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シベリア超特急


■公開:1996
■制作:ウイズダム
■監督:マイク水野
■助監:
■脚本:マイク水野
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:マイク水野
■備考:列車が全然揺れないので。


 この映画のストーリーを解説することはとても苦痛なので本当はやりたくないのですが、それじゃあまだ観ていないすっごくたくさんのお客さんへ私の脱力感が伝わりにくいと思うので泣きながら説明します。

 ※記憶違いの箇所があるかもしれませんが、記憶にとどめることもカッタるいくらいの作品ですのでどうかご容赦くださいまし。

 太平洋戦争前夜、ハンガリーのブタペストから帰国の途についた山下奉文・水野晴郎と一等書記官・菊池孝典はシベリア超特急に乗車する。一等の客室にはほかに少数民族出身の美女・かたせ梨乃、女優、オランダ人の若い女、ドイツ軍将校、ソ連軍将校、ユダヤ人などさまざま。他の車両からは完全に孤立している1車両を舞台に事件が起こる。

 一等書記官がブタペストに残してきた恋人・かたせ梨乃(二役)にそっくりな女がいつの間にか金髪美女と入れ替わり、オランダ人の若い女が姿を消し、ソ連軍将校が毒殺された上に窓から転落。女優に下品な視線を向けたドイツ軍将校は洗面所で感電死し、車掌も何者かに殺された。

 山下将軍の身が危険だと察知した一等書記官が事件の究明に乗り出したとたん、小心者のユダヤ人が家族の命を助ける代わりに同盟に反対している山下将軍の暗殺をヒトラーから命じられたと言って拳銃を持って 躍り出た。しかしすでに家族が収容所へ送られた事を知らされて彼は絶望し自暴自棄なって列車の屋根に逃亡、トンネルで事故死する。

 次に行方不明だったかたせ梨乃は民族独立を約束したスターリンの命令を受けていて、拳銃を構えて山下を狙うが一等書記官がかたせを射殺した。ソ連軍将校を殺した毒物の証拠を手に入れたとウソの情報を流したところ、他の客室に身を潜めていたオランダ人女性と女優が観念して真相を打ち明けた。

 オランダ人のほうはドイツ将校に強姦された過去を持ち、女優はソ連軍に妹を殺されていた。お互いに宿敵を発見したので証拠が残らないように交換殺人を約束し実行したのだった。山下は戦争さえなければこのような悲劇は起こらなかった、戦争は絶対にしてはいけない、と宣言し二人の罪を許したのだった。

 ね、話だけだとなんだかちゃんとした映画「みたい」でしょう?ところが全然違うんだなあ、これが。この映画の凄さは始まって0.5分で把握できます。

 だって、全然揺れないんですもん、この列車。

 東北新幹線みたく軌道がコンクリートでできてりゃ分かりますけど違うんでしょう?想像するに、船酔いしてゲロ吐くくらいイケてると思うんですけど、微動だにしませんね、この1両編成(しかセットが組んでない!)の超特急は。

 つまり技術論に関して語りようのない映画なわけです。しかし私は映画の技術に関して語るのはあまり好きではないので、そのほかの部分について述べてみましょう。

 山下奉文に外見が唸るほどよく似ている水野晴郎ですが、「マライの虎」のファンだったんでしょうかね?きっとファンだったんしょうねえ、ここまで「ステキな人」に描いておいて、しかも自分が演っちゃうくらいですもの。「ステキ」の解答が「水野晴郎」なのかどうかは意見が分かれますけど。

 作り手の思い入れが過剰な映画と言うのは結構好きなんで、その点においてはイイ感じに仕上がったんじゃないでしょうか。社会通念に照らし合わせていかがなものか、については責任もちませんが、わざと分かりにくくして分からない客を小馬鹿にする、というのは無いですからね。

 なんとか観客サービスしようと(たぶん)努力したところもあるには、あるんです。走る列車の窓の外からターザンのようにガラスを破って列車に飛び込んだり、屋根の上でアクションがきっとそうなんだろうなあ(と百歩譲って好意的に判断しますが)、迫力なんか全然ありゃしませんしねえ。

 だって、全然揺れないんですもん、この列車。

 見方を変えればとても健全な映画ですよ、これ。エロ、グロ、バイオレンス、ナンセンス、こういうモノが一切出てきませんからね。本職はモデルとおぼしき外人さんたちは皆お行儀良さそうだし、きっとスノッブな方々には受けるにちがいない!、、と作り手は狙ったんだろうなあという意図はよく分かります。

 残念でしたねえ、スノービッシュな方々というのは血管が透けるくらいの痩身美でないとダメなんで、「厚かましくて暑苦しくて見苦しい」、「猪首に詰め襟のデブ」という見ているだけで息苦しくなるような登場人物じゃ全然ダメなんですよ、水野さん(と、その手下2名)。

1999年03月12日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16