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サンダ対ガイラ・フランケンシュタインの怪獣


■公開:1966年
■制作:東宝
■監督:本多猪四郎
■特撮監督:円谷英二
■助監:
■脚本:馬淵薫
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:中島春雄
■備考:愚弟賢兄。


 「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」で死んだ(っつうか行方不明になった)と思われたフランケンシュタインが、クローン兄弟として海と山とに分かれて生きていた。

 巨大なタコが真夜中に漁船を襲い、操舵手・山本廉を食べようとする。直後に現われたのが毛むくじゃらのフランケンシュタイン。タコをぶっとばした彼は船をわしづかみにして大暴れ。乗組員は山本以外全員、彼に食べられてしまった。

 こういう壮大なファンタジーを信じないのが海上保安庁の指揮官・田島義文(およびその長身の部下・古谷敏)の頭の固いところだ。ついこないだ日本中を震撼させたフランケンシュタインの事なんか全然無視。しかしボロボロにされた遺品を見てピンと来た上司・伊藤久哉は京都でフランケンシュタインの研究をしている学者・ラス・タンブリン(声・睦五郎)に連絡を取る。フランケンシュタインの育ての親、女性科学者・水野久美はフランケンシュタインが人喰いをすることが信じられない。

 人間の肉に味をしめた海のフランケンシュタインは、小型漁船を襲撃し漁師・沢村いき雄を喰ったり、地引き網漁を妨害したりして大暴れ。その頃、タンブリンと水野は、見てくれがキングコングそっくりな山男・広瀬正一に案内され、山奥で巨大な足跡を発見。

 海のフランケンシュタインは人(餌)のいっぱいいるところを求めて羽田空港へ上陸。空港ビルで逃げ遅れた女性職員をパクパクと食べて、そのオッカナイ性質を大いにアッピールした彼であるが、消化に悪い衣服(おそらく化学繊維)をペッと吐き出す賢いところも披露。

 ビアガーデンで外人女を喰い損なったフランケンシュタインは山へ向かう。迎え撃つ自衛隊は大量のバッテラ(バッテリーライト)を運び込み、強い光が苦手なフランケンシュタインを人里から引き離して銃兵器、高電圧、殺人光線などで撃退する作戦を実行。

 さすがサイドワインダーを隠し持っていた自衛隊、いつの間にか殺人光線まで開発していたのであった。

 強力な光線を嫌がって逃げ出したフランケンシュタインがやっととこさ川へ逃げ込んだところへ、今度は高電圧攻撃を加える自衛隊。そこへもう一匹のフランケンシュタインが登場する。ちょっぴり大柄の彼は自衛隊の攻撃を制して瀕死の仲間を連れ、山奥へ姿を消した。

 フランケンシュタインは2匹いた。まぎらわしいと感じた自衛隊は、海から来た人喰いフランケンシュタインを、ガイラ・中島春雄、山に住んでいる温厚な性格の方を、サンダ・関田裕と名付けて区別することにした。2匹のフランケンシュタインはバラゴンと格闘したオリジナルの1匹の肉片から成長したクローン兄弟だと判明。

 温厚なサンダは兄ちゃん、わがままで狂暴なガイラは弟ということになった。

 馬鹿な子ほどカワイイというひそみにならい、弟にかいがいしく世話を焼く兄。しかし所詮、馬鹿はどう転んでも馬鹿なので、空腹に絶えきれなかったガイラは湖に遊びに来た能天気なハイカーを襲撃する。偶然、タンブリンと一緒に調査に来ていた水野が逃げる際に足を踏み外して崖下に落ちそうになる。水野を守ろうとしたサンダは崖を下る途中で岩に足の骨を砕かれるが、墜落しかかった水野を間一髪でキャッチしタンブリンに後を頼んで、名残惜しそうに姿を消した。

 顔はガイラと同じくらいブサイクで怖いけど、なんてイイ奴なんだ!サンダって。

 満腹状態で昼寝しているガイラのそばには喰い残しが散乱。それを見たサンダはついに堪忍袋の緒が切れる。やさしい兄ちゃんにブン殴られた弟は「兄ちゃんのバカー!(推測)」と泣き叫びながら海を目指して一目散に駆け出した。

 ああ、気の毒な兄ちゃん!こういう経験、人間社会でもありがちだなあ、、。

 フランケンシュタイン細胞の特質として、下手に攻撃して彼等の細胞が飛び散るとギズモからグレムリンが複製されるような事態になると警告するタンブリン。なんとかサンダだけは助けたい水野であったが、空自の司令官・野村明司(後、野村浩三)から二匹ともども葬るための総攻撃作戦が発表されてしまう。

 すっかり腹ペコになったガイラは、ネオンまぶしい銀座に出現、サンダと勘違いした水野があわや喰われそうになった時、本物サンダがやって来てガイラの説得を開始。今や手が付けられない不良と化したガイラは兄の声には一切耳を貸さずダダこね放題で、銀座の街を破壊。

 こりゃいかんと思ったサンダは交渉の場を晴海方面へ移動。自衛隊の攻撃が始まる。「サンダ正義の味方説」をイマイチ信じなかった陸自の指令官・田崎潤であったが、砲撃も殺人光線もサンダに当てずにガイラだけに命中させる心配りは忘れなかった。

 やるじゃん!田崎(およびその部下・桐野洋雄)。

 二人(もう二匹とは呼べないぞ)はもつれあいながら外海へ。その時、自衛隊の爆撃に誘発された海底火山が大噴火。灼熱の熱線があたり一面をを覆い尽くし二人は火柱に飲み込まれてしまった。

 ガイラから逃げ出す群衆、車を捨てていくよう言われた若い男・西条康彦が「この車まだちょっとしか乗ってないんだ」という寝ぼけた台詞を吐いたり、老けた不良少年のラス・タンブリンに「若者は無謀だから」という辛気くさい説教垂れさせたりってところが米国映画会社(ベネディクト・プロ)の影響か?

 ここでは優しい母性を発揮する水野久美ですが、私的にはこの人のキャラクターは「マタンゴ」の毒婦でフィックスしてしまいました。タンブリンといちゃいちゃするシーンが必要以上に艶かしいのは見るほうの問題なんでしょうね、きっと。

 人間が演るよりよっぽど泣ける、血兄弟の相克映画でありました。

1999年03月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16