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三兄弟の決闘


■公開:1960年
■制作:大映
■監督:田中重雄
■助監:
■脚本:須崎勝弥
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:長谷川一夫
■寸評:大スタアの擬斗は(周りが)苦労する。


 御大に現代劇の擬斗なんかできるのかいな?と思ったらやっぱり・・・

 やくざの組長・志村喬の命令により服役していた総太郎・長谷川一夫が5年ぶりに出所する。組の実権を握っていたのは総太郎の弟分の兵頭・河野秋武。総太郎には弟が二人いる。次男はやくざに反発して新聞記者になった恵二郎・川口浩。末っ子は学生の連三郎・藤巻潤

 長谷川は服役中に自殺した恋人の妹・叶順子を訪ね川口と叶が恋愛関係にあることを知る。川口は志村がホテル乗っ取りに絡んで社長を暗殺した証拠をつかむため、替え玉として逮捕された組員を取材した。長谷川が組長への義理立てから取材を止めさせようとしたのに反発した川口は家を飛び出してしまう。

 長谷川を尊敬している藤巻潤には料亭の娘・弓恵子という恋人がいたがひょんなことから、弓の実父を殺害した犯人として逮捕されたのが長谷川であることが分かってしまい、藤巻も家を出る決心をする。

 志村は組員に証言により逮捕された。長谷川の恋人を強姦して自殺に追い込んだのは河野だった。組長の信任が厚い長谷川が預かっている組の実印目当てに、河野は藤巻と弓を誘拐する。キャバレーでの大乱闘の最中、警官隊を連れて来た川口は長谷川が替え玉犯人だったことを志村が自白したというニュースを弓に告げた。

 叶と川口、誤解の解けた藤巻と弓も結ばれ三兄弟は和解するのであった。

 ところで、川口浩と藤巻潤ってどっちが年長なんでしょう?ひょっとしたら藤巻潤のほうが上なのでは?という「ささいな」年齢差をぶっとばすほどの長男と次男以下の歳の差ですな。だって親子だと言っても全然違和感ないですよこのメンバーなら。

 珍しいんですよね、長谷川一夫が現代劇でしかもアクションするなんてのは。本作品はあきらかに日活アクションをぴりぴりと意識してると思うんです。、、ってことは長谷川一夫を石原裕次郎っぽくしようって狙いなんですが、それはちょっと冗談はよし子さん的な無理難題というものでしたね。

 だってこの時点で御大すでに52歳なんですもん。二十代でバリバリの裕次郎と対等に勝負できるわけがありません。しかし、しかしですよ、お歳の割りにはよく動けたよなあと感心しますよ、この作品の御大は。

 たとえば三下やくざ・藤山浩二あたりとの擬斗ね。足元がヨチヨチしちゃったり揃ってしまったり、振り回した腕に相手が勝手にブチあたるという状況なのはしようがないんですよ、あんましやったことないんだから。それにしちゃあ腰のキレも三十代くらいにしか見えませんし実に若々しい。最初から最後までスタントを使わないでよくやったと褒めますね、私は。

 やはり戦前からの大スタアですから、節制のたまものなんでしょうね。小さい頃から訓練されてきた人は歳喰ってから差がでますね、いや、ホント。

 河野を締め上げるしぐさがいかにも「優しく」なっちゃうところはご愛敬として見過ごしましょう、女形だったんだし。一生懸命もがく河野に対して御大の手つきが「肩揉み」くらいにしか見えないんですけどね。

 御大の踏ん張りに刺激されたのかアクションシーンで本領を発揮したのが藤巻潤でした。ボクシングの選手という設定ですから、とにかくブン殴りシーンのスピードが全然違います。御大相手だときっととても気疲れしたであろうカラミの連中も藤巻相手だと思う存分って感じでした。

 あと、御大の頬の傷跡ね。安藤昇の場合は「ソレで勝負した」んですが美しい二枚目であることを自らに義務づけた御大が、隠し続けた傷跡が現代劇の照明でちらちらと見えた時、不可抗力ではありますが、迫力満点なのでした。

1999年04月10日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2003-05-16