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ハワイの夜


■公開:1953年
■制作:新生プロ、新東宝
■監督:マキノ雅弘、松林宗恵
■助監:
■脚本:松浦健郎
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:鶴田浩二
■寸評:鶴田浩二のラブロマンス作品。


 1940年、日米開戦前、ハワイにスポーツ親善大使として訪れた水泳選手、加納・鶴田浩二は、試合の合間に同僚の牧野・三橋達也と一緒にハワイ観光を満喫する。途中、スコールに遭遇した二人を車で宿舎に送ってくれたのは日系人のジーン・岸恵子であった。

 ハワイ移民の一世に加納と同郷の人がいて、二人は歓迎会に招待される。加納はそこでジーンに再会し、恋に落ちる。親善試合も終り、日米関係がきな臭くなってきた頃、加納はジーンと別れ帰国した。

 やがて日米開戦。ジーンの兄、ジョージ・水島道太郎は従軍し、加納も南方戦線に送られた。ハワイの日系人たち、江川宇礼雄小杉勇らは二つの祖国の対立に心を痛めた。そして日本が敗戦し、ジョージは片足が不自由になったが無事に帰還した。ジョージはアメリカ人として日本に勝利したことを悩むジーンをハワイの戦没者墓地に連れて行き、日米双方とも多くの犠牲を払ったことを教え、彼女の自責の念を軽くしてあげようとするのだった。

 加納にはもう会えないと覚悟していたジーンの前に瀕死の姿で加納がやって来る。彼はサイパンの戦線で重病を患いハワイの捕虜収容所へ送られてきたのだ。ジョージは二人の最後の夜を静かに送らせようとする。鶴田はMPに連れて行かれる途中で息を引き取った。ジーンは一人、修道院へ入り、異国の地で死んだ加納を弔い続けるのであった。

 映画前半の臆面もないラブコメ部分はマキノ雅弘か?そいでもって後半の、特に白い十字架が圧巻の墓地のシーン、戦争によって引き裂かれる若い二人のメロドラマは松林監督か?結構、逆だったりして、なんてアレコレ考えて見てみるのも面白い。

 この映画は鶴田浩二が興したプロダクションが制作し主演しているのだから、まちがいなく彼のワンマン映画と見ていい。したがって、ナルシストな鶴田浩二の面目を躍如して余りあるシーンが目白押し。

 アップの大安売り。岸恵子がまだ我々とは違う惑星から来た人のようにキレイ(だけどすげー生意気そう)だった頃だし、鶴田浩二もまだ(「自」他ともに認める)甘い美男子顔ったから、キスシーンが延々と続いたり、チークダンスでいつまでも密着していておまけに歌まで披露、なんてあたりも許容範囲ではあるが、それにしても多すぎ、かつ、長すぎ。

 特に思い入れが強かったと思われるのはMPに連れて行かれる途中で鶴田が死ぬシーン。走り去るジープを、顔は楚々とした日本美人でも心はアメリカ娘の岸恵子が猛ダッシュで追いかける。突然、停車したジープから降りた若いMPが道端の花を摘み、追ってきた岸を見て気の毒そうに首を横に降る。で、次のカットでは幸福そうに笑みを浮かべた鶴田の死体の側にその花が手向けられているのである。

 くわーっ、カッコ良すぎっしょ?なんか演ってて気恥ずかしくならんのかな、と見ているこっちが照れ臭くなるほど。

 ハワイロケがふんだんでとにかくゴージャス。前半、鶴田浩二と三橋達也がボケとツッコミの珍道中を繰り広げる。三橋達也が器用でオシャレなのは知っていたけど、こんなに大らかで軽妙洒脱な鶴田浩二って見たことない。日本的な色男の鶴田、バタ臭い三橋、この二枚目コンビがモダーンなフラノかなんかの白いスラックスにブレザー姿でさっそうと歩く姿にハワイのムードが似合いまくり。

 「ハワイが似合う鶴田浩二」これだけでも一見の価値ありでは?。

1999年06月08日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16