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昆虫大戦争


■公開:1968年
■制作:松竹
■監督:二本松嘉瑞
■助監:
■脚本:高久進
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:園井啓介
■備考:脱税王・園井啓介
※この言葉にピンとくるあなたはとってもイイトシこいてます※


 フランツ・グルーベル(または、フランツ・グルーバー)はあんな端正な顔でいつも不良外人役を多く担当していましたが、モデルさんのようにカッコイイ、日本常駐外人俳優。本職は外タレ事務所のマネージャーみたいなことをしていた人だとか。

 阿南群島の上空を飛行していた水爆輸送中の米軍機が昆虫の大群に襲われ、乗組員がパラシュートで脱出する。機は墜落したが生き残った兵隊は麻薬中毒の黒人兵・チコ・ローランド以外、全員毒虫に刺されて死んでしまう。

 島で昆虫採集をしていた青年・川津祐介は白人女・キャッシー・ホーラン(声・北浜晴子)と情事の最中にこの事件を目撃し、ローランドの腕時計をかっぱらってそれを売ろうとしたのを米軍の調査団・ロルフ・ジュサー(声・納谷吾郎)フランツ・グルーベルと警察に咎められ、米兵殺害の容疑で逮捕されてしまう。

 川津の新妻・新藤恵美と、川津が密かに昆虫を送った東京の科学者・園井啓介が病院に収容されたローランドの証言から米兵たちが毒虫に襲われたのではないかと推理し真相を究明したいと申し出る。キャッシーに川津の無実を証明するように依頼した園井だったが、彼女は証言を拒んだ。

 川津を雇って虫を集めさせていたキャッシーはホロコーストの生き残りで、そこでの悲惨な体験から極度の人間不信になってしまい、挙句は全人類抹殺という途方もない野望を持っていたのだった。毒虫は彼女が養殖した生物兵器。これに目を付けた共産圏の某国が、レストランの経営者・市村俊幸、漁師・上田忠好を通じてキャッシーの研究を援助していたのだった。

 秘密を知った園井は病院を脱走したチコが女医・瞳麗子に発した「ジェノサイド!(民族大虐殺)」という言葉をヒントに自ら虫に刺されその意味を知った。毒虫はキャッシーによって「人間達が起す核戦争の巻添えを喰うくらいなら人間なんか絶滅させてやる!」という意思を持たされていたのだった。

 不時着した水爆を狙って某国が動き出したのを知った米軍は、毒虫のワクチンを作れる園井を拉致し水爆を遠隔操作で爆破させ毒虫もろとも研究設備を破壊する事にした。心あるパイロットがジューサーを拳銃で撃つが、爆破スイッチは瀕死のジュサーの執念で押されてしまう。爆破を予見して上空へ避難していた毒虫たちは島から立ち上るキノコ雲を見ると一斉に、園井が乗っていた飛行機に襲いかかった。

 飛行機は爆発し墜落した。毒虫から命がけで新藤を守って死んだ川津の子供を産むために島を脱出した新藤を除いて、事件の真相を知る人々はすべて死んでしまった。地球の運命や如何に?

 、、ってここで映画は終わりです。

 「吸血鬼ゴケミドロ」と同じく全く救いようのないラストシーンです。しかしねえ、水爆で虫をやっつけるって、そもそも馬鹿馬鹿しいと思いませんか?相手は空飛ぶんですよ、いくらでも逃げられるでしょうが!、、ったくSF映画に出てくる米軍ってロクな事しませんねえ。

 戦争恐怖症で麻薬中毒患者、そんなラリパッパ野郎に水爆まかせて日本の領空を飛ばすなよ!って言いたいです。日本人なんかどうでもイイっていう米軍の方針は、日本人がたくさん住んでいる島で水爆を爆破させてまで米国の利益を守ろうとする畜生な計画でピークに達します。ジャップの迷惑なんざヘのカッパって事ですね。

 「〜ゴケミドロ」同様、作り手の言いたい事は、戦争こそ人間の奢りの最たるもので、映画の中でしっかりと「天罰」を下そうというわけですが、一種の天災であるエイリアンの襲撃とかではなく、事件の真犯人がユダヤ人だったというオチが凄いです。

 きっと資金援助してんのもユダヤ人なんだろうなあ、とか想像しちゃうとコワイですけども。ドイツ人に虐殺された恨みを全人類に返すなんて八つ当たりもいいとこだと思うんですけども、日本は元同盟国だしなあ。

 虫が意思を持って、おまけに頭イイんですよ、たかが虫のくせに。米軍が調査のために死体を本国へ持ち返ると予想して、襲って殺した人間の死体に卵を産み付けておくんです。つまりトロイの木馬です。で、これ、みーんなキャッシーの教育のたまものなんですね。

 この「人間を殺せ!ワクチン」はどんな虫にも有効なのです。カミキリ虫やハチやアリンコに片っ端から注射すればあっと言う間に強力兵器のできあがり。マッドサイエンティスト(できれば平田昭彦さま)の愛人あたりが適役のキャッシー・ホーランが黒幕だったというのところがイマイチ説得力ないんですが、犯人の意外性という点はシンプルな出演者の割りにはインパクトがあったんじゃないですかね。

 虫が嫌いな人(私です)でも観てて平気です。人間を集団で襲うところはみーんな合成ですから。ただ、時々アップがあるのが辛いですけど。

1999年03月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16