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漂流教室


■公開:1987年
■制作:日本テレビ
■監督:大林宣彦
■特撮監督:
■助監:
■脚本:橋本以蔵
■原作:楳図かずお
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:林奉文
■備考:トロイ・ドナヒュー奇跡の復活はゴキブリ風味。


 大林宣彦監督はノスタルジーが好きだ。話はたいしたことないのに客の琴線を刺激して結果的に「いい映画だったなあ」という余韻を残す。

 神戸のアメリカンスクールに通う少年・林奉文は帰国子女。ある朝、父・小林稔侍と一緒に食事をしていた彼はささいなことから母・三田佳子とけんかをしてしまう。

 林が学校へ到着すると、ちょうど美人教師・南果歩が外人教師・トロイ・ドナヒューの単車の後ろに乗ってやって来るところだった。かと思うと、今度は林とはライバル関係にあるらしい、ええとこのボンボン風の外人少年が林の彼女にひざまづいて「来週はぼくのビッグゲーム(コイツはサッカーが得意)に来てくれるね」などとほざきながら、イキナリ少女の靴をピカピカのスラックスの上で磨いてあげていた。

 こういうヘンな学校にはヘンな事が起こるものなのだ。さあ、客の心の準備は整ったぞ!

 南が結婚するらしいと知った生徒達は授業中にもかかわらず一斉にお祝いの歌と躍りで大騒ぎ。一人の女生徒が南に鉢植えの花をあげようとした瞬間、巨大な地響きが起こり、彼女の体はあれよあれとと思う間に回転を始め、そのまま空中浮遊をして窓の外へ消えて行った。

 さあ、いよいよヘンな事が始まったぞ!

 あっけにとられる生徒たちに今度は砂嵐が襲いかかる。学校の一階はみるみるうちに砂で埋ってしまった。生徒を屋上へ誘導しつつドナヒューと南が外へ出てみると、神戸の町はすっぽりと砂に埋もれていた。巨大地震のため世界が全滅したと思った生徒達はパニック状態になる。

 その頃、学校があったはずの場所に空いた巨大な穴を前にして、三田は呆然としていた。調査に来た学者・高橋悦史によれば学校は生徒もろとも時空のすき間に転落しタイムスリップしてしまったのだと言う。

 出た!SF映画の定番「タイムスリップ」!いよいよなんでもアリの世界が始まるぞ!

 まだ事情が理解できない生徒たちはとりあえず食い物と水を得るために給食室へ向かう。そこには外人コンプレックスの陰気なパン屋の青年・尾美としのりがいた。愛犬とはなればなれになったショックでアタマの回路が壊れてしまった彼は、大暴れした挙句に煮えたぎったスパゲティの鍋を顔にかぶってしまい、バケモノのようになって砂漠の彼方へ消えていく。

 やれやれと思っていると、今度は巨大なゴキブリ怪獣が学校へやって来る。音楽を聞いたゴキブリがおとなしくなるのを知った南は彼(彼女?)らの気を沈めるために必死でピアノを弾くのだった。

 学校から離れて冒険をすることになった林たちは、自分達の名前が刻まれた石碑を発見する。はるか未来の世界にタイムスリップした事実を知った林は、竜巻に巻き込まれてやっと学校へ戻るが、すでに1か月が経過していた。南はゴキブリ封じのピアノを弾き続けて力尽き、ドナヒューも行方不明(実は生徒の負担にならないように自分から姿を消した)、生徒の大部分はすでに死んでいた。

 なーんだドナヒュー、もう引っ込んじゃったのかあ、と急にツマンなくなったぞ!

 いよいよゴキブリ軍団と最終決戦を決意した林はゴキブリを校内に誘い込んでクシ刺しにしてやっつけることにする。囮役をかって出た金持ちの外人少年は、ちょっとした作戦ミスのためゴキブリと一緒にクシに刺されて死んでしまう。

 学校のタイムスリップにまきこまれた近所の子供と仲良くなったヘンテコな生物。元の時代に戻れる竜巻で子供が無事に生還すると、そのヘンテコな生物はみるみるうちに成長しゴキブリになった。元ヘンテコ生物のゴキブリは生徒達に危害を加えることなくゴキブリの群れへ戻って行った。

 砂の世界でゴキブリたちとも共存できるかもしれない、という自分達の未来に希望を見い出した少年達は、この世界で生きていく決意を固めるのであった。

 フリークスになってしまった尾美と林がとっくみあいをしていて、劣勢になった林が思わず母親に助けを求めると、異次元にいる三田が動物的カンで子供のピンチを察知し穴にバットを投げ入れます。強力な母親の愛情に助けられた林が天を仰ぐとそこには三田の大顔面(満面の笑顔)が!

 この大惨事の原因が息子の反抗期にキレた三田佳子のヒステリーだった、というオチだったら面白かったんですけどねえ。で、砂の惑星だと思ったのは息子がクスリでラリってただけだったとか、ね。

 さて、ここでトロイ・ドナヒューです。

 大林監督は40代以上の大人の頭に電波を送るのが大好きですが、こりゃ反則ギリギリですな。登場したドナヒューは、スクーターのヘルメットを脱いだら髪の毛が逆立ってるんですけど、ここで尻のポッケからクシ出して整髪したらどうしよう!と、軟派なアメリカ人青年・クーキーだった頃のドナヒューを覚えている(知っている)人はドキドキしてしまいます。

 てなわけで、実は婚約者がいた南果歩にドナヒューがラブラブだったってえのはどうも、この、納得いきません。プリプリのアメリカ娘ならいざ知らず、あんなトランジスタ・サイズの子娘のどこが!なわけですね、クーキー(但し、再放送)大好きの私としては。

 砂の惑星、昆虫の子供と人間の和解、ってあーた、これじゃあ「風の谷のナウシカ」じゃないっすか?便所のダンゴ虫(王虫)がゴキブリになっただけなのでは?おまけに音楽が久石譲ですしぃ。

 原作はたまに読む程度だったのですが、やはり紙の漫画から想像していた通りにはなかなか上手くいかないものですね、実写は。人間の想像力と勝負するわけですから、「全部目に見えるように」してしまうことでかえって「なーんだ、こんなモンか」とガッカリしてしまうのでしょうね。

 てなわけで原作さえ忘れてしまえばそれなりに奇想天外な映画になったんじゃないですかね?私としてはドナヒューが活躍してくれたらもっと良かったんですけど、残念だわ。

1999年03月12日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16