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光る女


■公開:1987年
■制作:ディレクターズカンパニー
■監督:相米慎二
■助監:
■脚本:田中陽造
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:秋吉満ちる
■備考:武藤さんがまだふさふさだったころ、、 。


 プロレスラーの武藤敬司はかつて「セクシーターザン」というニックネームで呼ばれたアイドル系だった。今はどっちかっつーと・・・(以下自粛)。

 北海道の山奥出身の仙作・武藤敬司は幼馴染みの栗子・安田成美と結婚するために東京へ出てきた。経理学校に通っているはずの安田はキャバレーのホステスになっていた。

 ゴージャスなクラブの経営者・すまけいに雇われた武藤は、毎晩開催されるショーでプロレスをさせられる。すまの傍には歌うことができなくなったオペラ歌手・秋吉満ちるがいた。秋吉と安田がすまのおもちゃにされている事を知った武藤はすまと戦うが叩きのめされてしまう。

 武藤は女形としてショーに出演していた赤沼・出門英と知り合う。彼もまた北海道の出身で元は腕の良い漁師だった。すまの経営していた店舗に居候していた出門は病気がひどく、バスの中でゲロを吐く。乗客や運転手・レオナルド熊が出門を引きずり降ろしたのを見た武藤は憤慨し、とりあえず運転手をブン殴ってから赤沼の看病をしてやった。

 店舗を改装することになり追い出された赤沼が北海道へ帰るという晩、武藤と秋吉はプールで結ばれた。その日、新宿で路線バスが放火され多数の被害者を出す事件が起こる。現場に残されたラジカセからは秋吉が歌うオペラが流れていた。骨まで焼けた犯人が赤沼だと直感した武藤は、一緒に暮らしたいという安田を残して北海道へ帰る。しばらくして北海道の武藤のところへ安田から切羽詰まった電話が入る。あわてて武藤が東京へかけつけると安田は睡眠薬で自殺未遂を図った後だった。

 安田が死んだ。すまと対決した武藤は拳銃で応戦してきたすまの肩口にナタを叩き込んで勝った。武藤は秋吉と結婚して故郷の村へ帰って行った。

 フリークスと言えば怪力男、男女、デブ、あたりが定番ですね。本作品のキャバレーにも武藤、出門の他に本職のオペラ歌手、森公美子が見事な歌唱を披露します。当然ながら秋吉の歌は全部吹き替えなので、やはり本物の迫力は作り物には到底かなわない凄みがありますね。

 極真会館の八巻とプロレスラーの石川が出た「餓狼伝説」も凄かったですけど、本作品の武藤敬司(グレート・ムタ)も現役のレスラーですから格闘のシーンはさすがプロって感じでした。特に素人のすまと対決したときのやられっぷりは肋骨3本くらい折れるんじゃないかと思うほど派手に吹っ飛んでくれるのが嬉しいです。

 ほとんど髭もじゃの山男スタイルで登場する武藤ですが、後半、色敵のすま(異議を認めます)を倒すために髭をそって派手なスーツ姿で登場すると、元々「セクシーターザン」と呼ばれるくらいですんで、なかなか男前なのがこれまた嬉しいんです。美しくて、かつ、強い。ヒーローはこうでないといけませんね。

 新宿バス放火事件というのは、私にとってかなり身近な出来事だったのでたとえ映画であろうとも、犯人に対して一切センチメンタルな感情を持つことはできません。いくら出門英が「真夜中のカウボーイ」におけるダスティン・ホフマン的な役どころで良い味を出していたとしても、この件に関して虚構と現実が切り離せない私にとっては、あんなことする奴あ絶対に許せん!という心が強いのでせっかくの熱演ですが、後味はかなりヤでした。

 秋吉満ちるの現実離れした美しさはとても映画的なので、彼女が出てくるだけで画面が充実します。安田成美も日本的な美人ですが、キャバレーのセットに負けないくらいのいかがわしく、バタ臭い美しさの秋吉でないとあの金ピカなドレスは似合いませんね。現実離れという事なら森公美子も(違う意味で)負けていないのでド派手な格好はこちらも似合います。ところで森公美子ってデブ、ですけどなかなか美人だと思いませんか?ここんところが中島某と一緒にしちゃいけないポイントですね。

 最近のテレビ的な「小さい作り」の劇場映画と違って、ゴチャゴチャとしつつ計算された猥雑さに溢れた画面は見るほうを異次元へ誘ってくれるので、観終わった後で「ああ、映画を観たなあ」という充足感は十分に得られます。映画に生活感を求めない客(私です)にはたいへんに心地よい映画でした。これにイカす色敵が出てきくれたらもーっと良かったんですけどねえ、すまけい、じゃねえ、、、。

1999年03月12日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16