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不良番長・骨までしゃぶれ


■公開:1972
■制作:東映
■監督:野田幸男
■特撮監督:
■助監:
■脚本:山本英明
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:梅宮辰夫
■備考:これにておしまい。


 新宿でカツアゲ、美人局などを生業としているバイカー集団「カポネ団」はまたもや地元暴力団、大東会・組長・渡辺文雄に睨まれ新宿を追い出される。腹の虫がおさまらないリーダー・梅宮辰夫は、アパッチ・安岡力也鈴木やすしらとともに大東会が密輸しようとした宝石を横取りする。

 経費を浮かすためにタイアップ先のホテルやら撮影協力施設やらを紹介しまくる「旅番組」状態になっていた本シリーズの死に場所に選ばれたのは九州の博多。

 ホットパンツ姿の謎の美女・太田美鈴がほとんど「ルパン三世」における峰不二子のように、味方になったり敵になったりしながら宝石を狙う。で、「ビバ!ばん!ちょお!」と叫ぶ「番長ガールズ」も同様に宝石を手に入れようとするのだが、コイツらときたらすぐオッパイ出したりパンツ見せたりするもんだから、山城新伍の持ち芸である「ハヒー、ハヒー」も絶好調。

 観光バスのガイド嬢・ひし美ゆり子は、沖仲師にしか見えない宝石デザイナー・藤竜也とアツアツ。早速、ひし美を口説きにかかった番長グループであったが、加藤清正の虎退治を手伝った武将の子孫を名乗る槍の名人・由利徹というアナクロおやじに叩きのめされる。

 娘を溺愛しているこの馬鹿おやじは、こともあろうにひし美の体に接触してしまった山城新伍に娘と結婚するように命令する。山城は喜んで新婚初夜の四十八手を伝書にしたがってヤろうとしたが、ひし美が逃げ出してアウト。馬刺しで頭に血が昇った番長グループが逃げ出した後に大東会が乗り込んでくる。

 ラドンも棲んでる阿蘇山の火口へたどり着いた番長一行。いきなり5色のツナギに着かえて気分はすっかり「ゴレンジャー」。爆弾投げまくり、ダミー人形落しまくりで、結局生き残ったのは梅宮と太田。ところが太田の正体が婦人警官だったのでさあ大変、大爆発したはずの山城新伍に見送られまたもや逃げ出す梅宮辰夫なのだった。

 梅宮辰夫は二枚目のヤサ男というスペックでありながら、芸者に化けた山城新伍とコントをくりひろげ、今回はやくざの目をくらますために絣の着物で「おてもやん」を歌って踊るのです。素晴しいではありませんか、ここまで捨て鉢に、いや、客のためにヤケクソになってくれる人は尊敬してイイですね(ほかにもいっぱいいるんですけど)。

 まだ痩せていた安岡力也も「アパッチ」というニックネームのとおり、最後の決戦にはネイティブアメリカンのスタイルで活躍します。かつて来日したアラン・ドロンにケツを追いかけ回されたという伝説を持つ「ジェニ・ジェニ」の鈴木ヤスシは珍妙な装置を発明し「ロボコン」スタイルで空を飛んだ(ようには全然見えないクレーン撮影)りなんかして、もう完璧にメチャクチャです。

 それにしても当時36歳の梅宮辰夫。これって今の私と同い歳なんですが、バイクにまたがる姿はなかなかカッコイイです。この頃になるとシリーズ当初のようなコチコチ運転ではなく、もちろん安岡力也のようなカッチョイイ蛇行運転とかはできませんが、それなりに「こなれたドライビングテクニック」になってます。

 このシリーズでは鼻歌にしか聞こえない梅宮辰夫が歌う「番長シャロック」という主題歌が有名ですが、本作品でもギンギンにロックンロールした男性歌手の主題歌を聞くことができます。「おーばあーんちょおー(おお、番長)、おおーばんちょおうううっ(語尾、やや高音で)」と絶叫するだけというとてもシンプルな歌詞なので、観終わったあと思わず口ずさんでしまいました(かなり恥ずかしいですけど)。

 このどたばたに真剣につきあう殺し屋・八名信夫とやくざの幹部・中田博久も忘れ難いものがあります。この二人は時には善玉っぽくなったりして立場はコロコロ変わりながらも、結局、このシリーズにほぼセミレギュラーとして出演し続けました。二人ともタッパあるし特に中田博久は元々二枚目なので凄みもちゃんと兼ね備えていましたから、この二人のトンチンカンなハードボイルドが映画の馬鹿度を最高に盛り上げてくれました。

 ギャグとパロディの連続に、垢抜けないコントの数々はとどまるところを知りません。伝説の喜劇映画・不良番長シリーズの有終の美はこのようにして飾られたのでした。

1999年03月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16