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続サラリーマン忠臣蔵


■公開:1961年
■制作:東宝
■監督:杉江敏男
■特撮監督:
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:森繁久彌
■備考:


 客が東宝のサラリーマン映画に求めるものは何か?それはハッピーエンドである。

 吉良社長・東野英治郎に赤穂産業を乗っ取られ、新会社大石産業を設立した大石専務・森繁久弥であったが、業績はなかなか上向かない。フランスのアマン社から特許を買い取った商品の売り込み先が確保できないのである。

 森繁の人望から赤穂産業の有能な社員が47人も移籍してくれた手前、社長である森繁としては給与の未払いだけはなんとしても回避したい。独立資金を援助して貰った若狭産業の桃井社長・三船敏郎に追加融資を頼み込もうとしたが、逆に叱られてしまい、森繁は八方塞がりに。

 その頃、事故死した赤穂産業の前社長・池部良の秘書・宝田明は森繁の部下・小林桂樹の妹・司葉子と結婚して北海道にいた。

 新会社設立の知らせを聞いた宝田は上京しようと準備を始める。そこへ池部の腹心であった重役・有島一郎の息子・三橋達也が偶然訪ねて来て、以前から目を付けていた司葉子に襲いかかった。宝田ははずみで三橋を猟銃で撃ってしまい、刑務所へ。司は一人で上京し、森繁の浮気相手であるクラブ「イッチー・リッキー」のマダム・草笛光子のところへ世話になる。

 森繁は天野化学の社長・左卜全に売り込みをしようとするが、同産業の重役・南道郎は東野の秘書・山茶花究と通じていてラチがあかない。森繁の窮状を救おうとした小林が妹の司葉子に南とつきあうように頼んだという事実を知った森繁は激怒した。

 自宅を売却し、妻・久慈あさみを実家に帰し、息子の力・夏木陽介を独立させた森繁はなんとか従業員の給料だけは確保した。イチかバチかで天野化学の社長に面会した森繁はやっと商談をまとめる。大石産業の業績は一気に好転し、株価は急上昇。

 有能な社員に去られた赤穂産業の株価は下落の一途。森繁は証券会社の社長・河津清三郎に頼んで名義を分散し、密かに赤穂株の買い占めを進める。12月14日の定期株主総会の会場へ乗り込んだ森繁と社員たちは、草笛の委任状を最後の武器にして過半数を勝ち取りとうとう東野英治郎を解任した。

 新生、赤穂産業の代表取締役には池部と懇意にしていた三船が就任し、森繁は元どおり専務として返り咲き、万事メデタシ、メデタシ。

 本作品は時代劇じゃないので、本懐を遂げたら全員切腹!にならないところが救われる。なんだかんだ言ってもオリジナルは結果的には優秀な人材を多数失うのであるからオメデタくもなんともないでしょ?

 仮名手本忠臣蔵の「お軽、勘平」のコンビが、翌年の本格的時代劇版の「忠臣蔵 花の巻/雪の巻」へスライドするのが笑える。逆でしょ?普通、お笑い(パロディー)のほうが後なんだけどね。そこいらへんは仕方ないのよね、現代劇中心の東宝だもん。

 仮名手本忠臣蔵のようにラブロマンスのパートもちゃんとある。夏木陽介は有島の娘・団令子とかけおち結婚。有島の画策で、大手銀行の上杉頭取の御曹司と団が見合いをすることになり、二人が別れ話を切り出す同伴喫茶のBGMが「別れの曲」。政略結婚を嫌って家出した団と夏木が将来を誓ったところで「結婚行進曲」に変わってムードを盛り上げるのがイイかんじ。こういうシンプルなお約束は時代を問わず好感がもてる。

 いつも汗をかいて頬肉をブルブルさせている小林桂樹も、その実直さが買われて森繁の元愛人の草笛光子をゲット。赤穂産業の屋上(たぶん日比谷の東宝本社、ツインタワービルの屋上)で全社員が祝杯を上げ手に手を取って踊るシーンの健康的なこと!

 やっぱり映画は単純なストーリーとハッピーエンドがなによりなのよね。

1999年01月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16