「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


野球狂の詩


■公開:1977年
■制作:日活
■監督:加藤彰
■助監:
■脚本:大工原正泰、熊谷禄朗
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:木之内みどり
■寸評:


 あなたはビデオ屋で作品を選ぶとき、何を基準にするだろうか?筆者はこんなホームページを運営する前から劇場やらレンタルビデオ屋やらで、新しい映画との発見を求め続けていたのであるが、最近、その基準の一つに「小池朝雄が出ているかどうか」というのが無意識の内に入っていることに気がついた。

 小池朝雄が出てくればそれだけで映画が奥深いものになる、そういう人なのだ。

 仮想プロ野球チーム、東京メッツは国分寺球場をフランチャイズとするヘボチーム。このチームのエースは御歳53歳の岩田鉄五郎、鉄っつあん・小池朝雄である。サウスポーのくせにヒジが全く前に出ない、見事な背負い投げ、ははーん、こいつ右利きだな、とモロバレであるが気にしちゃダメだぞ。

 で、こんなチームにもドラフトの季節は巡ってくるのであって、こともあろうにスカウトマンの尻間・谷啓が見つけてきたのは全く無名の「水原勇気」という選手。無名なはずだよ、だって女の子・木之内みどりなんだもん。

 てなわけで、当時のルールブックは現代で言うところのセクハラ、であるから女性のプロ野球選手なんてのはまるっきりダメ。コミッショナー・高木均はメッツの除名すら辞さないという強硬姿勢。これを聞いたメッツの代表・藤岡重慶は金切り声を上げるが水原の投球に惚れ込んだ岩田は耳を貸さない。

 当の水原はプロ入りの意思なんぞまるでナシ。将来の夢は動物学者になること、というくらいの動物好きの彼女は6畳間に小鳥や兎を所狭しと飼っているのである。いやあ、フィルムに匂が映るのならさぞや強烈な悪臭でしょうなあ。水原、よく寝られたもんだなそんな部屋に。

 しかし岩田の執念が実り、水原はメッツ入りを決意する。スリムな水原の引き立て役である親友・千うららに見送られ東京にあるメッツの合宿所へ向かう水原。そこには軍曹というあだ名の武藤・鶴田忍がいた。彼もまた水原(の入浴姿にも?)に惚れ込んでフォークボールを覚えさせようとする。

 プロ野球協約に挑戦するため、岩田は南海ホークスとのオープン戦で打撃練習中の野村・野村克也を挑発して、水原の相手をさせる。水原は見事な三振を奪い、コミッショナーもついに水原の選手登録を認めたのだった。

 水島新司の漫画が原作。原作を読んでいると「あ、このシーンは見たことあるぞ」という事になるのだが、知らない人が見たら、なんとまあリアリティの無い映画であろうか、まるで漫画だな、と思うことだろう。そのとおり、本作品は実に「漫画っぽい雰囲気」を醸し出すことに成功している。

 それにしても原作のキャラクターに似た人をよくもこれだけ集めたもんだよねえ。大阪アパッチの玄馬・丹古母鬼馬二はどっちがモデルかわかんないくらいだし。武藤役なんてちょっと気の利いた奴なら竜雷太とかを持ってきそうなのに、「スペクトルマン」で「アルジャーノンに花束を」を下敷きにしたエピソードの時、知恵遅れの青年を演った鶴田忍だもんなあ。見た目最優先の見事なキャスティングだと感心しちゃいます。

 見た目、ということでは藤岡重慶と高木均ね。とっつあん(あしたのジョー)とトトロ(となりのトトロ)の化け物コンビ。元々、怪獣みたいな風貌だけどこの二人が並んでいると人でも喰いそうだ。

 ハゲ上がった額に無精髭の小池朝雄は一見、老けたフランケンシュタインのモンスター風なので、少々怖いが、注目すべきは原作のキャラクターどおり、アメンボみたいな脚がまぶしい木之内みどりである。可愛いんだなあ、これが。木内みどりが木之内みどりの慣れの果てだと信じていた私(ちなみに宮川一朗太の成長したのが別所哲也だとも思ってました)ですけど、その後、竹中直人のカミさんになったと聞いた時はさらにビックリ。

 人間、一寸先は闇ですなあ、、。あ、本題が逸れた。

 野球映画であるにもかかわらず出演者がみな、完璧に早朝野球レベル以下ってのがイイ。中途半端にできるよりもいっそ潔い。野球漫画なんてほとんどSFみたいなもんだから、水原のドリームボール・実者版が呆れるほどの「漫画っぽさ」だってそれはそれで原作とおりなんだからイイんである。

 もう絶対にウソ!というくらいの大げさで大らかな出演者のナリキリぶり(だけ)をおおいに楽しもう。

1999年06月01日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16