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銀嶺の王者


■公開:1960年
■制作:松竹
■監督:番匠義彰
■助監:
■脚本:椎名利夫
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:トニー・ザイラー
■備考:晴子ちゃんのヴァイオリン演奏つき。


 トニー・ザイラーはハンサムなスポーツマンで引退後はリゾートビジネスに転じた如才の無い人である。

 冬期オリンピックでたくさん金メダルをとったオーストリーのスキー選手・トニー・ザイラーは一緒に山に登った友達を雪崩事故で死なせたことに責任を感じ、密かに国外へ脱出する。日本の大型商船に乗り込んだザイラーは日本人コック・南原宏治と知り合い、彼の故郷である蔵王へ向かう。

 身分を隠して、地元のホテルでパトロール隊の一員になったザイラーは、ドイツ語の達者な南原の妹・鰐淵晴子と知り合う。地元の小学校の先生・富士栄清子と仲良くなったザイラーは、彼女の教え子で両親を失ったばかりの少年から雪玉を投げつけられてしまう。

 富士栄を母親のように慕っていた少年のかわいいヤキモチを察したザイラーは彼に新しいスキーを買ってやり仲直りすることに成功。小学生たちを対象としたスキー教室の先生をかってでてくれたザイラー。富士栄はますます彼の事が好きになる。

 鰐淵の恋人・石浜朗は富士栄とザイラーの通訳をしていた鰐淵がザイラーに惚れていると勘違いする。クリスマスパーティーで華麗なバイオリン演奏を披露した鰐淵がザイラーと一緒にいるのを見た石浜はヤケを起こして危険な夜の冬山へ出かけてしまう。

 遭難しかかった石浜を救出したザイラーの写真が地元の新聞に掲載されたのを見たオーストリーの駐日大使の命令で、大使館の職員がザイラーをオリンピックに出場させるために蔵王へやってくる。ザイラーが有名なオリンピック選手である事を知った村人は大騒ぎ、さっそく壮行会を開催する。

 帰国の時間が迫ったザイラーは富士栄に求婚、オリンピックが終わったら結婚する事を約束して旅路についたのだった。

 カタコトの日本語で愛を告白し、木曽節を歌い、正座(と、言うより体育座りですけど)をし、寿司だのてんぷらだのを喰いまくる。そんなサービス精神旺盛なオリンピックチャンピオン、トニー・ザイラーが甘いマスクと華麗なスキーテクニックを存分に披露してくれます。すでに日本が将来自分のビジネスにとって上客になることをバッチリ見抜いていたのでしょうか?この映画のザイラーは本当に愛想がよく、かつ、カッコイイです。

 本作品を観た日本人男性の観客はどのような思いでスクリーンを見つめていたのでしょうか。もちろん、観客の大多数はトニー・ザイラー目当ての若い女性や、スキー好きの人か、オリンピック選手の映画主演を珍しがった人々だったんだと思いますが、カップルの場合は?。

 かつてアラン・ドロンが今のブラピやレオなんぞメじゃないくらいのモテモテ野郎だったとき、多くの男性が恋人を連れて彼の主演映画を観にいくことを嫌がった、その最大の理由は「映画が終わって俺の顔を見た瞬間の彼女の幻滅した表情が辛い」というものでしたが、この映画もそんな感じだと思います。

 スキーが上手な二枚目がモテない道理はありません。それが時代を問わず、絶対の真理であることをこの映画は雄弁に語っているのです。

 今では本作品で受けた雪玉の後遺症のせい(うそうそ)か額のあたりがかなり涼しくなったザイラーですが、冬期オリンピックの度にそのコメントが発表されたりして故国のスキー業界では確固たる地位を築いているようです。晴子ちゃんの生演奏といいザイラーのスキー技術といい、やはり本物ってのはどこにいても強いですね。

1999年02月23日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16