暴圧(大虐殺) |
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■公開:1960年 ■制作:新東宝 ■企画: ■監督:小森白 ■脚本: ■撮影: ■音楽: ■美術: ■特撮: ■主演:天知茂 ■寸評: |
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天災の後には人災がつきもの。 関東大震災で焼け出された人々の間に「朝鮮人がテロ活動をしているらしい」というデマが飛び交う。焼け跡のあちこちで陰惨なリンチが繰り広げられ、市街のスラム化はさらにひどくなっていった。これを見た軍部と警察は、事態収拾のためには噂の根源を絶たねばならぬと決断し、何の罪もない朝鮮人を次々に逮捕した。 ありもしないテロの鎮圧という大義名分に味をしめた憲兵隊はこの際、社会主義者も一掃してしまおうと考え、大勢の無実の朝鮮人たちと一緒に社会主義の活動家を河原に集め、釈放してやると言って安心させておいてトラックから降りた彼等に機銃を掃射した。からくも生き延びたアカ新聞で働く青年・天知茂は、師と仰ぐ大杉栄・細川俊夫の元に身を寄せる。 同じ新聞社で働く社会主義者の青年・杉江弘太郎らは憲兵隊の甘粕大尉・沼田曜一に徹底的な弾圧を受ける。社会主義者の摘発にやっきになった甘粕はついに大杉栄とその妻子を逮捕し拷問の挙句に殺した。甘粕は逮捕され軍法会議にかけられたが部下と口裏を合わせ、法廷で互いに罪をかぶりあう三文芝居を演じ、短い懲役刑を受けただけで許されてしまう。 法の力もあてにできないと知った天知と杉江は大阪でテロの資金を稼ぐため実直そうな銀行員を襲撃する。しかし顧客の金を守ろうという銀行員の必死の抵抗を受けた天知は金も奪えず、失意のうちに帰京する。なんとか武器を得たいと奔走した天知は中国の人民解放軍のテロリストと手を結び爆薬と拳銃の調達に成功する。 その頃、東京では浜口首相が暗殺されたため、政府と軍部の要人警護は厳重になっていた。天知と杉江は幾度かの失敗を乗り越え、ついに天粕大尉の暗殺に向かう。天知は先輩の新聞記者・御木本伸介の妹・北沢典子と結婚するはずだったが、大義を重んじ彼女に別れを告げる。天知と杉江はあと一歩の所で警官に発見されてしまう。天知は取り囲んだ新聞記者に「思想の自由を弾圧することを許すな」と叫びながら逮捕された。 世にタブー映画というのはたくさんあるが、民族差別と思想弾圧がてんこ盛りの本作品は「大虐殺」というタイトルがあまりにもストレートなので「暴圧」に変更されているくらいのモノスゴイ発禁映画であると言えよう。もちろん「大虐殺」シーンといってもささやかなもので、それが冒頭にちょこっと出てくるだけなので、どちらかと言うと原題のほうがエグすぎるというのが正直な感想。 関東大震災の特撮はミニチュアをフルに使って手作り感覚一杯だが、凌雲閣崩壊シーンにはなかなか見るべきものがある。下町大火災はオープンセットを盛大にブンブン燃やしたので煙がものすごく、エキストラも真剣に逃げ惑う。余震でガラガラと倒れる家屋もオープンならではの迫力があって、地震の怖さがよく伝わってきた。 大蔵新東宝になくてはならない暗黒魔王・沼田曜一の活躍も見逃せない。この人の特異なところはいかなる残虐非道なシーンであっても実に楽しそうに演じるという事だ。だから怖い。薄い顔立ちでありながら登場と同時に常に彼の独壇場となってしまう独特の存在感は強烈なものがある。 新東宝時代の天知茂はしょっちゅう悩んでいた。今回も政治的な思想と恋の板ばさみで、あいかわらず陰鬱に悩みまくる。「憲兵と幽霊」では謀殺した部下の幽霊に悩まされ、「地獄」では罪の意識に悩まされ、「東海道四谷怪談」では女房の幽霊に悩まされると言った具合。その悩める姿は会社の経営状態の反映か?(違う、違う) なんでこんな映画作ったのかなあ?と現代の観客である私は思うのだが、何か深い思想性を感じるかというとそうでもなく、ただの脅迫映画かと思うとそうでもない。右だか左だか、そんなことはどうでもイイって感じ。つまりはヤケッパチになって、今までやってない事はとりあえずやってしまえ!的な無茶を感じるのだがいかがなものか。 人間でも会社でも最後は捨鉢になるということか。満身創痍の新東宝はこの作品が作られた翌年、倒産した。 (1998年08月13日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16