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白昼の死角


■公開:1979年
■制作:角川映画、東映
■監督:村川透
■助監:
■脚本:神波史男
■原作:
■撮影:
■音楽:宇崎竜童
■美術:
■主演:岸田森(筆者認定)
■寸評:岸田森、炎上。


 「蘇る金狼」で千葉ちゃんが歌ってた、あのメロディーはこの作品。 

 太平洋戦争敗戦直後の東京で、東大出身で神童と呼ばれた男・岸田森が焼身自殺を遂げる。彼が同じく東大出身の仲間、夏木(当時)勲竜崎勝中尾彬らと起こした金融会社が商法違反で摘発されて間もなくの出来事だった。

 夏木は岸田の愛人兼秘書だった事務員・丘みつ子とともに金融ブローカーとなり、竜崎や中尾を使って手形のパクリ詐欺を実行する。大手の金融会社社長・内田朝雄から大金を巻上げようとして失敗し殺されかかったところへ、偶然居合わせたヤミ市を仕切る愚連隊のリーダー・千葉真一と知りあった夏木は、企業相手の詐欺の計画を千葉にもちかけた。

 資金繰りに困った中小企業の社長・長門勇の手形をパクり、大金を手に入れた夏木だったが、やくざに目をつけられた竜崎が襲われる。馴染みの芸者・島田陽子の家に竜崎をかくまい、再びカモを探す夏木の前に検察庁の検事・天知茂が立ちはだかる。

 南米の某国公使秘書・エドワード・J・オルモスと組んだ夏木は中尾を公使館職員として潜入させ、スペイン語に堪能でない大手企業の重役・成田三樹夫からまんまと金を奪ったが今度は事務所に殺し屋・内田良平柴田恭平がやってくる。同じやくざ稼業ということで千葉真一のとりなしで事なきを得た夏木であったが、妻の丘さとみは亭主の裏稼業に疑問を持ちはじめていた。

 同じく詐欺にあった実直な部長・佐藤慶は社長・角川春樹へ詫びるために割腹自殺をする。ついに犠牲者を出した事で天知は部下の室田日出男に命じ、夏木逮捕に躍起になるが証拠は何一つ出てこないのだった。夏木と結婚していた丘みつ子は夫の正体に気付き、切迫流産した挙句に鉄道自殺してしまう。

 博打でスッたオルモスが中尾を脅迫し、夏木に内緒で中堅企業の社員・藤巻潤の手形をパクろうとしたが、足がつきオルモスは逮捕される。世話になった神父に諭されたオルモスが事件の顛末をすべて自供してしまったため、中尾まで逮捕されれば夏木が困ると判断した島田陽子が心中に見せかけて中尾を殺し自分も死ぬ。

 夏木のために罪をかぶって自首していた竜崎もヒロポン中毒が完治せず獄死する。かつての仲間は全員死んでしまい、夏木は自分の悪事のために犠牲になった人々の亡霊に怯えるようになる。

 あと一歩のところで逮捕を免れるはずだった夏木は証文の偽造を天知に見破られとうとう収監されるが、千葉の尽力で保釈される。夏木の才能を高く評価していた内田朝雄の誘いを断わった夏木は、千葉が用意した替え玉を使って焼身自殺を装い、ただ一人外国へ逃亡するのだった。

 知的男性が主役になった貴重な企業犯罪映画、というところでしょうか。しかし主役が地味すぎましたね。それと千葉真一、あなたは目立ちすぎです。

 冒頭、いきなり詰め襟の学生服で夏木、竜崎、中尾が登場したときは腰抜かしましたが、岸田森の大学生姿に比べれば、なんてことないな、と思いました。やはりマオカラーの大人は信用できないのです。特に、いくつになっても学生服着ちゃうような奴らは。

 佐藤慶の会社の社長役には角川春樹、顧問弁護士役には、本作品の法律関係のアドバイザーであり、新聞記者をビニ傘でドツイた現職判事補(当時)・鬼頭史郎が登場します。この3人が同じ座敷で向かい合ってる図のなんといかがわしいことか。もちろん、今となっては大変貴重なシロモノであることは間違いないですけれども。

 中堅企業のオフィスを国税庁の査察と偽って占拠し、留守番をしていた瓶底眼鏡の社員・西田敏行(特別出演)を軟禁して、オーディションで選抜したニセ社員を配置し、別会社のオフィスに仕立てて長門勇を騙すシーンね、あれ、まるっきし「ザ・ゴリラ7」のノリですな。千葉真一が陣頭指揮していて夏木勲(当時は夏八木勲)もいるんですもの、ちょっとデ・ジャ・ヴーしてしまいましたね。

 良くも悪くもこの映画に大作の風格を添えているのは夏木に占拠されたオフィスの本当の社長・丹波哲郎(特別出演)です。狼狽する被害者に「なーにを言ってるんだか、さっぱり分からん!」と血も涙もないお言葉の後、心身喪失状態になった長門勇の背中に「お客さんのお帰りだ!」とおいうちをかけるのです。 状況をまったく把握しない突然の登場にもかかわらず、丹波哲郎がちょこっとでも顔を出しただけで観客はなんとなく「俺はビッグな映画を観た」という満足感を得られるのです。

 大笑いしたのが、夏木を苦しめる悪夢に登場する犠牲者たち、のイメージです。なにせ死者の方々がどういうわけか全員「鈴木その子状態(または「田園に死す」の高野浩幸)」で登場するのです。竜崎勝、佐藤慶、島田陽子、丘みつ子、は許しましょう。しかし、岸田森の白塗りと野球帽は完璧に意図不明です。こんな深刻なシーンに薄笑いを浮かべて野球のユニフォームを着て登場する岸田森、絶対に笑えます。これならうなされるのもむべなるかな、という意味では正解だと思いますがね。

 大組織に組み入れられれば、安定が得られるのにそれを拒否して一匹狼のまま何処ともなく去る、カッコイイ夏木勲。それを見送る千葉真一、ああやっぱりコレ「ザ・ゴリラ7」の延長線上だわ、と思うのは私だけでしょうか。

1999年04月25日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2003-05-16