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8(エイト)マン すべての寂しい夜のために


■公開:1999
■制作:アクト、リムアーツ
■監督:堀内靖博
■助監:
■脚本:宮崎満教 鈴木淳子
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:宍戸開
■寸評:そして、すべてが寂しくなった、、、


 サブタイトルからしてこの映画は期待できなかった。

 麻薬でのし上がった、表向きは実業家の山藤・中丸忠雄を逮捕すべく、秘密の取り引き現場を急襲したのはいいが、若手の刑事、横田を目の前で殉職させてしまったベテラン刑事・高橋悦史が、改造人間の人体実験を実の息子で練習して大失敗した博士・宍戸錠に、横田の改造人間化を本人の事前承諾を得ず断行し、過去の記憶を消して美型に再生したのはいいが、こともあろうにコメディアンの東八郎と同姓同名いうトボケた名前をつけてしまい、探偵をやらせて、危険な目にさんざん会わせて自分は左うちわ、、、というのが本作品の骨子である(そうだろうか、、)。

 さらに高橋悦史は、ビッコの謎の男・藤田敏八の紹介を得て、潜入捜査を命じた刑事・嶋大輔まであっさり見殺しにするという(結果的にだが)、とんでもない奴なのだ(あくまでも結果的に)。

 深夜の波止場、中丸忠雄が高橋悦史を撃ち殺そうとするが、そこへ8マンが駆けつけ、かつての自分である横田を射殺した殺し屋・ミッキー・カーチスを倒す。都会派のくせに汚い手口も全然平気な中丸忠雄は拳銃をわざと捨てて堂々と自首しようとする。どうせ裁判では無罪になるのが分かっているからなのだった。そこへ現われた宍戸の息子のサイボーグ坊やが超能力で中丸忠雄に拳銃を握らせ、高橋がこれを射殺、正当防衛が成立し事件は解決したのだった。

 と、思いきや、映画のクライマックスはまだなのだった。そりゃそうだ、オヤジ二人の対決を、そばで女といちゃいちゃしながらボヘーっと見ていただけのヒーローなんて失格さ!

 8マン・宍戸開(宍戸錠の実子)は、宍戸錠の息子・大伴修(ミッキー・カーチスの実子、ええいっ、ややこしいわあ!)のサイボーグと、改造人間としてのレーゾンデートルを賭けて対決することになる。宍戸の息子はグレて殺人鬼になってしまっていたのだ。

 真っ昼間、白い十字架が並ぶ原っぱで二人の地味なキャラクターがくんずほぐれつし、最後は猛烈な炎(とてもわかりやすいビデオ合成)に包まれ、宍戸の息子のほうが人間らしい心を取り戻して死んでいく。

 桑田次郎が描いた8頭身の超カッチョイイ(はずの)8マンはほとんど添えもの状態で、この映画のクライマックスは、公開当時59歳の麻薬王である中丸忠雄と、公開当時57歳でソフト帽がやたらと渋い刑事の高橋悦史との一騎討ちになってしまっているのだ。

 アクションしないのが残念な宍戸錠も加え、岡本喜八監督の東宝ギャング映画からまんま切り抜いてきたエキセントリックな殺し屋のミッキー・カーチス(公開当時54歳)も加わってしまい、主役の座は、昔とった杵柄で気持ちよさそうに暴れまくる平均年齢55歳超の元アクション系映画俳優どもに食われっぱなしという情けなさ。

 さらに、横田の恋人というのがいて、これがまた「死んだ恋人が忘れられないの」とかなんとかしおらしい台詞を吐くわりには、一応別人の宍戸開に積極的にモーションをかけるという、わけのわからない女。女の第六感で8マンに昔の恋人、横田の面影を感じとっている、ということなんだろうが、どうも信用できん。

 おまけに、宍戸錠が作ったできそこないの改造人間は超能力まがいのパワーを持っているが、その姿形は「シザー・ハンズ」のジョニー・デップをほぼパクっているという、本来主役であるはずのサイボーグたちはいずれも中途半端で軟弱な連中ばかり。

 その8マンの造形というのが頭はデカいわ、顔は老けた「ガンバロン」だわ、8マンの人工頭脳に時折よみがえる改造前の記憶は時々ノイズが入るビデオ映像風(せめてブロックノイズにしてほしいよな、デジタルっぽく)だわ、で、かつてパクリ呼ばわりされた「ロボコップ」の逆輸入という、、、、いいかげんにしろよ、おまえら!

 てなわけで、この映画では「キイハンター」以来、徹底した火薬嫌いを貫いてきた中丸忠雄が、ほぼ20年ぶりに火を吹く拳銃を手にするというサービス精神を発揮し、キザで嫌味な色敵というかつての十八番(オハコ)で大暴れ。そして忘れてはならないのは、ジャン・レノみたいな黒メガネで、フットワークの良いドンパチをしてくれちゃうミッキー・カーチス。しかも、この二人が超オシャレ!

 60年代の東宝ギャング映画で暴れていた旧東宝系の無国籍オヤジ二人組に乗っ取られた気の毒な特撮ヒーロー、しかも父兄参観だし、ね。

1999年09月06日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16