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サーキットの狼


■公開:1977年
■制作:東映
■監督:山口和彦
■助監:
■脚本:中西隆三
■原作:池沢さとし
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:風吹真矢
■寸評:夏木陽介(特別出演)。


 モーターレース場で売り子のバイト、自動車整備工場では整備士のバイト、いわゆるフリーターの風吹・風吹真矢はゴーゴー喫茶を経営している姉・山内恵美子と二人暮し。姉の恋人は有名なカーレーサー・倉石功。金も実力もルックスもタッパも、全てにおいて完敗している風吹は嫉妬にかられておもわず倉石をブン殴ってしまうのだった。

 風吹が寝る間も惜しんでバイトをしているのはロータスヨーロッパという高級スポーツカーを買うため。やっとこさ作った頭金でロータスを手に入れた風吹は、月賦がたんまりと残ったその車で早速ドライブへ。風吹が偶然出会ったのは、整備工場のオーナー・夏木陽介に雇われたという女性ドライバー・横本メイ。彼女はハワイ出身で日本語は不自由だったが性悪だったため、風吹はひょんなことからモメたローリング族のリーダー・高品正広とチキンレースをやるハメになる。

 風吹の車は御自慢のロータス、高品の車は田舎のアンちゃんが田んぼを売って購入する類の馬鹿アメ車・ファイヤーバードトランザム。案の定、風吹は勝利しその後、街道レースで次々と勝ったため、彼には「ロータスの狼」というニックネームがつく。

 そんなこんなで調子こいていた風吹の前に立ちはだかったのは、収入の低そうな顔ばっかなのにどうやって手に入れたのか不思議でしょうがない高級車ポルシェに乗っているネオナチ風のケロヨン軍団、そのリーダー左近(あってるか?字)・佐藤仁哉であった。

 街道レーサーのプライドを賭けて戦った二人は、倒した相手の数だけボンネットに星形シールを貼るという、ラジオ体操におけるハンコ集めレベルの共通の趣味を持っている馬鹿同士だったので、何かお互いに通じるものを感じたのだろう、いつしかほんのりとした友情が芽生えるのだった。

 顔はコワイが金持ちの家庭に生まれた高品は、実は風吹の母親を轢き逃げした犯人だった。息子に輪をかけて凶悪な(顔の)父・今井健二が、交通機動隊の巡査・矢吹二郎を買収していたところを偶然見かけたの佐藤仁哉は風吹に、「フェアレディのマッポ(死語ですな)に気を付けろ」と意味深なアドバイスをする。キザなのは顔だけにして、もったいぶらんとハッキリ教えてやれよ左近!と思ったのは私だけ?

 姉の店を借金苦から救おうと決心した風吹はすでに廃車寸前までになっているオンボロのロータスを強引にディーラにひきとらせ頭金を取り返す。なんて質の悪い奴なんだろう。しかし漫画というのは恐ろしいもので、他人から見ればあたりまえでも、風吹的には断腸の思いであったこの決意を理解し、あまつさえ、この車馬鹿の借金を肩代りしてくれたのは誰あろう、倉石功であった。

 神様のような倉ちゃんはロータスを修理してくれた上に頭金まで払ってくれた。きっと姉ちゃん、体売ったんだろうなあ、というような汚れた大人の想像は、少年漫画の世界では御八度さ。神様の存在を信じて能天気に感謝する風吹を見習い給え、とりあえず。

 さて、尊敬する倉石さんから鈴鹿のレースに出場するよう勧められた風吹はせっせとバイトをし、ターボシステムを手に入れロータスのチューンナップに成功。居並ぶプロのレーサー、中島悟(本人)星野一義(本人)らにまじって堂々と鈴鹿モーターレースに参戦した。

 佐藤、高品、それに矢吹も参加するこの一戦。買収された金で車をチューンナップした矢吹のことを「人の金で車を手に入れたくせにでかい口きくな!」と罵倒する風吹。オメーだって倉石に金出してもらったんだろうが!という観客の憤りを屁とも感じないこの馬鹿野郎は、もうすっかりオーナー気分で月賦支払中の愛車に語りかけるのだった「さあ、勝利を目指してがんばろうぜ、俺のロータス!」

 デビット・ハッセルホフの「ナイトライダー」に出てきたコンピュータ車ならともかく、ただの車だぜ、相手は。まったく、コイツはどうしようもない馬鹿だな、、などと思っているうちにお色気はあるが性格は悪い(しつこい?)横本メイの声援を受け、レースはスタート。

 途中、風吹と矢吹を高品のチームが襲撃してきた。間に割って入った佐藤もまきこまれて大事故に。高品の車は崖下に転落し炎上。矢吹は高品を見逃した罪を詫びながら風吹に見取られて死んだ。瀕死状態の佐藤を見捨ててレースに復帰した風吹。

 そんな事故に巻き込まれてたのに優勝するわけないじゃんか、と思うのだがところがどっこい優勝してしまうのである、主人公は強いねえ。ただしゴールシーンは無い、そこだけ撮影する金も時間も無かったのだろう。ただ一人、風吹を出迎えたのは横本メイ。メイが佐藤仁哉と兄妹だったことを初めて知った風吹は、「俺にも脈が!」とちょっと喜んだが、彼女は風吹にライバル宣言をして去って行った。

 ブーム、それはいつもはかない。過ぎ去ってみればいったいあれは何だったのか、と思い出すだけで気恥ずかしいものだ。しかし70年代のスーパーカーブームも今となっては、それを知らない人々にとっては何か新しさを発見できるチャンスなのかも。だって出てた車なんか全部、クラッシクカーでしょ今じゃ。

 「ほら、これでクールになってね」とか彼女に言われながら思いっきりクールミントガムを噛む主人公。本作品のスポンサーがロッテなので仕方が無いのだが、風吹はエエカッコしいなので噛んでいたガムを平気で路上へペッペと吐き捨てるのである。これはイカンよ風吹クン。てなわけでテレビで放送されるときにはこのシーン思いっきりカットされることでしょうね。

 スーパーカーブームって何だったんだろう?池沢さとし(本人も台詞某読みでチョイ役出演)の漫画ってどんなんだったんだろう?と興味を持ったそこのアナタはぜひ、一度本作品をご覧いただきたい。思いっきりハマるか、ヘソが茶を沸かすか、二つに一つだろうから。

1999年05月09日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2003-05-16