「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


最後の恐竜(極底探検船ポーラボーラ)


■公開:1977年
■制作:円谷プロダクション
■監督:アレックス・グラスホフ
■特撮監督:佐川和夫
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:リチャード・ブーン
■備考:


 世界的なハンターにして富豪の実業家・リチャード・ブーンは北極圏で石油を採掘中に発見した極底王国への冒険を計画する。

 そこは太古の地球環境がそのまま残っており巨大生物が濶歩しているらしい。メンバーはブーンと若手技師・スティーブン・キーツ、黒人の召使・ルーサー・ラックリー、日本人のノーベル賞博士・中村哲。それに女性写真家・ジョン・ヴァン・アーク

 彼等が乗り組むのはポーラ・ボーラ号というドリル型の探検船。極点に近い巨大プラントから出発したポーラ・ボーラが地底を掘り進んで到着したのは、日本の上高地そっくりなジャングルだった。湖のほとりでキャンプを張っていた一行の前に突然、ばかでかい恐竜が出現。

 ところがこの恐竜は目が悪くおまけに人間には興味がないらしくドスドスと通りすぎただけだった。やれやれと思っていると、湖畔で大きな足跡が発見される。それは最も狂暴な肉食恐竜のティラノザウルスのものだった。

 ブーンの狩猟好きの血がふつふつと煮えたぎる。根っから学者肌のキーツはあくまでも恐竜の観察を主張するがやはりスポンサーの意見は強い。ジャングルの中でティラノザウルスと遭遇したブーンは早速攻撃を開始する。怒ったティラノザウルスが刃向かって来たが、ラックリーの槍が腹に命中したためとりあえず難を逃れた一行がキャンプに戻ってみると、先回りしていたティラノザウルスが中村哲を踏み殺した後だった。

 復讐に燃えるブーン。ピカピカ光ったポーラボーラ号が珍しかったのか、ティラノザウルスは鼻先と足で器用に転がしてポーラボーラ号を餌の貯蔵場所に隠してしまう。ちょうどその近所で昼寝をしていた恐竜と大喧嘩を始めたティラノザウルス。壮絶な噛み合いの末、相手の恐竜は倒された。

 キャンプを捨てた一行の跡を原始人が追って来た。その中にひときわ好奇心旺盛な女原始人・関谷ますみがいた。関谷はアークが捨てたバッグを「物を入れて運ぶ道具」だと素早く理解して、一行が捨てた銃のスコープなどを広い集めるのだった。原始人のリーダーを石弓で倒したブーンを「強い人」と解釈した関谷は彼等と行動を共にするようになった。

 もう地上に帰れないのではないかという不安に襲われたキーツ。冒険に行きたいがために一度はブーンに体を許したアークだったが、やっぱり初老のブーンよりも若いキーツの方が良かったらしく、取り乱したキーツを慰めるフリしてちゃっかりラブラブに。浮気現場を見たブーンは捨て鉢になり一人で中村の仇を討つと言い出した。

 ティラノザウルスの留守中にポーラボーラ号を発見したキーツはアークと一緒になんとか湖まで船体を運ぶ。いよいよ地上に戻れると分かると、やはり富豪のブーンも捨て切れないと読んだアークはブーンを説得しに森へ入って行く。脳味噌が豆粒くらいしかないくせに執念深いティラノザウルスはブーンたちを執拗に付け狙う。

 ラックリーがティラノザウルス喰われてしまう。ブーンは石弓と投石機で立ち向かうがティラノザウルスには全然歯が立たない。アークの「あなたのイブになりたいわ」の一言にトキメいたブーンは、復讐を諦めてポーラボーラ号へ乗り込もうとするが、恋敵のキーツの顔を見たとたん気が変わってしまう。

 極底に残ると言い出したブーンをあっさりと見限ったアークがキーツと一緒にポーラボーラ号で脱出。フラれたブーンは仕方なく地元っ子である関谷と一緒に暮らすことに決めて森の奥へ消えて行くのであった。

 特ダネ欲しさにブーンの会社の重役を(おそらくは色仕掛けで)口説いて女嫌いのブーンに接近し、変装やらなんやらで自分の存在をアピールし、挙句には体を武器にして冒険旅行をゲットしたアーク嬢。これがまた、お色気以外に何の取り柄もない役立たずの上に、巨大な亀に驚いてズッコケたり、喰い残しをそこいらへんにポイポイと捨てて狂暴な原始人を呼び込んだりと、とんでもないトラブルメーカーとして大活躍。

 ホラー映画やSF映画に出てくるキャーキャー女の描き方に憤慨したシガニー・ウィーバーが「エイリアン」で強い(そしてオッカナイ)女性ヒーロー像を構築するはるか昔の映画ですからしようがないんですけど、見てて物凄くイライラするんですよね、こういうバカ女は。

 ニッポン産の怪獣映画を見慣れているものですから、着ぐるみ大根足のティラノザウルスには愛着アリです。目がロンパリ気味なのもカワイイですしね。「ジュラシックパーク」が出てくる前は「グワンジ」とか「地底探検」とかのダイナメーションや、本物のイグアナに無理やりツノ付けたのとかが恐竜キャラクターの定番だと思われますので、着ぐるみというのはやはり日本独特なんでしょうかね。

 人間臭い恐竜ってのも今となっては逆に新鮮です。都合4か月くらい極底にいたはずなのにブーンたちの髪の毛がちっとも伸びないんですけど、これも地底の神秘ってわけなんでしょうかね?そのせいか1週間くらいしか時間の経過を感じなられないが残念でしたね。

 四つ足の恐竜というのは、演るほうは大変でしょうが「人間が入ってます感」が少なくて、言い替えればリアルです。CGは確かに人間ができないような造形やアクションができますけど、人間も動物ですから「より動物らしい」動きということならば人間が入ってるほうがホンモノっぽいと言えるんじゃないでしょうかね。

 特に「意地汚なくて乱暴で狡猾な」ティラノザウルスあたりは、ただ怖いだけの「ジュラシックパーク」や「ハリウッド・ゴジラ」より本作品の着ぐるみのほうが私は好きです。映画に求めるものは人各々ですから、メカのデザインセンスとか、ジオラマの貧乏臭さも含めて、私としてはこういう「人間臭い」怪獣映画も捨て難いです。

1999年03月20日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16