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七人の野獣 血の宣言


■公開:1967年
■制作:日活
■監督:江崎実生
■助監:
■脚本:江崎実生
■原作:江崎実生
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:丹波哲郎
■寸評:丹波入水。


 組長を殺されてフリーになり今ではしがないバナナの叩き売り・青木義朗と友達の日系フランス人のペテン師・岡田真澄を留置所から救ったのは、容疑者射殺で免職された元刑事・丹波哲郎

 暴力団の麻薬取り引き現場に警察を装って乱入し金を強奪しようとした丹波たち。ところがそこへ彼等の素性をばらして金を横取りしようとしたテツ・郷英治が登場。とりあえず暴力団から逃げるという目的のみ一致した丹波と郷が、呉越同舟で同じ車に乗って逃亡するのだが、途中で金の奪い合いを始めてしまい、まんまと敵に追い付かれ、命からがら逃げ出す始末。

 さらに留置所を脱獄した、ブルーフィルムの売人(アテレコも兼任)・小池朝雄も、この馬鹿チームに参加。彼がもち込んだのは、自分がいた組の組長、大黒・富田仲次郎が計画している競馬場の売り上げ金強奪計画。小池は富田に「人に言えないような恥ずかしい事」をさせられた復讐をしたいので、みんなで金の横取りをしないか、と言う。

 小池の計画に乗ることにした丹波哲郎は、奪った現金をとりあえず警察に拾得物として届け出ると言う。そうすれば罪が減じられる上に「善行をしたこと」になるので正々堂々生きて行ける、というのである。理論的に正しいことが「やっていいこと」とは限らないのであるが、あまりものを考えない人間の集まりであるので、金額の大小にかかわらずとりあえずその話に一同は合意する。

 大金を目の前にぶらさげられた一行は一糸乱れぬコンビネーションでさっそく調査を開始。富田が計画を断念しそうだと知った丹波たちは、郷の兄貴でチンバの予想屋・高品格も仲間に引き入れて富田に襲撃を促す作戦を立てる。インチキ外人プロモータに化けた岡田真澄を富田に接近させ、多額の現金を巻上げた丹波たちであったが、所詮、意地汚ない連中だったので逃走途中に再び金の奪い合いをはじめてしまう。

 しかたなく富田仲次郎の娘・弓恵子を誘拐し身代金を要求することにした丹波であったが、清純そうに見えた弓は実はとんでもないアバズレで、小池と郷を誘惑し裏切りを唆す。

 取り引きは岬で行われることになった。丹波は弓のニセモノを、富田はニセ札を用意したため、お約束どおり銃撃戦が勃発。その最中、丹波が撃たれて海へ落ちてしまい行方不明に。困った青木たちは丹波抜きで富田から金を奪おうとするが、ボスがいないのでどうも話がまとまらない。と、そこへ戦隊ヒーローものにでも出てきそうな派手な装飾をほどこした車が登場、運転していたのは丹波であった。

 富田は、弓とイイ仲になっていた腹心の部下・深江章喜と地下室でSMプレイの真っ最中。弓は一見して分かるように富田の実娘ではなく彼のオモチャとして金で買われたのであった。小池が富田を裏切ったのも無理やりお相手(もちろん、富田がS役で小池がM役)をさせられていたから。

 富田に捕まった岡田真澄が真っ赤なパンツにブラジャーをつけさせられようとしたその瞬間、丹波の車が富田の屋敷に乱入し破壊活動を開始。無事、岡田を救出し金を奪った丹波たちは当初の計画通り警察に届け出て、善意の第三者として礼金を受け取るのだが、警察署の中であるにもかかわらず、ここでも内輪もめを始める懲りない奴らが殴り合いの最中、現金が消える。

 まんまと大金をせしめた弓恵子が海外逃亡。ところが金は、弓が空港ですれ違った謎の尼さん・山本陽子の手に。山本は「シスターの仮面をかぶった」名うてのスリだったのだ。飛んでいる飛行機内で「停めて!」と叫ぶ弓恵子、路線バスじゃないんだからそれはどう考えても無理なのだった。

 丹波も含めて総勢6人のバカな男たちは再び留置所へ。そこへ登場したのが謎の男・宍戸錠。もうレツを組むのはまっぴら、なはずの彼等は再び宍戸の口車にのってまたまた、大金獲得を夢見るのであった。

 いやあなんせねえ、テンポが早い、早い。昔の邦画はトロくて、なんて言う人間が見たら腰抜かすんじゃなかろうか、と。登場人物のキャラクターの多様さはモノガタリの面白さであるわけですが、この映画は「ストーリー、役者、役どころ」がぴったりと合った見本でしょう。

 丹波哲郎の人を喰ったような雰囲気に、金の亡者どもの姿に呆れるオトボケ風味を入れ、さらに、ボートから海に転落する(丹波本人が、ですぞ)という体当りアクションまでやらせるなんて、ああ、なんてありがたいことでしょう。スクリーンに手を合わせ感謝せずにはおれませんね。

 「人に言えないようなはずかしい事」をさせられていた小池朝雄。でもスクリーンでソレを実際にやってくれるのは深江章喜さんです(さん、くらい付けてあげなきゃ申し訳ない)。花柄パンツに花柄ブラで鞭で打たれながら四つんばいで歩き回るんですよ、アノ深江章喜が。ああ、もう、オヒネリをあげたいくらい、感謝の気持ちでいっぱいですね。

 台詞2行以下、登場シーン1分未満の宍戸錠と山本陽子が、出演者の2〜3番目くらいに来ちゃうところもマヌケで私は大好きです。それと、監禁中の弓恵子にモーションかける郷英治が裕次郎のマネっこをするのですが、これがまた見事な(芸としての)音痴というのもイイ味ですねえ。あと、丹波に振り回されるまじめな刑事・小高雄二も中途半端な新劇俳優みたいに小芝居をしないで、あくまで一生懸命なのがとてもカワイイ!。

 ほとほとさように、客が金をあげたく(払いたく)なるような映画と言うのは本作品のように、客のためなら何でもするぞ!という作り手サイドの熱と、それをちゃんと受け止める側との間に成立する幸福感を客に与える映画をさすのですね、ああ、ありがたや、ありがたや。

1999年05月16日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16