凶弾 |
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■公開:1982年 |
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信州。少年院OBの山田辰夫、古尾谷雅人、石原良純。石原が祖父からもらったベルギー製のライフルをオモチャにして白樺を試し撃ちする三人は冗談半分に銀行強盗を思いつく。 盗難車を乗り回していた三人は雨の中を裸足で歩いていた妊娠している女・高樹澪を拾う。たまたま軟派嫌いの巡査・阿藤海に職質された三人は、この、外見と行動が見事に一致していた乱暴者のオマワリさんを反射的にボッコボコにしてしまう。 逮捕された山田がテレビドラマの「大都会」に出てくる容疑者のように非人道的な扱いをされているのではないかと心配しつつ、古尾谷と石原は逃走する。県警本部の本部長・古谷一行は、石原が銃を所持していた点を重く見て緊急配備。人情派の刑事・田中邦衛や刑事・岡本富士太らの取り調べに対して、山田は仲間の名前を決して言わないのだった。 山田が口を割らなくても、二人の身元はすでに判明していた。石原はイイトコのぼっちゃんだったが、両親は二人とも事故で死んでしまった。親がわりのたった一人の姉・秋吉久美子に乱暴した秋吉の亭主を殴り殺したために少年院に入れられた石原。古尾谷は捨て子。山田も両親がいない。家族の縁が薄い三人はお互いの境遇が似通っていたので仲良しになったのである。 保護士から連絡を受けた刑事が寺に来る。あわてて逃げ出す、石原と古尾谷。古尾谷を救うためにライフルを刑事に向けてしまった石原は思わず発砲してしまう。 本気で銀行を襲撃しようと言い出す石原。列車の中で高樹と再会した石原はホテルで結ばれた。高樹はあの日、妻子もちの恋人に強姦された直後だったと告白した。 強盗に失敗した石原は銃砲店を襲い、武器と弾薬を調達した。警察に追跡された石原は遊覧船をジャックする。ところがこの船の船長が若山富三郎だったために、事態は急展開。警察の体面を最重要視する本庁の偉いさん・高橋悦史は事件の早期解決を現場に指示。 犯人と警察との交渉役までかって出る若山富三郎の情熱もむなしく、人質を解放した石原に対して警察は最終決断を下す。国家公安長官・平幹二郎は「シージャック事件」と同様の強行手段を高橋に示唆。 石原に同情した若山が捨て身で狙撃を阻止しようとするが、頭に血が昇った石原は大暴れした挙句に、一発で倒されたのだった。 平幹二郎(は、ともかく)と、古谷一行が「特別出演」で若山富三郎が無印出演というのはいかがなものでしょう。いくらよそン家だからってこんな無礼な扱いはファンとしては許し難いものがあります。そんなわけで、本作品の若山先生は、主演の石原なんか眼中に無いんじゃないの?と思われるくらいの大活躍です。 一生懸命なのはとてもよく分かるんですが、所詮、石原良純はズブの素人です。海千山千の山田辰夫や古尾谷雅人の前ではあまりにも存在感がなさすぎ。台詞も羽のように軽いのです。おまけにフックラのぽちゃぽちゃだしー。 結構、錚々たる出演者(石原良純は除く)のわりにはどうも散漫な印象なのですが、これは主役の薄さだけが原因ではないと思われます。丹波さん出しとけば良かったのにねえ。そうすりゃあなんとなく「大作」っぽさが出たと思うんですけどね。それとも、ああいう大人は嫌いだったのかな?奥山ジュニアは。 「シージャック事件」はある年代以上の大人にとっては、犯人が射殺される当時のニュースフィルムの印象が強烈すぎる実際の出来事。フィルムの実物は出てきませんが、やっぱ、アレに勝つ(不謹慎な言い方で申し訳ありません、本音です)のは無理でしたね。従って、ある年代以上の大人である私にとっての本作品は、ワイドショーの再現フィルムのほうがよっぽどマシじゃねえの?程度の感想しか持てないのです。 「皇帝のいない八月」で冷血官僚の凄みを見せつけまくった高橋悦史はここでも、一応は平という「もっとオッカナクてヘンな」奴というバッファがあったにせよ、十分にコワイ人です。この人が演ると、なんとなく戦争のとき一番アブナイのはこういうメリハリの効いた真面目な奴なんだよな、などと想像してしまいます。説得力があるんですね、彼の顔(演技ではなく)には。 で、高樹さんは一体、何をしに出てきたんでしょ?そこんところ(だけ)がすごく気になる映画でありました。 (1999年03月29日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16