻・不二子と山本が恋仲になってしまい、仲谷がそれを巨匠に告げ口したため、将来を悲観した妻は自殺、悲嘆にくれた巨匠も妻そっくりの彫刻「不二子像」を作って夜な夜なその像の唇に接吻し続けついには死んでしまったという話を聞かされる。

 巨匠の財産を引き継いだ仲谷は、ある晩、死んだ巨匠の妻の幽霊を見て半狂乱になり、地下室の壁に激突して心臓マヒを起こして死んでしまう。不二子像の首は、「狼は生きろ、ブスは死ね」が口癖のサラ金業者・夏八木勲の手を経て、行方不明になってしまう。

 金田一は「宇宙からのメッセージ」に出演していた志穂美悦子(本人)に励まされたりしながら推理を続けるが、その間に、東千代之介、その愛人、東の手から不二子像を奪った部下・草野大悟、それに山本麟一、、と、いつものように容疑者やら関係者がバカスカ死にまくる。

 マリアの協力を得て、金田一がやっと突き止めた事実は、吉田日出子こそ死んだはずの不二子であり、不二子像の唇にヒソ毒を染み込ませて巨匠を病死に見せかけたのが仲谷昇で、吉田は巨匠の財産をひそかに狙っていて、かつて自分に惚れていた山本を協力させ仲谷を殺し、不二子像の「首」のニセモノをたくさん作らせて捜査を撹乱していた、ということ。

 山本が入居していた老人ホームの管理者・伊豆肇こそが巨匠の3番目の弟子で、吉田の本当の恋人だったのだ。当然ながら、その他の人々を殺したのも吉田であった。

 事件は解決した。グラビアの撮影に赴いた金田一耕助は撮影スタッフ・木村大作らから「登場人物がいいかげん」だの「結局、被害者出しまくり」など散々にイヤミを言われる。そして金田一は高らかに宣言するのだ、「西洋人は明日の幸せのために人を殺すが、日本人は過去を精算するために人を殺す。そんな犯人を思い遣ることができる探偵はボクしかいない。」と。

 本作品は金田一耕助モノに対する疑問(と言うか、期待?)「死体の山を築き、結局、何も解決しない探偵」という評価を徹底的にパロディ化する。「もう3人も死にましたかあ、あと5人くらいは死にそうですね(笑)」なんて物騒な金田一の台詞には爆笑。

 さて、書き切れないくらいのパロディは角川春樹自身が本人として登場するところでクライマックス。横溝正史(本人)も登場し、映画化に関する報酬が少ないのにヘソを曲げて札束をポイッと捨てる名演技を見せる。芝居が大仰すぎて観てるほうが赤面しちゃったり、レベルにばらつきの激しい本作品のギャグの中では、台詞が棒読みなところと、本当の本物という点も加わって出色。

 スタッフがうろちょろする楽屋オチ的なネタはあまり好きじゃないけど、照明スタッフとして三脚から落下するという田舎芝居を熱演した「日本映画最強の撮影監督」こと、木村大作先生には心から笑わさせていただきました。

 じゃ、ツマンなかったギャグは?

 東千代之介をラブホテルの鏡張りの部屋に座らせたり、首を持たせて「夢じゃ、夢じゃ」と錦之介のマネをさせるところは、他のパロディを演ってる人たちがみんなニュートラルな感じで「遊んで」いるのに比べて、やたらと真面目で一生懸命なもんだから、なんだか千代之介さんの人柄の良さにつけ込んでいるような感じがしてイマイチ。「フォー、ビューティフル、ヒューマンライフ!」と叫ぶに至ってはちょっといたたまれないくらいでしたわ。

 パロディは「遊び」。まじめな人を馬鹿にしちゃ駄目なのさ。

1999年08月03日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16