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吸血髑髏船


■公開:1968年
■制作:松竹
■監督:松野宏軌
■助監:
■脚本:下飯坂菊馬、小林久三
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:松岡きっこ
■寸評:


 金塊を積んでいた貨物船、竜王丸が海賊に襲撃される。新婚旅行をかねて乗船していた船医・西村晃は妻・松岡きっこの目前で海賊たちに射殺された。命乞いをした松岡もまた殺された。乗組員達は足を鎖でつながれ身動きできないようにされてから一人残らず射殺された。

 三年後、主犯の5人はそれぞれ山分けした金塊を元手に別々の人生を送っていた。一人はキャバレーの支配人・金子信雄、一人はギャンブルで身を持ち崩した男・内田朝雄、一人は不動産で成功した男・小池朝雄、もう一人は潜水夫・山本紀彦になっていた。一味のボスは海外へ逃亡したと言われていた。

 身寄りのなくなった松岡の双子の妹・松岡きっこ(二役)は教会に引き取られ優しい神父・岡田真澄と一緒に暮らしていた。松岡には地元の青年・入川保則という恋人もいた。ある日、松岡は伊豆沖に漂流していた竜王丸を発見する。入川と一緒に付近の海に潜った松岡は足を鎖でつながれたガイコツを発見。

 竜王丸の船内で姉の亡霊に出会って以来、姉の霊が憑りついてしまった松岡は教会を飛び出し、不気味なコウモリを操り姉と義理の兄の仇うちを開始。内田を惨殺した後、恐怖に駆られた小池を転落死させ、潜水中の山本を事故に見せかけて水死させる。

 入川によって教会に連れ戻された松岡を神父が襲う。神父の正体は醜い火傷の跡をマスクで隠していた海賊のボスだった。殺したはずの西村の女房が生きていては面倒な事になると思った神父と金子が竜王丸へ向かう。

 そこには、死んだはずの西村が松岡を復活させようと彼女の遺体に生き血を輸血しながらシブトく生き延びていた。すっかり気が狂ってしまっていた西村は船員の死体から強烈な酸性の劇薬を発明していた。動転した金子が劇薬に触れて溶解し無残な死に様をさらす。

 西村は神父を追跡途中に足をすべらせ巨大なリールに巻き込まれて死んだ。 逃げようとした神父を引き留めたのは松岡姉の死体。強力な酸によって溶けはじめた船内で必死に抵抗した神父であったが、姉妹の執念によって金子と同じく劇薬に触れてしまいみるみるうちに溶けてしまった。入川の助けを拒絶した松岡は船とともに沈んでいった。

 ホラー映画に出てくる女性キャラってどうしても添えものになりがちだと思いますが、本作品は松岡きっこという日本人離れしたキャラクターの情念の濃い芝居のおかげで珍しく女性主導型の作品になったと思います。

 最後に救出に来た入川をおもいっきり海へ突き飛ばした後、松岡きっこが万感の思いを込めて吐く「好きよ、好きだったのよ」という台詞の意味深長さは実に味わい深いものがあります。きっこさん、入川保則が「好きよ」なのは勿論なんですが、実は岡田真澄も「好きだった」っつうことですね。

 なんて甘美な幕切れでしょう!まるで西洋映画のようです。

 こんだけバタ臭い面子揃えてりゃ当たりまえじゃん、というような「パッと見」の印象というのも否めない事実ですが、これもひとえに松岡きっこの「目力(めぢから)」のおかげでしょう。

 宣材なんかに掲載されているオドロオドロしい特殊メイクの西村晃はさっぱり出てこないのでJAROに訴えてもいいんじゃないでしょうか?でも、さすがに期待は裏切りません。あの彫りの深い顔にノーズシャドウを軽〜く入れて下から照明あてただけで「新鮮な血が欲しい、肉が欲しい」(ゾンビかおまえは!)と呻きながら岡田真澄を追いかけ回した時は思いっきりコワかったっす。

 その岡田真澄も普段(当時、ですよ)がシスターボーイ然としているのに、今回は白玉団子みたないハゲのカツラに顔面大火傷のメイクがかなり不気味。口から大量吐血の上、すっぱだか(シャワーを浴びていて殺されるから)で死ぬタコ坊主頭の内田朝雄の死に顔には笑ってしまいましたが、岡田真澄のアップは怖い!

 やはりホラー映画には彫りの深い美男美女が必須ですね。怖がるほうも怖がらせるほうも。

1999年04月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16