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卑弥呼


■公開:1974年
■制作:表現社
■監督:篠田正浩
■特撮監督:
■助監:
■脚本:富岡多恵子
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:岩下志麻
■備考:岩下志麻、鈴木その子になる?


 ヤマタイ国の王・加藤嘉は、巫女である卑弥呼・岩下志麻の神がかりを利用して政治を行っていた。彼は後継者として二人の武将・河原崎長一郎河原崎健三を指名していた。ところが卑弥呼は異教徒となった異母兄弟・草刈正雄を愛してしまう。

 宰相・三国連太郎は異教を信ぜよというお告げを伝えた卑弥呼を信じない国王を暗殺し、河原崎長一郎に国王になるよう唆す。河原崎長一郎は人々の目の前から卑弥呼の姿を隠した。恋に身を焦がす巫女にはカリスマ性が無いからだ。草刈は卑弥呼に仕えていた他の姫・横山リエと恋仲になる。

 ヤマタイ国を密かに狙っていた草刈は横山とともに河原崎の軍勢に立ち向かうが殺されてしまう。卑弥呼は草刈を想って再び異教への信仰を訴える。河原崎の信任をまったく得なくなった卑弥呼にもはや用は無いと判断した三国は彼女を異形の者たち・土方巽らに襲わせて殺した。

 少女の巫女を卑弥呼の代理として立てた三国は、長一郎と健三が殺しあうのを見て絶望し卑弥呼を探して野山を彷徨う。もはやヤマタイ国は卑弥呼という圧倒的な存在を失って滅びるのを待つばかりであった。

 いやあ、コワイっすねえ、本作品の岩下志麻。元々キツネっぽい顔ですが、前衛舞踏の人達と覇を競うように、かつ、「田園に死す」の高野浩之クンみたいなオシロイ塗りたくりなのでその顔だけで十分オツリが来る感じがします。

 河原崎兄弟は野山を駆ける古代人のハズなんですがいかんせんカッコばかりで、岩場をヨチヨチと歩くその姿は情けないやら、恥ずかしいやら。舞台然としたセットはなかなか雰囲気出てましたが、それにしちゃあ人間が生々しくてミスマッチ。草刈正雄の「古代人」は毛むくじゃらでワイルドで見るべきものがありましたが、やはり河原崎兄弟にはもっとほのぼの系の役どころがハマリますね。

 見物は土方巽とその一派による前衛舞踏です。土方巽と言えば「奇形人間」のカエル手のマッドサイエンティストとか、「怪談昇り龍」の変態殺人鬼という本人のキャリアからすれば「キワモノ」部分しか私は見たことがなかったので、ちゃんとした前衛舞踏(ってのもヘンですけど)で活躍している姿はとても新鮮でした。あ、本当に本職なんだあ!ということで。

 河原崎軍の武器は弓です。ここんところはかなり迫力ありました。なんせ本職に射らせてますから、ちょっと「蜘蛛巣城」っぽくてね。草刈正雄は最後は弁慶の立ち往生で果てます。

 ラスト、卑弥呼を探して鬱蒼と茂る木立を分け入る三国連太郎を空撮しているヘリコの影が写って、オヤ?っと思うと実はそこは二十世紀、つまり現代の古墳の上だったというシーンはかなりショッキング。新宿の雑踏で茶ぶ台囲んでメシを喰う(「田園に死す」参照)よりかはインパクト弱いですけど。

 確かに立入禁止の古墳ってなんか神秘的ですよね。でも実際、あんな髭もじゃのジジイがいたら確実にホームレスかなんかだと思いますけどね。

 卑弥呼を描くのに集中しすぎて、結局のところ手段と目的(あれば、の話ですが)がとっちらかったってのが本作品を観終えた感想です。あ、それから、草刈正雄の弓の射り方ですけど、あれは洋弓じゃないとダメですね、和弓はあんなんじゃあ満足に飛ばないぞ!とどうでもイイところにツッコミを入れたくなる、観るほうが集中力を保てない、そんな感じの作品です。

1999年03月01日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16