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リングリングリング


■公開:1993年
■制作:ビジョンクエスト
■監督:工藤栄一
■助監:
■脚本:つかこうへい
■原作:つかこうへい
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:長与千種
■寸評:貞子は出て来ません。


 プロレス大好きな亭主持ちの女、千種・長与千種は、事故で下半身不髄になった亭主、パチンコばかりするグータラな舅・室田日出男、毎日愚痴ばかりいう姑とともに福岡の鉄工所の近くで暮らしていた。

 全日本女子プロレス(以下、全女)の興業がやって来た日、室田に犯されそうになった千種は、友達の巡査・阿部寛と、全女のトレーナー・渡瀬恒彦に助けて貰うが、千種と阿部の逃亡を助けた渡瀬は警官をノシてしまい一人で罪を背負って自首する。

 千種のセンスに非凡なものを感じた渡瀬は、千種に上京をすすめる。家も亭主も捨てた千種は、無理やりくっついてきた阿部と一緒に全女へ入門、獄中の渡瀬からの指導にしたがって猛練習を続け、メキメキ頭角をあらわす。

 子供の頃、貧乏な千種に快くサインをしてくれた現役チャンピオンのデビル奈緒美・島田陽子は渡瀬と恋人同士。女子プロレスが見世物扱いされている現状をなんとか打破したかった渡瀬は、千種をセメント系レスラーの第一任者とすべく、熱心に指導の手紙を送り続けるのだが、実力派を自認している島田には渡瀬の真意が計りかねていた。

 島田はワールド女子プロレスという興業団体に所属していたが、そこのオーナーは、女子プロレス選手を商売女としか扱わない。新チャンピオン候補として若手を紹介された島田は、タイトルマッチでわざと負けるように命令される。

 同席していた悪役レスラー・アジャコング井上京子の二人から、実力を否定された島田は立ち向かうが、ストリートファイトでは全く歯が立たず、殴る蹴るの暴行を受けまくってダウン、プライドをずたずたにされてしまうのだった。

 渡瀬の出所を待ちわびる千種は阿部との間に一女をもうけていたが、娘が病弱なためなかなか試合に集中できなかった。島田を倒すのは千種しかいないと決めていた渡瀬は阿部に娘を連れて九州へ帰るように説得した。渡瀬は実力派の千種と正々堂々勝負をさせ、島田を奇麗に引退させてやりたかったのだ。

 温泉場の宴会に呼ばれた島田陽子はそこで地元のやくざ・麿赤児から売春婦まがいの行為を強制され、怒りを爆発させる。酔客に額をビール瓶で強打された島田陽子は激しい運動を諦めるよう医者から指示された。

 渡瀬の心は島田に傾いており、娘も危篤状態になったのでチャンピオンになる夢を捨て、金欲しさから、若手チャンピオン候補との八百長試合を受諾する決心をした千種。だが、かつて試合の疲れが原因で子供を風呂場で水死させてしまったママさんレスラーから、憧れのチャンピオンをコケにするなと説教された千種は、再び、猛特訓をスタート、八百長を仕掛けてきたレスラーを粉砕する。

 病院を抜け出してタイトルマッチのリングに上がった島田陽子。千種は全力で対戦しフォールを奪い、チャンピオンベルトを手にするのだった。

 オン歳40の島田陽子が、引退したとは言え、不世出の天才女子プロレスラーの長与千種とプロレスをする!いやあ騙されましたねえ、信じるなよってか?ほとんど吹き替えでしょ?(ラスカチョの下田美馬さんかな?)もちろんアップは本人ですけどね。

 「体がデカいだけでニブい」というのは渡瀬恒彦の島田陽子に対する評価。これってどうとでも取れる台詞ですねえ。役どころの話なのか、それとも本人のことなのか。

 見れば見るほど本物の長与千種は実に男らしい、女にしておくのがもったいないですよ、スカウトしたいだろうなあ「ニュー・マリリン」。顔の造作も、カリスマ性も申し分なく、独立してガンバっている孤高の姿もカッコ良い。私はひそかに女子プロレス界の小林旭と呼んでおります。

 男らしい女の主役に対して、現職警官でありながら、夜はオカマバーでアルバイトをする女装が趣味の阿部寛が、そんな千種に純情を捧げまくるという、オカマとオナベ的なギミックが面白いが、あんなデカいオカマがいたら正直コワイぞ。

 女子プロレスをまっとうに扱った日本映画と言うのはほとんど存在しなかったのではないか。大体、日本の映画ってスポーツものがショボいと思わん?「ビューティーペア・真っ赤な青春」ってのもあったが、、、あとはポルノ映画くらい?だから本作品は非常に希有な傑作と思う、スポーツ映画として。

 本作品の後、長与千種は現役カムバックを果たし、今ではかつての仲間、ライオネス飛鳥とともに女子プロレス界のメーンエベンターとなっている。そんな現代のカリスマの一人になった長与千種のなつかし作品。

1999年08月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16