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花園の迷宮


■公開:1988年
■制作:東映
■監督:伊藤敏也
■助監:
■脚本:松田寛夫
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:島田陽子
■寸評:内田裕也、女装する。


 満州事変の前後、横浜のホテルが舞台。田舎娘の姉と妹・工藤夕貴は借金のために下働きとしてホテルのマダム・島田陽子に雇われる。ある晩、マダムの亭主でホテルのオーナー・中尾彬が殺された。第一発見者である島田陽子は自分が疑われるのを恐れ、金庫の金をトイレに流して強盗に見せかける。
 中尾の訃報を聞いてカナダから帰国した中尾の姉・江波杏子は島田が浮気をしていたのに違いないと証言する。警官たちが島田を拷問すると、観念した島田は中尾に浮気の疑いをかけられて折檻されたのでスキを見て睡眠薬を飲ませたと言う。夫が眠ったのを確認してホテルの見回りに行き部屋へ戻ったらすでに中尾は死んでいたのだった。

 ホテルのボイラー係・内田裕也は、修理に来ていた職人・粟津號が金を奪って中尾を殺したのだと、島田の自白を裏付ける証言をする。粟津と格闘して重傷も負っていたし、金鵄勲章(きんしくんしょう)を授与されたこともある軍人上がり内田の証言はなんなく警察の信用を得て島田は釈放された。

 工藤の姉が客を取らされることになった。バージンだった姉は最初の客である戦争成金・菅貫太郎に迫られ必死に抵抗するが、強引に関係を結ばれてしまう。一時、情緒不安定になりかかった姉だったが、金のためと割り切って海軍将校・西田健の相手を必死につとめた。

 島田を追い出してホテルを乗っ取ろうとした江波が殺され、工藤の姉が投身自殺をした。警察は客に無理やり犯された姉が江波を恨んで殺したと判断する。姉の自殺が信じられない工藤は、姉から貰ったお守り袋に入っていた古い新聞記事を発見する。

 ホテルで働いていた娼婦・黒木瞳には海軍航空隊の下級将校・名高達郎という恋人がいた。姉が隠し持っていた新聞記事には昔、黒木が人を殺してカナダに逃亡したというニュースが載っていた。姉は殺人犯を雇っていた島田を脅迫して工藤の借金を棒引きにしようとしていたのだった。

 名高の本当の恋人は島田陽子だった。黒木は素性を隠してもらうかわりに、島田のカモフラージュ役を演じていたのだった。その黒木と名高の心中死体がホテルで発見される、

 島田はボイラー室にいればエアダクトを通じて全ての部屋の会話が盗み聞きできることに気がつく。犯人は島田に惚れた内田裕也だった。島田を苦しめていた中尾を殺し、その罪を粟津に着せて殺したあと自分で腹を刺して被害者を装ったのだ。ホテルを乗っ取ろうとした江波杏子を殺し、睡眠薬で眠らせておいた工藤の姉をホールの最上階からほうり投げたのも彼だった。

 名高を嫉妬のために射殺し黒木も殺して心中に見せかけた内田は念願かなって島田を抱く。口づけの最中、復讐に燃えた島田に舌を噛まれた内田は身動きできないまま灼熱のボイラーに押し付けられて死んだ。家名を汚したということで引き取られなかった名高の死体をホテルの暖炉に埋めた島田。時が流れ、廃虚になったホテルは、巨大な鉄玉によって跡形もなく取り壊されてしまった。

 あんな若いみそらで初めてのオトコが菅貫太郎で、そん次が西田健じゃあ、こりゃ死にたくもなりますわなあ、と同情していたら他殺でした。

 この映画の見所はやはり「江波杏子の素オシリにキッスする島田陽子」でしょうかね。「爪の間にGペン突き刺されて悶絶する島田陽子」と「バケツの水をバカスカかけられる島田陽子」あたりもソノ筋の方々には心を揺さぶられるモノがおありかと推察します。

 本作品のキーワードは、ずばり「オゲレツ」です。キレイな花を汚してみたいという、人間なら誰にでもあるような、ある種どす黒い感情(大げさな、、)。

 陵辱、恥辱、侮辱、汚辱、とかなんとかとにかくサディスティックな愉悦に浸っちゃったりなんかして、なんだか客をアブナイ気分に誘うっていうのが作り手の意図と思われますが、島田陽子と黒木瞳という確信犯的なアイスドールでは、ちと無理じゃん?という感じなのでした。

 もっと半馬鹿な女じゃないとイケマセンね、こういう映画に出すなら、しかも美人じゃないと絶対にダメ。頭に風穴開いていそうだからって間違っても市原悦子なんか出しやがったら、観ているほうが怒ります(出すわけないですけど)。

 こうなったらやはり実生活でもアブナイ裕也さんの出番です、さすが裕也はスゴイ。何が凄いって、島田髷のカツラに振袖を着て走る!工藤の姉に扮装して江波を殺して逃げる!のシーンです。口を真一文字に結んで目がイッちゃってる裕也、ロケンロールしてますねえ。ただ、ほんの一瞬、その姿が「吉本新喜劇」の桑原和男に見えたとき、私は大笑いしてしまいました。

 豪華なセットに比べて主要なキャラクターの芝居が貧弱なのが難点(っつうか、致命的っつうか、、)ですが、ババア撮らせりゃ日本一の木村大作先生によるキャメラが大変に美しいので多少の欠点は帳消しとしましょう。

1999年05月02日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16