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竹取物語


■公開:1987年
■制作:フジテレビ、東宝
■監督:市川崑
■助監:
■脚本:市川崑、菊島隆三、石上三登志
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:沢口靖子
■寸評:かぐや姫はエイリアンだった、という解釈はわりと正しい。


 客観的に納得できる話でもビジュアルにすると笑えてしまうと言ういい見本である。

 故事伝説や昔話の多くはとてもSF的なものが多い。その中でも「竹取物語(かぐや姫)」はもっともスペ・オペライクな昔話と言えよう。

 貧乏な竹取りの翁・三船敏郎と女房・若尾文子は高齢出産(推定)でやっとこささずかった女の子を病気で失ってしまう。夫婦は失意のどんぞこにあった。

 ある日、竹林の近くに巨大な火の玉が落下。大切な商売道具の竹が燃えては一大事と、三船が竹林へ駆けつけると、娘の墓の側に純金製の卵が落ちていた。え?かぐや姫って光る竹から生まれたんじゃないの?というツッコミもあろう、だけど、気にしない。怪しい光を放つその卵から生まれた赤ん坊は、見る見るうちに5歳の少女に成長した。

 少女は瞳が青かったため悪童たちに苛められるが、彼女は不思議な水晶パワーに守られているのだった。少女が入っていた純金の卵のおかげで、貧乏な夫婦はたちまち長者に。成長した少女は死んだ娘の名前を取って、カヤ・沢口靖子と名付けられスクスクと大きくなった。

 絶世の美女と噂になった沢口靖子の元へ貴族・春風亭小朝竹田高利らが求婚に訪れる。イマイチ気乗りのしなかった沢口は外出中に知り合った美男子貴族・中井貴一に一目惚れし、相思相愛の仲となる。沢口は盲目だが五感が鋭く、放馬に蹴られそうになった沢口の危機に杖を槍のように投げて救うというまるで座頭市のようの少女・小高恵美と友達になり、人間に一番大切なのは真心と勇気だと教えられる。

 沢口は、結婚の条件として小朝、竹田、中井、の三人に見たこともないような外国の秘宝を持ってくるよう、無理難題を言いつける。小朝は贋作を持って現われ、竹田は異国の商人にパッチもんをつかまされた。ただ一人、大海原へ漕ぎ出し遭難した中井だけが手ぶらで帰ってくる。

 中井の体当りプロポーズに感動した沢口だったが、満月の夜、とうとう月からのお迎えがやって来る。帝は軍勢を派遣して阻止しようとするが、中井は「世の中には人間の思い通りにならない不思議な力がある」と武将・加藤武を説得。沢口は蓮の花型の巨大なUFOに乗って去って行くのであった。

 本作品は、すでに「スターウォーズ」や「E.T.」というハリウッドSF映画の洗礼を受けてしまった人々にとっては、確実にトホホな映画であると思われる。

 確かに、この映画を「スピルバーグ(ジョージルーカス含む?)もびっくり!」な特撮映画だと言われたらへそが茶を沸かしてしまうだろうし、沢口靖子が演じるの「かぐや姫」のぶっとい眉毛によるお多福フェイスにも違和感を覚えるだろうし、ただの欲ぼけ爺いの三船にがっかりしてしまうだろうし、なんで市川崑がこんなもん撮ってんだよおお、、と日本映画のオールドタイマーズは声を大にして叫びたいだろうし、、。

 しかし、せっかく産まれた映画なんだから、良いところを探して育んであげようではないか。そうしないとグレちゃうからねえ。

 本作品くらい日本昔話を忠実にビジュアル化しようと大の大人が真剣に取り組んだ映画ってのは他に無いんじゃないの?と思う。「夢」を現代っ子(当時の)に解りやすく説明しようとして、ちょっと流行モンのUFOとか使ってみた「だけ」で、そこがちょっと、馬鹿じゃねえの?となってしまったとしてもだよ、他がちゃんと「昔話」してんだから立派よ、立派。

 この映画の見所はなんと言っても豪華な衣装。衣装の使い回しが当たり前の昨今、これだけ豪華でキレイな和服は一見の価値ありですよ。沢口靖子、若尾文子、それに帝の乳母・岸田今日子の十二単もすごく奇麗。

 特撮ロマン映画、なんてメディアの甘言に乗った奴が馬鹿なのさ、そんな事を期待しちゃあ駄目だぞ。これはね、とてもゴージャスな日本昔話なのよ。アダムスキー型の空飛ぶ円盤がひっくり返ったら蓮の花だった、なんて、なんて夢があるのでしょう、って感動したモン勝ち!っちゅうやつだね。

 映画に技術論は不要、って思えば情緒が見えてくる。実は結構ラストは感動できる。保証する、嘘じゃないってば。

1999年06月25日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2003-05-16