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恋と夢と冒険・恋のメキシカンロック


■公開:1967年
■制作:松竹
■監督:桜井秀雄
■特撮監督:
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:橋幸夫
■備考:


 橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦、この三人を「御三家」と呼んだのはかなり昔のことだが、平成の時代までそこそこ活躍しているのは舟木一夫と西郷輝彦で、橋幸夫は実業家にでも転向したのだろうか?たまにイベントなどでは活躍しているようだが、歌は巧かったかもしれないが映画俳優としてはイマイチ、顔が地味すぎ。

 ボート会社のセールスマンをしている青年・橋幸夫はブルジョワの子女たちにモテモテ。彼を歌手として売り出そうと野心満々の女性プロデューサーや、有閑マダム・南風夕子にまで万遍なくモーションをかけられるが、本人はマイクロバスに寝泊りする気ままな湘南ボーイ。

 橋が偶然知り合った少女・由美かおるはグァム島の出身。彼女の父親はチャモロ族の村長・天草四郎なのだった。橋のことを熱烈に好きになった由美の願を叶えてやろうとした天草は、神父・藤村有弘に命じて誘拐同然に橋をグアムに連れてくる。

 驚いた橋はそこを逃げ出し、隣の島の未亡人と知り合いになるが、彼女の兄・亀石征一郎は由美に片思いをしている上に、次期村長の座を狙っていた。さらに由美の父親が捨てた難破船の財宝をも手に入れようとしていた亀石は、橋を簀巻にして断崖から投げ捨てた。

 からくも助かった橋は先の未亡人に助けられるが、うわごとで由美の名前を呼んでしまったために、怒った未亡人の口から亀石に居所を知られてしまう。橋を探しに来た女性プロデューサのお陰で帰国のめどがついた橋は、亀石と直接対決して改心させ、由美と仲直りした後に清く別れて日本に帰った。

 角刈りで一重まぶたの小男。こんな湘南ボーイいるのか?という疑問に、多くの観客はブチあたります。実際にいたとしても異論はありませんが(あたりまえですが)、湘南と言えば加山雄三さんを脊髄反射のように思い起こす人々にとってはどうにもこうにもやりきれない思いがします(私だけかもしれませんけどね)。

 現実の世界には加山雄三さんは一人しかいませんが、橋幸夫さんならゴロゴロいるような気がするので、そういう観点からするととてもリアリティがあると言えるかもしれません。が、その口から「恋のメキシカンロック」や「スイム、スイム、スイム」が玉のように転がる鼓舞しとともに流れて来た日にゃあ、観ているほうはただただ狼狽するのみでした。

 画面の橋幸夫はひたすら健康的で爽やかで歌が上手いです。これが最大の救いです。

 さらに観客のへそに茶を沸かしてしまったのが由美かおる。なんだかチンパンジーみたいな面相だなあと思っていたところへ、チャモロ族の出身というグーな設定。いえ、チャモロ族の皆さんを蔑視しているわけではありませんよ、決して。彼女の舌ったらずでへたくそな日本語を納得させる素晴しすぎる設定だったが大笑いなわけです。

 そして忘れてならないのは、南国でも不良だった、力石徹から悪代官まで(要するにアクの強い顔)なんでもこなす亀石征一郎の活躍です。出てきた瞬間からオッこいつあ悪そうだなという分かりやすさ、二枚目なのに意地汚ない役どころも全然平気という度量の広さ。しかも彼もチャモロ族なのです。小柄な橋幸夫と並ぶとガッチリしすぎで、殴り合いで負けるわけがないだろうという気がしますが、いいんです、映画だから。

 で、なんで米領のグアム島が舞台なのに「恋のメキシカンロック」なのかと言うと、元はスペイン領だからなんですね。じゃあ「恋のスパニッシュロック」ではないのか?または、現地の人はほとんどチャモロ族だから「恋のチャモロロック」というのはどうか?などと色々と想像をめぐらせるのも映画の楽しみ方のひとつでしょう(強引なオチ)。

 グアム島の観光映画だと思って観ていると、その目的は必要十分に果たされています。ロケが実に美しい。橋が劇中「海の色が全然違うね」と言いますが本当に、これほど奇麗なビーチの映像はなかなかお目にかかれないと思います。海が大好き!な人はここんところだけでも大満足するでしょう。

 グアム島でもヤクザのオトシマエは「簀巻」っていうところが凄いですが、叩き込まれる先がドブ川ではなく紺碧の海というところがちょっぴり幸せ。

1999年03月01日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16